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おすそ分けの現代版って? シェアリングエコノミーで地域活性化

都市部も地方も例外なく、ご近所づきあいや人との関わりが薄れていると言われて久しいですが、それに反するように個人間で気軽にモノやスキルを共有するITを通じたシェア文化=「シェアリングエコノミー*)」が進みつつあります。

 

しかし、シェアリングエコノミーにどのようなメリットがあるのか、そもそもシェアリングエコノミーがどういうものなのかわからないという方もいるのでは。

 

今回お話を伺ったのは、シェアリングエコノミー研究家の加藤こういちさん。加藤さんは、2017年12月に福井県鯖江市で地方シェアリングシティ実現のため、オンラインサロン「SHARE BASE 鯖江」を始めたほどの、筋金入りのシェアサービスヘビーユーザーです。

 

そんな加藤さんが語る、「シェアリングエコノミーが地方に与える影響」とは?

 

*)「シェアリング・エコノミー」:総務省の定義によると、個人が保有する遊休資産(スキルなど無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスを差す。例えば「メルカリ」などのフリマアプリ、クラウドソーシング、Airbnbなどが代表的な例として挙げられる。

 


 

 

すでに私たちの身近にあるシェアリングエコノミー

‐シェアリングエコノミーという言葉を頻繁に耳にするようになりました。加藤さんはシェアリングエコノミーをどのように捉えていますか?

遊休資産の活用という意味の他に、BtoC主体の社会に対して、CtoC主体の社会がシェアリングエコノミーに近いと考えています*)。シェアリングエコノミーと言うと難しく感じるかもしれませんが、例えば、FacebookやTwitter、InstagramといったSNSもCtoCという意味では同じです。

*)BtoC:企業が個人に対して商品やサービスを提供すること。
CtoC:個人間で商品の売買やサービスのやり取りを行うこと。

SNSの普及で、個人でやりとりをするCtoCゆえの楽しさを多くの人が感じている社会になっていると思います。シェアリングエコノミーは、単純にその「サービス版」という側面もあります。

 (画像:出典:シェアエコ主義)

 

‐こうやってシェアリングエコノミーについて取材を受ける機会も多いと思いますが、そもそも加藤さんがシェアリングエコノミーに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

もともとwebサイトを作るのが好きで、自分にないWebスキルをクラウドソーシングで発注をすることが多かったんです。そこがシェアサービスとの関わりのきっかけです*)。

*)クラウドソーシング:オンライン上で不特定多数の人々に仕事を発注すること。

‐クラウドソーシング! 実は私もライターを始めたときはクラウドソーシングのヘビーユーザーだったんです。すでに自分がシェアサービスを利用していたって、今気づきました(笑)。

「メルカリ」も「ヤフオク」もシェアサービスの一つなので、シェアサービスであるという括りを知らずにすでに使っている人は意外と多いと思います。

僕がシェアサービスを頻繁に使うようになったのは、3年前に東京に出てきてからです。当時は東京に誰も友達がいなかったので、色々な交流会に参加していたんですが、その場で話して終わりで、長く続く関係は築けず…。その時は、東京には1000万人以上も人がいるのに、どうやって人間関係を築いていけば良いのか分からず不安でした。

シェアサービスは自然な人間関係のタッチポイントになるので、人とつながりやすいです。例えば「TimeTicket」は、会ってスキルをシェアするサービスですが、スキルを売買する間に、自然に仲良くなることが多いのが気に入っています。これまでに180回以上は利用していますね。

‐180回も! TimeTicketを使って一体何をしているんですか?

webサイトの改善案を出すスキルを時間単位で売っています。

ただ漠然と人とつながるための交流会と違って、そもそもお互いのニーズが合致して会っているので、相手の方と打ち解けやすく、雑談が深まって自然と友達になることもあるんですよ。

 

地方シェアリングシティ実現の実験がしたい

‐加藤さんが立ち上げたSHARE BASE 鯖江について教えてください。

副収入が欲しい、チームで家事、育児する生活がしたいといった方たちを集めて、Facebookの非公開グループ上でコミュニティを作っています。例えば、スキルやノウハウを提供するシェアサービスで公開するスキルの内容やPR文を共有し、メンバー間でフィードバックを行います。それゆえ、一人でやるよりも早く確実に収入をあげることができます。

また、自分の得意なこと、苦手なことを把握してもらい、得意な能力はサービスとして販売する、苦手なことは購入するという互助会の仕組みも作っていきます。

外部顧問として、鯖江在住の有名フリーランサー、オンラインサロン立ち上げ実績の豊富な方、シェアリングエコノミー協会事務局の方などにもご協力いただいています。

‐シェアサービスの使い方を教えるだけでなく、SHARE BASE鯖江自体がシェアサービスになるということですね。現在はどのような状況になっているんですか?

すでに十数名のメンバーが参加しており、個人に合ったシェアサービスを紹介して実際に使ってもらっています。月1〜2回のオフ会も予定しており、12月頭に初めてのオフ会を開催しました。

(写真:12月に開催されたオフ会の様子)

 

‐SHARE BASE鯖江は、地方シェアリングシティ実現に向けたオンラインサロンと銘打っていますよね。地方シェアリングシティ実現のためには、若い人だけでなく、お年寄りもシェアサービスを使いこなすような環境を作りあげないといけませんよね?

もちろん最終的には高齢者にも広めたいと思っています。でも、いきなり「シェアリングエコノミー」と言っても伝わるはずがないし、そもそもツールを使うこと自体が難しいと思います。

そのため、SHARE BASE鯖江では、まずは「Facebookを使える」人を対象に参加者を募集しました。参加者にシェアサービスを実際に使ってもらった上で、楽しさや意義を感じてもらった上で、親世代を含めた周りの方に伝えてもらうことを狙いにしています。

‐そもそも、なぜ福井県鯖江市なんですか?

鯖江市が2015年に行った「ゆるい移住」という体験移住事業に参加していたメンバーに、スキルシェアサービス「ココナラ」でビジネス部門トップを維持している情報収集トレーナーであり、私のフリーランスの師匠である井元龍太郎さんという方がいます。その井元さん主催の「フリーランス養成講座」に参加して、鯖江市に短期移住したことがきっかけです。

鯖江市の牧野市長とも2回ほど直接お話させていただく機会があったんですが、市民に寄り添った町作りを考えられていることに感動しました。それで、新しい取り組みをするなら鯖江しかないと思いましたね。とにかく市全体のフットワークの軽さをかなり感じました。

また、SHARE BASE鯖江での取り組みは、他の町へ横展開できるノウハウを貯めるための場所と考えています。まずは鯖江で成功も失敗事例も学んで、地域ごとの特性も掴みつつ、その先に広げることにも活かしていきたいです。

‐他の地域への展開も考えているんですね。

地方創生に関わる人って共感力や正義感が強い人が多いと思うんです。それで、特定の地域に溶け込み過ぎてしまうと、その地域だけで終わってしまいます。僕は一人のマーケッターとして、鯖江市に入り込んで、横展開するために必要な事例を蓄積するためにやれるし、基本は東京在住なので、一歩引いた視点で発信できるのも立場上のメリットだと思っています。

シェアリングエコノミーはおすそ分け文化の現代版

‐シェアリングエコノミーと地方創生の関連をどのように感じていますか?

都市圏と地方では、シェアリングエコノミーが使われる文脈が違うと思っています。都市圏では新しい経済成長の手段としての役割が大きいです。都市部よりも人口減少の速度が速い地方では、シェアリングエコノミーが普及することで、生産者が少なくなっても、できる限りこれまでと変わらない社会が維持できる、もしくはこれまで以上に豊かな社会にできると考えています。

余ったものをシェアする文化は昔から存在していました。特に地方では、おすそ分けやご近所さんの助け合いが都市圏よりも色濃かったと思います。しかし、これまでは誰がどんな資産(モノ、スキル)を持っていて、それが共有OKなものなのかが見える化していませんでした。

シェアリングエコノミーの利点は、ITツールを通じて個人同士の需要と供給のマッチングの精度を高められるところにあります。そのため、シェアリングエコノミーを普及させて、個人の余った資産を見える化することで、地域の資本が少なかったとしても、豊かに暮らせる街作りになる、つまり地方創生になると考えています。

‐シェアリングエコノミーをおすそ分け文化の現代版と捉えれば、地方との親和性が高いのも頷けますね。最近では地方へ移住する人も増えていますが、シェアリングエコノミーは、移住者にとってもメリットがありそうです。

単身で移住してきた人にとって、その地ですでにできているコミュニティは入りづらいものですよね。でも、その地域でシェアリングが活発に使われていたら、シェアサービスを使うだけで、一気にその地域の人と自然に繋がりを作ることができます。そして、シェアリングエコノミーの良さは、金銭が対価になっていることだと思うんです。

‐というのは?

昔のおすそ分けなどのご近所さん同士の助け合いには、金銭が媒介することはほとんどなかったですよね。でも「自分にならいつでも頼っていいよ」と言っている人でも、本当にいつでも頼っていいのか、今忙しくないのか、負担になっていないか、やっぱり気になってしまう…。

‐すごくわかります。その結果、本音はどうなんだろう…と遠慮してしまったり。

そうそう、サービスを提供する側がボランティアになってしまうと、利用者側はお土産を持っていったり、何かと気疲れしてしまいます。金銭が発生することで、お互いストレスなくコミュニケーションを取ることができるので、移住者にとっては、その土地の人しか知らない情報を気を遣わずに手に入れられるはずです。

 

シェアリングエコノミーの普及で、人がつながる建前が作れたら

‐SHARE BASE鯖江で実験を重ね、横展開もしていきたいとおっしゃっていましたが、加藤さんが目指す最終目標はなんですか?

人との自然なつながりを復活させるのが私の一番のミッションです。東京では人と出会うために有料の交流会に参加する人も多いと思います。でも、そのような交流会はなくても自然に人同士はつながっていたはずです。

昔、テレビが一家に一台も所有できていない時代もありました。テレビはあそこの家にしかないとなったら、みんながその家にテレビを見に集まるわけじゃないですか。つまり、人が自然に集まるための建前がいくらでもあった。

‐昭和の風景ですね。

でも、今はどんな人でも一人で生活できてしまうから、人とのつながりがなくなってしまっています。それは、今の日本社会に住む自分たちの幸福度を下げる大きな問題だと感じています。私はシェアリングエコノミーの普及を推進することで、人が自然に集まる建前を作りたいのです。

僕自身、シェアサービスを使ったことで、たくさんの人とつながって楽しい日々を送れるようになったからこそ、ですね。

‐加藤さん自身がヘビーユーザーなので説得力がありますね。これからの時代、私たちはシェアリングエコノミーとどう関わっていけばいいのでしょうか?

不景気で暗いニュースも多い中、政府は副業を解禁するなど、「働き方改革」をどんどん進めています。僕はこれを、これからは本業の収入だけでは生活費を賄うことが難しくなってくるというメッセージなのでは?と思っています。

例えば、今のお給料で、老後暮らしていくだけの貯金ができるか考えてみると、難しい人も多い。つまり、もうすでに副業をやらざるを得ない時代になっていると言えるのかもしれません。

シェアリングエコノミーには副業として利用できるサービスもあるので、なるべく早くこの流れに乗って、自分がどんなスキルを提供できるか考えることが大事になってくると思います。

‐いきなり副業と言われても、何をすればいいのかわからない人も多いと思います。アドバイスはありますか?

せっかく副業するなら、本業とはちょっと違ったことをした方が楽しいし、逆にバイトみたいな働き方はきついですよね。「好きな場所で好きな時間に好きなことをする」ことを意識して取り組んで欲しいなというのが私からのメッセージです。

 


【編集後記】

今までは、シェアリングエコノミーに対して、次世代の新しい仕組みというイメージを持っていました。しかし、地方では昔からおすそ分けや助け合いの文化があり、実はその文化にテクノロジーを絡めてわかりやすくした仕組みがシェアリングエコノミーであることに気づきました。

 

資本が少ない地方とシェアリングエコノミーに親和性があるのか疑問を持っていましたが、資本が少ないからこそ、シェアすることで豊かな暮らしを目指すことができるんですね。

 

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江戸しおり

フリーランスライター

2015年にパティシエからフリーランスライターに転身。福井県鯖江市の体験移住事業「ゆるい移住」に参加したことで、福井を始め、地方に眠る知られざる魅力に興味を持つようになる。現在は、自身が運営する福井県の情報サイト「Dearふくい( https://dearfukui.jp )」などで、地方の魅力や地方創生にスポットを当てた記事を多数執筆している。