2005年に愛知県で結成、翌2006年からは名古屋・栄でストリートライブを始めたロックバンドSPYAIR。現在のメンバーはIKEさん(ヴォーカル)、UZさん(ギター)、MOMIKENさん(ベース)、KENTAさん(ドラム)の4人。2010年のストリートライブ100本目を栄公園で開催、2000人近いオーディエンスを動員し、その勢いのまま同年シングル『LIAR』でメジャーデビューを果たしました。

メジャーデビューからわずか2年で日本武道館公演を成功させるなど、順調にその存在感を大きくしてきたSPYAIR。一時期の活動休止を経て、「東京ドーム公演」という新たな目標へ向けて精力的に活動を行っています。

東京ドーム公演を実現させたロックバンドは数えるほどしかいませんが、SPYAIRはその目標を公言する「有言実行」にこだわります。ニューシングル『RAGE OF DUST』リリース日の11月9日に来札したIKEさん、KENTAさんにお話を伺いました。

橋場 了吾
1975年、北海道札幌市生まれ。 2008年、株式会社アールアンドアールを設立。音楽・観光を中心にさまざまなインタビュー取材・ライティングを手掛ける。 音楽情報WEBマガジン「REAL MUSIC NAKED」編集長、アコースティック音楽イベント「REAL MUSIC VILLAGE」主宰。

「いつかは東京ドームで」という周囲の期待

‐SPYAIRはデビュー以来日本武道館、さいたまスーパーアリーナ、富士急ハイランドといった大箱を制覇してきたわけですが、今の目標は東京ドームと明言していますよね。

KENTAもともとは東京ドームに特別な思いがあったかというと、それはちょっと違うんです。

IKE特別な思いが「生まれている」という感じですね。意識はしないようにしていたんですが、このバンドに求められている一番のものは大きな場所でライブをするというイメージなんです。そのイメージを具現化した場所、それが東京ドームなんです。

‐わかりやすさという意味では一番の場所ですよね。

IKE:周りの誰も言わないんですけど、(東京ドームでやるぞという)無言のプレッシャーは感じていたんです。メンバーもそうです。いつかこのバンドはそこまで行くという長いスパンで、(事務所やレコード会社が)面倒を見てくれていたんだと思うんです。

KENTAデビューしたときから、ですね。

IKE:過去に1回、僕が折れてしまったこと(喉の不調で活動休止)があったんですが、実はそのプレッシャーもあったんです。『ごめん、そこまでは今行けない』って。

‐それはなぜ?

IKE目標が大きすぎて、このまま続けていくことは無理だという判断を一人で勝手にしてしまったんです。で、いざ復帰するときには、最後の最後にはこの東京ドームが先に待っているなということが心にあって、メンバーにも(東京ドームを)目指すということは怖くて話せなかったんですよね。

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‐活動休止にはそんな背景があったんですね…。

IKE:でも、ある時期『このバンドは右肩上がりで走っていくべきなんじゃないのか』という話を、メンバーに話しました。そのときにメンバーも『(東京ドームに)行きたい』という意思を示してくれたんです。だから今、こうしてバンド活動をしながらゴール地点を決められたんですよね。

‐そういえば日本武道館公演も、目指すことを公言してからという有言実行でしたね。名古屋でストリートライブをしていたときから、そういう精神性なんですね。

KENTAそれはありますね。今考えるとストリートで2000人を集めるって、ありえない発想だったかもしれない(笑)。

IKE今の僕らからしてもぶっ飛んでるなと思いますもん(笑)。

 

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自分たちの“地”の味が出ている曲がシングルに

‐その東京ドームへのステップの途中に相応しい楽曲『RAGE OF DUST』がリリースされましたね。これまでの楽曲と毛色が違いながらもSPYAIRらしい印象を受けました。

IKEだからこそ違和感がないんですよね。ビートが変わらないワングルーブで持っていく曲だなという意識はありますが、SPYAIRの楽曲の範疇の中にあるという…。ちゃんと“血液”の中に入っていますよ、こういう曲のテイストは。バンドのグルーブで色がつく曲なので、「俺ら、バンド感増したな」ということを『THIS IS HOW WE ROCK』(今年7月リリースのシングル)から『RAGE OF DUST』への流れの中で感じています。

‐それがファンにもすんなり受け入れられる理由なんでしょうね。

IKE多分昔なら、こういう表現はしなかったかもしれない。もう少しいい意味でまとめて逃げていたというか、うまくやっていたと思います。今は無骨にやってもバンドというひとつの塊が出せる気がしているので、自分たちの“地”の味を出している感じが好きですね。こういうのが“ロック”だなと思います。

KENTA単純にこういう(“地”が出せた)曲をシングルで出せるというのは嬉しいですよね。

IKE:超嬉しいですよ(笑)。

 

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【取材を終えて】

SPYAIRというバンドは、結成当初からさまざまな壁を乗り越えるために生まれてきたのかもしれないと思う瞬間があります。名古屋・栄のストリートで大聴衆を集め、有言実行で日本武道館公演を成功させた。実績を積み重ねる中で不安に押しつぶされそうになりながらも復活、首都圏はもちろん地方の大会場へも進出。そして今、東京ドームでのステージを目標に掲げています。

 

わかりやすい目標があるからこそ、自分たちの素で勝負できることに喜びを感じるという曲が『RAGE OF DUST』。ここ最近のSPYAIRのシングル曲の中では異質ですがが、明らかにそのDNAは昔から聴いているファンであれば感じるところでしょう。その中で蓄積してきた技術・思いが見事に表現されている楽曲です。

 

通常盤には本人たちも思い入れがあるという『My World』、初回限定盤には新曲『CIRCUS』を収録。ますますドライブがかかったSPYAIRが、東京ドームという大舞台へ向けて駆け抜けていく作品になりそうです。

 

【ライター・橋場了吾】

北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。