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地球岬のみやげ屋「シナダ」で見つけた、愛され続ける理由―「流行に乗らない」店づくり

札幌から高速道路を利用し車で2時間、太平洋岸にある北海道有数の工業都市・室蘭。川崎・四日市・北九州と並ぶ「工業夜景都市」として、観光面での知名度も上がっている都市です。

 

その室蘭には、「工業夜景都市」としての知名度が上がる前から、「北海道の自然100選」第1位(昭和60年/朝日新聞社)、「あなたが選ぶ北海道景勝地」第1位(昭和61年/北海道郵政局)、「新日本観光地百選ヤングカップル部門」第1位(昭和62年/読売新聞社)など日本の観光地ランキングで軒並み1位を獲得していた場所があります。

 

その名は地球岬。

 

アイヌ語の「ポロ・チケプ」(親である・断崖)が転化し「チキウ岬」となり、地球という漢字が充てられました。360度見渡す限りの水平線があることから、地球の丸さを感じられるので、地球岬という名はオーバーではありません。

 

その地球岬の名物ともいえるのが「おみやげの店シナダ」。30年以上に渡り店主を務めてきた品田徹(しなだ・とおる)さんは8月末に75歳の誕生日を迎える、生粋の室蘭っ子です。

 

そんな品田さんに、日本を代表する絶景「地球岬」と歩んできた30年について話を伺いました。

 

 


急激に観光客が増えた30数年前から営業をはじめた

 

―そもそも品田さんが地球岬で商売を始めたきっかけはどのようなものだったんですか?

 

30年以上前に地球岬が色々な観光ランキングで1位を取って、お客さんが急に増えてきたんですよね。そのとき私は自宅……地球岬を降りて行ったところにある母恋(ぼこい)という場所で商店を営んでいたんですが、「地球岬でお土産屋をやらせてくれ」ってかけあいまして。せっかくお客さんがたくさん来てくれているんだから、何もないのもちょっと、と思ったんです。

 

地球岬_2

 

―え?この場所(お店3軒、駐車場スペース)には何もなかったんですか?

 

沢でした(笑)。小さい頃よく遊んだものですよ、この辺りで。ザリガニやサンジョウウオがいてね。その沢を埋めて、駐車場と店を作ったんですよ、観光協会や役所と協力して。

 

―では、この30年の人気観光地の移り変わりをつぶさに見てきたんですね。

 

そうですね。オープンしたときから残っている商品はもうないですね、時代によって変わっていくものです。ただ、私がお土産屋を続けている中でずっと考えていることは「流行には乗らない」ということなんですよ。

 

―流行には乗らない……観光地での商売というと、一番流行に敏感でないといけないと思っていたのですが。

 

いや、逆なんです。流行りのものというのは、必ず廃れるときが来るんです。だから、基本的な商品は大きくいじりません。昔からキーホルダーは欠かせないですし、ここ十数年は携帯ストラップです。これらの商品の比重を変えるだけで、世間で流行りの商品は置きません。キーホルダーは収集家が多いので、お土産屋には欠かせないんですよ。地球岬はイルカに会えることで有名な岬なので、イルカのキーホルダーと携帯ストラップという軸はずっと変わらないんです。

 

―イルカといえば、私は何度も地球岬に来ているのですが未だに会っていないんです。

 

日頃の行いが良くないからですよ(笑)。それは冗談として、イルカと会える気象条件というのがあるんです。7~9月前半、天気が良く気温が高くて波が静かなときというのは高確率でイルカが岬に近づいてきます。地球岬の付近でイルカは出産・子育てをするので、会うことはそんなに難しくないはずなんだけどなあ(笑)。

 

インパクトのあるお土産を……「毒まんじゅう」制作秘話

 

―やっぱり私の日頃の行いのせいですね(笑)。日頃の行いといえば、以前こちらのお店で売られているあるものでえらい目にあったことがあるんですが…。

 

「炎の毒まんじゅう」ですか?25年前に売り出してから、ずっとウチの一番人気商品ですよ。そんなに辛かったですか?(笑)記憶に残るお土産を作りたくて、まんじゅう屋さんと相談しながら半年くらいかけて商品化したんですよ。

※「炎の毒まんじゅう」…6個入りのあんこまんじゅう。そのうち1個は唐辛子が入っているというロシアンルーレット的なお土産。

 

地球岬_3

 

―記憶にも口の中にも残りました(笑)。そもそもなぜこのようなお土産を作ろうと思ったんですか?

 

子供のころからいたずらが好きで(笑)。エイプリルフールになると張り切るタイプでした。なので、遊び心とインパクトのあるお土産ということで、ウチのオリジナル商品を作りました。実は、大手デパートから「流通させてほしい」という話があったんですけど、断りました。この場所でしか買えない商品にすると決めていたので。

 

―そういう意味でも流行には乗っていないんですね。

 

そうですね。デパートで流通すると量は増えますが、どこかで廃れるときが来るんです。それはイヤだったんですよね。

 

30年以上続けてこられた秘訣「半分遊びでやっている」

 

―人気商品も開発し、30年以上もこの場所で商売を続けてこられた秘訣はなんですか?

 

半分遊びだからですかね(笑)。お客さんとの世間話が楽しくて続けているのかもしれないです。子どものころの遊び場が職場になっているなんて、なかなかないですよね。この場所は、風向き的に室蘭の工業地帯の煙が来ない場所なので海と山の自然の空気に囲まれていて、体にも良いんですよ。「工業地帯と自然のコントラストが良いですね」とお客さんも良く言っているんですが、私も本当にそう思います。

 

地球岬_4

(画像提供:室蘭観光協会)

 

―品田さんにとって地球岬の最大の魅力は何ですか?

 

毎年、同じ時期に同じ景色が見られること、ですね。渡り鳥の中継地でもあり、ハヤブサの生息地でもある。イルカもやって来る。地球岬にあるお店は3軒ですが、ウチだけは冬の間も晴れたときには営業しているので、1年間を通して地球岬を楽しめます。

 

―特におすすめの季節はありますか?

 

たくさんありますよ(笑)。その中でも特にといわれると、秋と初日の出ですね。9月中旬から10月にかけて、室蘭は晴れの日が多いんです。朝晩は冷え込みますが、その空気が気持ち良くて。あと、初日の出は本当に見事ですよ。室蘭は雪が少ないですし、もし降ったとしても除雪していますので一度は見てもらいたいなと思います。

 

―今後はどのようなお気持ちで地球岬を見つめていきたいですか?

 

この場所は、現状維持でいいと思っています。新しい施設を建てる場所も、イベントができる場所もありませんから。でも、その現状維持ということは難しいことだと思います。市役所や観光協会と協力し合いながら、今の地球岬を守っていきたいですね。

 

 


 

取材を終えて、「せっかくなので、炎の毒まんじゅう買っていきますね」と声をかけると、「持って行ってくださいよ」と品田さん。営業時間を割いてお話を伺い(悪天候にも関わらずお客さんが何人も訪れていた)、さらにお土産まで頂戴するとは恐縮の極みでした。私が特に印象に残ったのは「流行には乗らない」という言葉。長年続けてこられた秘訣は「半分遊び」という品田さんだが、「流行には乗らない」という確固たる信念があってこそ。今回の取材を通して、私は「物理的なお土産」だけでなく「精神的なお土産」も頂戴したようです。

 

【ライター/橋場了吾】

同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。