地方創生について語られるとき、先進地域として真っ先に名前が挙がる徳島県神山町。これまでも70Seedsではいくつかのキーパーソンを紹介してきました。

「リスクのすぐ近くに面白さはある」 神山町が活気ある地域づくりを実現できた訳
ブレイクダンサー、農家になる。自然の中で見つけた「ちょうど良い距離感」
“普通側”の私が、憧れた都会を離れて見つけた「居場所」

そんなパワーある人々が集まる神山町を擁する徳島県は、人口における社長の割合が日本一の県でもあります。「東京にこだわらない働き方」を推進するOFF TOKYOと連動した今回のインタビューでは、その魅力の裏にある行政の「おせっかい」とも言えるほどの心配りに迫ります。

人が人を呼ぶ町となった神山町の取り組み、そして徳島県の特色について、徳島県庁で企業誘致を担当する高尾さん、三崎さん、山下さんにお話を伺いました。


“東京にこだわらない働き方”を推進する「OFF TOKYO」。70seedsも主催者の一員として関わるこのプロジェクトとの連動コンテンツとして、IT先進自治体の取り組みをご紹介します!

岡山 史興
70Seeds編集長。「できごとのじぶんごと化」をミッションに、世の中のさまざまな「編集」に取り組んでいます。

「よそもの」をつなげる地域と行政

 

徳島県に限らず、日本においてIT×移住促進という文脈が語られるとき、必ずといっていいほど登場する「神山町」。Sansan株式会社のサテライトオフィスをはじめ、数多くの「新しい働き方」が実践されていることで知られる町だ。

(写真:ネット環境の整ったサテライトオフィス)

 

そんな神山町に企業や人が集まってきた背景には、全国に先駆け徳島県全県で光ファイバーケーブルが敷設されたことがきっかけとして知られている。だが、そこだけではなかったと三崎さんは語る。

 

 

「地デジ化のタイミングでインフラを整えていったんですが、そのときに地域にとって核となる方がいたことが一番大きかったと思っています。例えば神山町だとNPO法人グリーンバレーの大南信也さんだとか、美波町だと株式会社あわえの吉田基晴さんだとか。そういう人たちを介して地域がつながっていったんです」

 

しかし、どれだけコアになる人がいたとしても、もともと住んでいた地元住民の巻き込みがなければ地域全体の活性化にはつながらない。特に「都会から来たIT企業」というレッテルは、地方において「よそもの」感を増してしまう要素でもある。

 

 

そんなハードルを越えるための大きな力となったのが、元々根付いていたお遍路さんへの「お接待の文化」という外部の人を受け入れやすい素地があったことや、大南さんの神山アーティストインレジデンスなど民間の取組があったこと。それに加えて取り組まれた行政による広報・PR活動だった。徳島県では、現地で新たに事業を開始する企業と県知事、市町村長との調印式を行うことでニュースとして報道してもらい、広く県民に知ってもらうための活動に取り組んでいる。

 

さらには地元住民・地元企業を巻き込んだ物件探しや商談の設定など、地域と連携するための徹底的なサポートに力を入れている。そういった取り組みの結果、現在は県全体で「新しい人や企業を受け入れていくこと」への理解や、このままでは地方が衰退するという危機感が共有されていくようになったという。

 

 

新しい企業の受け入れが地元就職の傾向を強めていった

 

サテライトオフィスを設置する企業の取り組みは、社員が長期間腰を据える「滞在型」とプロジェクト単位で短期間活動する「循環型」の2つに分かれる。滞在型の場合、家族とともに移住してくることが多いが、徳島県のサポートとして特徴的なのは「循環型」でも家族で過ごしやすい体制を整えることだと高尾さんが解説してくれた。

 

 

「徳島県では出張型の企業の社員の方のために『デュアルスクール制度』を立ち上げました。これは、社員の方の短期滞在に合わせて、お子さんの住民票を異動させることなく社徳島の学校で継続して授業を受けられる制度です。専任の教員がついてサポートし、これまでに数名の実績もあるんです。こういったお子さんの負担を少なくするための支援は全国で徳島だけなんですよ」

 

こうした、とことん世話を焼くスタイルのサポートによって、企業の誘致はもちろん、その後の採用、定着も徐々にうまくいくようになってきた。山下さんが誘致を担当した大阪の企業では、総合県民局や市町村の担当者がサポートしたことで主婦の方が5人、6人と採用されていったと話す。

(写真:自然が身近な環境)

 

そんな取り組みの結果、地元大学や高専の先生や担当者から、学生に紹介できる企業が増えてきたという声が挙がるようになったのだという。従来は専門技能を活かせるような職場が地元に少ないため、やむなく別の仕事に就いたり県外にいく学生も多かったが、最近はそうしなくてもよくなったという声があることが、徳島県の取り組みが本当の意味で成功していることを象徴している。

 

IT先端地域として名を上げた徳島県、今後の展望について高尾さんはこのように語ってくれた。

 

「今後はAI(人工知能)に力を入れていきます。今まさに数社、AIの研究所をつくったり実証フィールドとしての活用をしてくださっている企業もいます。これから県のAIに関する取り組みをPRして一大拠点ができていけるといいなと思っています」

 

 

IT×地方創生のトレンドをつくった徳島県。その視点はさらに先の未来を見据えていた。