日本のミュージックシーンにおいて、ついに市民権を得たラウドロック。ONE OK ROCK、coldrain、Fear, and Loathing in Las Vegasといったバンドの台頭により、激しく思いサウンドと美しいメロディ、そして狂気を帯びたスクリームシャウト(低い声で獣のような声を出す歌唱法、別名デスヴォイス)が同居する楽曲の人気が高まってきました。

日本ではヘヴィメタルはともかくラウドロックは男性が中心でしたが、ここに来て可愛い見た目からは想像もつかない激しいライブ・歌声・ダンスを魅せるガールズユニットがメジャーデビューを果たしました。その名もPassCode。2014年に結成された大阪出身・平均年齢20歳の4人組です。

そのPassCodeの4人がライブのために来札、それぞれの音楽的背景、そしてPassCodeが目指していることについて伺いました。

橋場 了吾
1975年、北海道札幌市生まれ。 2008年、株式会社アールアンドアールを設立。音楽・観光を中心にさまざまなインタビュー取材・ライティングを手掛ける。 音楽情報WEBマガジン「REAL MUSIC NAKED」編集長、アコースティック音楽イベント「REAL MUSIC VILLAGE」主宰。

バンド、アイドル、ダンス…PassCodeができるまで

‐まずは皆さんの音楽遍歴を教えてください。

南菜生(以下南):中学生の頃はRADWIMPSやBUMP OF CHICKENのような「これぞバンド!」みたいな音楽をよく聴いていました。

高校では軽音楽部に入ったのでインディーズのバンドも聴くようになって、幅が広がっていった感じですね。PassCodeの音楽性に近い音楽を聴き始めたのはこの頃です。最近はメッセージ性の強いサウンドを良く聴いています。

高嶋楓(以下高橋):音楽を本格的に聴くようになったのは高校時代で、最初にはまったのがアイドルでした。

幼稚園の頃はアイドルは『かわいい』というイメージだったんですが、高校時代はアイドルを音楽として聴いていました。PassCodeに加入してからはいろいろなバンドサウンドを聴くようになってきましたね。

‐現在のPassCodeに通じる背景があったんですね。

高嶋:ここからちょっと変わるかもしれないです(笑)。

今田夢菜(以下今田):もともとはダンスが好きで、あまり音楽を聴いていなかったんです。これまで音楽に気持ちが向いていなかったんですが、WANIMAに出会って歌詞の一直線なところに惹かれて大好きになりました。

大上陽奈子(以下大上):私は小学生の時にモーニング娘。にすごくはまって、キラキラした可愛い曲を歌うアイドルが好きになりました。中学時代まではアイドルばかり聴いていて、カラオケでもアイドルの曲しか歌えませんでした。

高校に入学して軽音楽部に入ってからはバンドを勧められて聴くようになりました。多分、軽音楽部に入らずにバンドサウンドを知らないままPassCodeの曲を聴いていたらびっくりしていたと思います。

 

 

ライブでいつの間にかぽわっと出たスクリーム

‐今のPassCodeのスタイルは、激しいロックにダンスありスクリームありというものですが、やり始めたころはどうでしたか?

南:最初はわからないことばかりで、未知の世界に飛び込んだような感じでした。最初は(このスタイルは)ダメと言われることもあったんですが『いい』と言われることの方が多くなって、このスタイルにしたのは間違いじゃなかったと思いました。夢菜はバンドを聴いてこなかったので『シャウトって何?』という感じだったと思いますけど。

‐なぜ今田さんがスクリーム担当になったんですか?

今田:身長が低くて、一番(スクリームを)しなさそうな子に、っていう。ギャップで皆を驚かせたくて。

‐でもスクリームは相当喉に負担がかかると思うのですが。

今田:練習はしたことがないんです(笑)。ライブでいつの間にかぽわっと出るようになりました。最初はライブ本番でしか出なかったんですよ。

どこから声が出ているのかがわからなくて、レコーディングや『やってみてよ』と言われたタイミングでは出なかったんです。最近はわかるようになってきました。

 

 

UNLIMITED4人になっていきたいという思いを込めたメジャーデビューシングル

passcode3

‐10月にメジャーデビューシングル『MISS UNLIMITED』がリリースになりました。

南:UNLIMITED(限界突破)な4人になっていきたいという意味合いがそのままタイトルになりました。

サウンドプロデューサーの方から「ここはこういう風に歌ってほしい」というガイドがついたデモが送られてきて、それを聴いてメンバーそれぞれが「こういうのはどうだろう」というのを持ち寄って、意見を取り入れてもらいながらレコーディングをしています。

高嶋:デモは男声なのでPassCodeとは違うカッコ良さがあるんですが、それをPassCodeらしくしていって今皆さんに届いている音源になっています。

南:私と楓ちゃんが機械音ぽいヴォーカルで、陽奈ちゃんは高音、夢菜はスクリーム…メンバーのカラーが出ている楽曲なので、ひとりひとりの歌い方の違いに気を遣いながら制作していきました。

大上:私はメジャー感を出そうと思いました。今回は高音が多かったので、高音をいかにきれいに出せるかを考えました。

スクリームの後に高音が来るので、そのギャップを出せるようにレコーディングしました。

南:妥協をするのはPassCodeらしくないので、メジャー一発目から全力でできることをやってみました。

ドラムは打ち込みが多かったんですが今回は生のドラムですし、バンドサウンドにもこだわりましたので、メジャーになって全然違うサウンドになったかなと思っています。

‐PassCodeは、アイドルイベントとバンドイベントの両方に出演していますね。

南:アイドルだと思うことはないんです。アイドルイベントに出てもそこが自分たちの居場所という感じもしないですし、バンドイベントに出てもまだまだ受け入れられていないという感じもあって。

どこに出てもアウェイという感じはあるんですが、どのイベントでも一番になれるように全力でやっています。どの場所に行っても、PassCodeはPassCodeの盛り上げ方ができるようなグループにしていきたいです。

‐両方から招待が来るユニットというのは貴重だと思います。

高嶋:いろいろな人に聴いてもらえる存在になりたいです。アイドルとバンドの良いところを取って、PassCodeというジャンルを作りたいですね。

‐PassCodeに憧れた女の子たちのユニットが続々出てくるといいですね。

高嶋:そうなれるように、気を引き締めて頑張ります。これからもライブがたくさんありますので、ぜひ遊びに来てください。

 


【取材を終えて】

とにかく“斬新”という言葉しか見つかりません。海外も含め稀有なフィメールスクリームヴォーカリスト(しかも見た目からはまったく想像できないギャップが素晴らしい!)を擁し、激しさ・楽しさを融合させたユニット、PassCode。彼女たちのような存在のメジャー進出は、必然だったのかもしれないと思います。

 

バンドサウンドが好きなメンバー、ダンスが好きなメンバー、アイドルが好きなメンバー…それぞれの魅力を凝縮することで、PassCodeという名のジャンルが出来上がりそうな勢いです。

 

インタビュー翌日のライブでは、インタビュー時とは別人かと思う程の弾けっぷり。そのポテンシャルの高さを、存分に披露してくれました。

 

PassCodeというジャンルを切り開こうとしている4人が、ミュージックシーンの限界を突破し頂点に駆け上がる日はそう遠くはないと感じたインタビューでした。

 

【ライター・橋場了吾】

北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。