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若手女子プランナーがつくる「スタディー・ツアー」-H.I.S戦後70年ツアーの裏話(2)-

日本の旅の変革を求め、1980年より格安チケット販売からスタートした株式会社H.I.S.(エイチ・アイ・エス)が戦後70周年スタディー・ツアーを特別企画。部署立ち上げから6倍にスタッフが増えたボランティア・スタディーツアーデスク事業部にお話を聞いた第一回に続いて、第二回では入社1、2年目の女子プランナー2人に、自ら手がけたツアーに込めた熱い想いを伺いました。

公式ガイド中谷さんの「問いかけ」ツアーを作る夢を実現

 

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高木佳さん:1990年生まれ。2014年入社。大学時広島で平和学を学ぶ。
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−「アウシュヴィッツ・ツアー」企画の背景を教えてください。

 

もともと大学のころに広島でピーススタディツアーの企画実施に関っていた経験から、自分が旅行会社に入ったら「平和ってなんだろう?」という問いかけができるようなピーススタディツアーを作りたいという思いがありました。
このツアーを企画したのは、大学1年生の春休みに参加した「ヨーロッパピーススタディーツアー」でアウシュヴィッツを訪れた経験からです。アウシュヴィッツ日本人唯一の公式ガイドである中谷剛さんのお話に感銘を受け、一人でも多くの人に中谷さんを知ってもらいたいと強く思いました。自分の「平和」に対する思いやアウシュヴィッツの経験を社内でも話していたところ、戦後70年の今年やってみよう、と。時流にもうまく乗っかったことで、今年度3月に第一回目のツアーを催行、個人的なこれまでの想いも形にすることができました。

 

—高木さんが作られた「アウシュヴィッツ・ツアー」の魅力は何ですか。

 

アウシュヴィッツがあるクラコフという街にある、ポーランド一大きなヤギェウォ大学日本語専攻の学生との交流プログラムです。初めてアウシュヴィッツを訪れたとき、ポーランドの学生は自国の歴史をどのように学び、認識しているのだろう。という点をとても疑問に感じました。現地の人の声を聞ける時間、また私たちがアウシュヴィッツで感じた声を現地の人とシェアできる時間を、前回のツアーでは実現できたことは、H.I.S.ツアーならではの魅力になったと思います。

 

日本語交流会自己紹介

▲ 日本語交流会での自己紹介

あと参加者同士の意見共有の時間を設けたこともこのツアーの良さだと思います。H.I.S.のボランティアスタディツアーではどれも、「振り返りの時間」を設けているんです。自分が見たこと、聞いたことを自分の言葉で消化していくことはとても大事です。まだまだ課題はありますが、こういった交流・振り返りの時間をこれからもツアーでは重要視していこうと思っています。

 

−ツアーを作って良かったと感じたことは何ですか。

 

参加者の方が「中谷さんに出逢えてよかった」と口を揃えて言ってくれたことです。中谷さんに引き合わせることがこのツアーを作った一番の目的でもあるので。

中谷さん横顔

▲ ツアー・ガイド中の中谷剛さん

私個人としても、中谷さんをプロのガイドとして本当に尊敬しています。毎回その時々の情勢を捉えたガイドをしてくださり、日々ガイドの技術を向上させようと自己研鑽を積まれている。ポーランドに住んでいながら、日本から来た私たち以上に日本の情勢をよく知っていて、アウシュヴィッツで起こったことを、私たちが自分のものとして捉えられるような問いかけの仕方をしてくれる。そして、参加者はそれをひとつひとつ受け止めていきます。

 

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▲ 中谷さんのツアーガイド風景

 

ツアー終盤の振り返り会で、職場内でのいじめがもしかしたらホロコーストの欠片かもしれない。と発言された参加者の方がいました。「私たちの日常の中にも、ホロコーストにつながるかもしれない差別が存在する、ということに気づきを得たことで、自らその環境を改善しようと動くことが、今の私にできるひとつのことかもしれない」という感想を聞けたことで、このツアーを作った意図が参加者の方にも伝わっていると感じられたことは、とても嬉しかったです。

 

-戦争を知らない世代が過去と向き合う、ということをどのように捉えていますか。

 

非常に難しく、これからも考え続けたいテーマです。
戦争と向き合うことについて考えるときはいつも、「安らかにお眠りください 過ちは繰り返しませぬから」という広島の慰霊碑に刻まれた言葉が私の中にはあります。悲しい歴史を二度と繰り返さないこと、そのことが大前提です。
アウシュヴィッツに関していえば、中谷さんの言葉の中から拝借すると、「アウシュヴィッツはアウシュヴィッツとしてあり続ける事で、過去の歴史を繰り返さない教訓になり得る」ということ。言葉にするとすごくシンプルですが、本当にその通りだなと思います。

 

アウシュヴィッツに実際訪れて、70年前にここでユダヤ人が暮らしていたんだ、と彼らに想いを馳せる。はじめて行った5年前は寒い冬の日でしたが、添乗員として初のツアーで行った今年の3月は、あたたかい一日でした。困難な日々の中で彼らはこの春の空気を感じることができたのだろうか、などその土地に行くことでどんどん自分のことのように想像が膨らんでくる。

 

-その土地に行って、はじめて気づく事がありますね。

 

その「想像力」が、戦争を繰り返さないために何より大切なことだと思っています。
戦争を経験していない世代が「経験していないから知らない、わからない」と言ってしまっては、また同じことが現代社会の中で繰り返されてしまうかもしれません。だから私たちはそれから逃げてはいけない。目をそむけたくなる悲しい歴史でも、教科書の中の文字列から、想像力を働かせて自分の世界のことへ引き起こしてくることが大事です。アウシュヴィッツを訪れ、学び、いまを生きる自分の中でとらえなおして、伝えていく。私は戦争を経験していない世代の1人として、そのきっかけ作りができたらと思っています。

 

 

多様な想いと、懐の深さを感じられるツアー

 

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木下麻美さん:1981年生まれ。2014年秋入社。南の島での国際協力活動を経て、現職。

 

−ツアーの企画背景を教えてください。

 

2012年からマーシャルで2年間観光の仕事に携わっていたので、いつかマーシャルへのツアーを作りたいと思っていました。マーシャル諸島は1914年から終戦までの約30年間日本の統治領で、第二次世界大戦中は多くの日本人がかつてはそこにいたことを、一体どれくらいの人が知っているのだろう、現地の離島では全く保護されていない戦跡や日本の文化、生活習慣の名残があることをもっとたくさんの人に見てほしい。その願いが、今年戦後70年で早くも実現できそうであることは、とても嬉しいです。言葉ではなかなかマーシャルの魅力が伝わらないからこそ、実際に訪れる事でその魅力を知ってほしいというのが企画の背景です。

 

-ツアーの魅力は何ですか。

ポイントは2つあります。戦跡と現地の人々との交流プログラムです。
首都マジュロからでも、離島へ行くことは困難です。けれども、離島に行くと戦後70年間、雨風さらされた戦車や大砲が、戦時中使われていたそのままの姿で残っている。そこは、現地の人がいないとなかなか足を踏み入れられない場所。その島にツアーを通じて、実際に現地の人と会い、その場の雰囲気を感じる事で、タイムスリップしたような感覚を味わってほしいと思っています。

 

また、今回のツアーで訪れる小さなミリ島は、戦時中約6000人もの日本兵が駐留していたといわれています。マーシャルの人は概ね「親日」といわれていますが、背景には悲しい時代もあったことを知ると、いろいろと考えさせられることがあると思います。戦中の日本人と過ごした記憶が決して良いものばかりではないけれど、今でもウエルカムに歓迎してくれることは、嬉しいことです。その懐の大きさも実際にツアーに参加することで感じてほしいです。

 

-人も、場所も、独自の価値を持っているのですね。

 

そうですね。特に保護されていない戦跡は、現在深刻な海面上昇と高波により、あと数年で流されてしまうかもしれないし、他国が博物館に持って行ってしまうかもしれない。など様々なことを考えると、今このタイミングは逃せないと思っています。過去に民間のツアー会社でミリ島に足を踏み入れた事はおそらくないので、今回はそういう意味でも貴重な価値あるツアーになるのではないでしょうか。

 

 

大統領とお茶できる!?プログラム

 

-「マーシャルツアー」企画、現地の反応はどうですか。

 

大統領政府からもサポートを頂いており、現地で政府閣僚と今マーシャルが抱えている課題や日常のことなどをお話できるプログラムを用意しています。先日、マーシャルから来日されていたロヤック大統領にお会いして、本ツアーへの応援メッセージもいただきました。ツアー参加者も大統領とお茶ができるかもしれませんよ(笑)。

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▲ ロヤック大統領にツアーパンフレットを贈呈

 

-大統領とお茶!それは特別な体験ですね。

 

現地の観光局もツアー参加者の来訪を楽しみに待っているので、現地と連携した特別なプログラムを今後も継続して行えるようにしたいと考えています。あわせて、マーシャルの文化や人々の価値観など、日本とは全く異なるものと交流することで、今の日本の生活では感じられない豊かさに触れてもらえたら、と願っています。

 

そもそも、マーシャル諸島はまだまだ知名度が低いため、まずは名前を知ってもらいたい。日本と深い繋がりがあったマーシャルに興味を持ってもらい、今の世代の人に伝えて行く事が、このツアーの意義だと思っています。

 

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アウシュヴィッツとマーシャル諸島。 

マーシャル諸島は、2010年に水爆実験が行われたビキニ環礁が世界文化遺産に登録されたことでも注目が集まりました。
共に「負の遺産」と呼ばれる場所から、私たち人類の過去と未来を考える「スタディー・ツアー」で出会える仲間も一生モノ。熱い夏を過ごしたい!という方におすすめのH.I.S戦後70周年ツアー4選でした。

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南国帰りの行動派

1988年、神奈川県生まれ。 大学卒業後マーシャル諸島で3年間働いて帰国。夢はマーシャル人も驚く大家族の肝っ玉母ちゃんになること。