ガールズバンドは数多く存在しますが、その中でもいい意味で「女性らしさ」を感じさせないバンド、それが今年結成10周年を迎えるねごとです



千葉にある2つの高校から集まった4人で結成されてから10年、大学進学など人生の大きな分岐点もありましたが、メンバーが変わることなく4人で活動を続けています。



その音楽に対するピュアネス、そして音楽を続けて来られた秘訣について、メインシンガーソングライターでヴォーカル・キーボード担当の蒼山幸子さんに聞きました。

橋場 了吾
1975年、北海道札幌市生まれ。 2008年、株式会社アールアンドアールを設立。音楽・観光を中心にさまざまなインタビュー取材・ライティングを手掛ける。 音楽情報WEBマガジン「REAL MUSIC NAKED」編集長、アコースティック音楽イベント「REAL MUSIC VILLAGE」主宰。

この4人が一緒にいたら面白いものを生み続けられる

‐ねごとが結成されたのは2007年ですが、結成当時は10周年を迎えることを想像していましたか?

まさかですね(笑)。もともとプロを目指していたわけでもないですし、純粋に音楽が好きな4人が集まって、それがたまたま全員女の子だったという感じでしたから。

別にガールズバンドを組みたかったわけでもないですし、私と(ドラムの澤村)小夜子が同じ高校で、(ギターの沙田)瑞紀と(ベースの藤咲)佑が同じ高校という4人でしたし。高校時代は音楽以外の夢を持っていたメンバーもいましたからね。

‐それが変わったのはいつですか?

『閃光ライオット』(※)に出たことは、大きなきっかけになりました。

そこから一緒にやっていこうという気持ちが高まったんですが、運命の糸に手繰り寄せられてここまで来られたのかなと思いますね。

※2008年~2014年に開催されていたティーンズ限定ミュージックコンテストイベント。ねごとは第1回(2008年)に出場、審査員特別賞を受賞している。

‐ねごとは大学在学中にメジャーデビューしていますが、さまざまな将来の選択肢があったと思うのですが。

私は、この4人が一緒にいたら面白いものを生み続けられるという予感がずっとあって。それが何よりも音楽活動を続けたいという気持ちにさせてくれましたね。

デビューのときもそうですし、バンドとしてライブの見せ方を苦悩していた時期もそうですし。そこで『辞める』とか『解散する』という選択肢はなかったんですよね。

ここで止まることよりも、この先にある景色を見たいという気持ちの方が大きかったので、ずっと続けて来られたというのはありますね。

‐その中で、一番印象的な景色は何でしたか?

お客さんへの感謝の気持ちを込めて、2015年にデビュー5周年を記念して『ねごとフェス』を開催しました。5バンド出たんですが、全部ねごとだったんです(笑)。

もちろんコンセプトを変えた5種類のねごとだったんですが、転換はソロのコーナーをやったりして。そういう7時間くらいの長い企画をやったときに、『お客さん大丈夫かな』という不安があったんですが、最後のねごとのときにすごく盛り上がってくれたんです。

そこで、お客さんとの距離の近さを感じられたんですよね。このお客さんが、ねごとの音楽を聴き続けてくれていたんだなというのを目の当たりにできた瞬間だったので、皆さんをもっと楽しい場所に連れていきたいなと思えた日でした。

 

『カッコいいものを作りたい』という気持ちが一番大きかった

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‐2月1日におよそ2年ぶりとなる4枚目のアルバム『ETERNALBEAT』がリリースになります。

アルバムのタイトルは最後に決めました。メンバーからどんなタイトルにしたいか募っていたときに、『ETERNAL』も『BEAT』も出て来ていたんですよ。

で、タイトルトラックである『ETERNALBEAT』の歌詞の中にも『やまないビート』というリフレインが入っているので、今回のアルバムを総括できるようなワードだなと思ってこのタイトルにしました。

‐アルバムを聴いて、音楽的にとてつもない進化を遂げているなと感じました。ここに来て、なぜそのような進化が可能になったんでしょうか?

そう言っていただけると本当に嬉しいです。前作『VISION』では“ロックバンドとしてのねごと”を突き詰めた作品だったんですよね。

だからこそやり切った感があったので、次どうしようかと。ねごとにはいろいろな面があるけれど、私たちに何が似合っていて何を出していきたいかと再確認したときに、やっぱり『カッコいいものを作りたい』という気持ちが一番大きかったんです。

‐カッコ良さといえば、収録曲の『アシンメトリ』は先行EPでリリースされていますが、BOOM BOOM SATELLITES(以下BBS)の中野雅之さんがプロデューサーとして参加されています。BBSのヴォーカリスト・川島道行さんが逝去されてから初めて世に出る作品でした。

中野さんは収録の仕方が面白くて、実はドラムを最後に録っているんですよ。最初にギターを録って、ヴォーカルを録って、ベースを録って、という順番ですごく新鮮でした。

なぜそう収録するのかというと、『ヴォーカルはこれで行くんだ』というのを決めきってから、それに合わせたドラムを録りたいということだったんです。
※一般的なレコーディングは「ドラム→ベース→ギター・キーボード→ヴォーカル」の順で収録する。

‐「歌」への想いがすごいですね。

中野さんの作るサウンドはカッコいいんですけど、どこまでいっても『歌』が真ん中にある方なんですよ。

一緒に作業する中で、川島さんの歌を大事にしながらBBSを作ってこられたんだなということをひしひしと感じましたし、普段から気持ちを開いて話すというようなヴォーカルケアもしていただいて、音楽的なもの以上のものを受け取らせてくれたプロデューサーでしたね。

‐『ETERNALBEAT』というアルバムがライブでどのように再現されるか楽しみです。

本当に『カッコいい』と思えるアルバムが完成したので、ねごとという名前を知っていたけど聞いたことがないという方にも、まず聴いてもらいたい作品です。

普段から意識はしていないんですが、ガールズバンドという枠を飛び越えた、音楽としてカッコいいものを作ったつもりです。一度聴いて気に入ってくださったらライブに遊びに来てほしいと思いますので、よろしくお願いします。

 


【取材を終えて】

ねごとに初めてインタビューをさせていただいたのは今から7年前、メジャーデビューを果たした2010年のこと。今回で5回目のインタビューとなりましたが、その積み重ねを考えると非常に感慨深いインタビューでした。

 

これまで音楽を続けてきたことすべてが点でつながっています。その点の行き先には、ねごとという「純粋に音楽が好きな4人が集まったバンド」の奏でる音を「やまないビート」に進化させた「ETERNALBEAT」という作品がありました。

 

2017年初頭にして、すでに私的ベストアルバム&ベストチューンになりそうなこの作品、ねごとはとんでもない作品を作り上げました。その背景には「この4人がいれば、面白いものを創り出せる」という確固たる自信があります。

 

結成から10年間で築き上げた自信、それが「やまないビート」を鳴らしているのです。

 

【ライター・橋場了吾】

北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。