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僕はゴミを売ってきたのか?ーアパレル業界に問いかける「ニーズがなくならない」ものづくり

みなさんは今年に入ってから何着の服を買いましたか?

 

日本で1年間に販売される衣類の総数は約50億着と言われています。ざっと計算しても、ひとりあたり年間に50着ほどの衣類を購入しなくてはいけない計算…あれ?そんなに買ってたっけ!?しかも毎年。

 

季節が変われば着る服も変わる、それはきっとその通り。でも、1年経ったら着られなくなる服なんて、成長期でもないかぎりなかなかないような。

 

そんな「なにかおかしい?」感覚からアパレルブランドを立ち上げたのが「ALLYOURS」代表の木村昌史さん。5月から始まった「24か月連続クラウドファンディング」や、「社員全員ジョンレノン化計画」など、次々飛び出すアパレルブランドの既成概念を壊すアイデアの裏側に迫りました。

 


3年後の「着たい色」が決まってるってヘンじゃない?

 

―ブランドのスタート自体がクラウドファンディングからだったり、「ワキ汗がにじまないシャツ」や「黒が褪せないパンツ」だったり、独自路線のプロダクト展開をしているALL YOURSですが、元々何をきっかけに始めたんですか?

 

岡山さん、長崎出身でしたっけ?夢彩都って商業施設あったでしょ?

 

―ああ、ありました。

 

あそこにも入ってる××××っていう企業に勤めてたんですよ。当時1000億円くらいの売上だったのかな。…で、そのときに気づいてしまったんです。

 

 

―何にですか?

 

アパレルの商売って、誰が決めたかわからない「流行り」を売っていくものだって。たとえば、「流行色」って何年前に決まるか知ってますか?

 

―2年前くらいですか?

 

3年前。毎年発表する日本流行色協会っていう団体があるんですけど、彼らはきっと水晶で未来が見えるんですよ。

 

―(笑)。

 

大手百貨店から量販店まで、みんな決められた流れを模倣していくわけです。すごく不自然だなって。そんなこと誰が決めてる?3年後の着たい色を決められてるってヘンじゃない?って。

 

―確かに。

 

そういうのもあるし、一般的なアパレル業界の商売の仕方って、発売からセール、ラストセール、アウトレットみたいな形で値段を操作しながら売り上げをゼロにしていく商売なんですよ。今年の流行はこれです、って在庫を減らしていく。でもそれって、お客さんが去年すごく気に入ってくれた商品を否定しているんじゃないか、極端に言うと捨てることを前提にしたゴミばっかりつくっているんじゃないかって思ったんです。

 

―気に入っているなら着ればいいのに、商品を提案しているブランド自身が着づらくさせている。

 

そう。言い換えると製品の寿命よりも情報の寿命が先に来てしまうわけです。洗濯機や冷蔵庫は使えなくなるまで使う、洋服だけはなぜか使えるのに捨てる。そういうことに単純に疑問を持ってしまったんですよね。

 

リーバイスのリベットを現代にアップデート

 

―そうして生まれたのがALL YOURS、そして自社ブランドの「LIFE-SPEC WEAR」だったんですね。

 

流行り廃りではなくって、人間の生理的なストレスや「こうだったらいいのに」という不満を解消するものをつくろうと。たとえば「ワキ汗が染みないシャツ」っていうのがあるんですけど、染みてると会議で手を挙げづらくなるとか、些細なことかもしれないけどいくら金を積んでも解決してくれないストレス。汗が染みないとか、動きやすいパンツとか。

 

 

―なるほど、デザインには流行り廃りがあるけれど、ストレスは普遍的ですもんね。

 

それに、高い服ほど耐久性が低くなるっていうのもあるんですよ。カシミアのニットはクリーニングに出さないといけない、とか。高い素材ってだいたいランニングコストがかかる。ひどいところだと品質表示(の洗濯指示)がすべて×、着たら捨てろってことかって(笑)。

 

―それはひどい(笑)。

 

だから僕らはイージーケアであることがいい素材、だと思っているんです。そして、人間の根源的な課題を解消することからニーズにたどり着くというものづくりをやっていく。…実は同じことを150年ほど前にやってた人たちがいるんですけど、わかりますか?

 

―150年前?誰でしょう…?

 

リーバイスです。150年前にサンフランシスコでゴールドラッシュが起きていた頃、炭鉱夫たちのズボンが破れて困っていたのを見て、ヤコブ・デイビスが「分厚い生地でつくればいいじゃん」と着想しました。でも生地を厚くすると糸が負ける、だからリベットを打って補強しよう、というのがリーバイスの始まりです。そしてこれがLIFE-SPECなわけです。

 

―まさに必要性から生まれた服だったんですね。

 

提案の仕方が、「これかっこいいでしょ?」ではなくて「破れたら困りますよね?」なんですよね。たとえば、うちでつくったこのパーカー、「かっこいいでしょ?」だと意見が割れます。でも水にぬれたくないでしょ、は10人中10人が「YES」と言う。そういう考え方でものをつくったらどうか、ということです。つまり、2017年に「リーバイスのリベット」を洋服でやったらどうか?と。

 

 

たとえば、このTシャツは着ているときにニオイをとってくれる処理がしてあって。しかも洗濯するときに一緒に洗ったもののニオイもとってくれるので、洗濯に対するストレスもなくしてくれる。

 

 

―ニーズがなくならないものづくり、というのがぴったりくる印象を受けました。

 

オーガニックコットンとかサステナビリティとか、そういうことの前に作って捨てるサイクルをやめたらいいと思ってるんですよ。それは車や家電メーカーがやってきた罪悪でもあって、無理にアップデートしてきたということ。それはマーケティング的な考え方で本当のユーザー視点ではないんです。

 

―本当に気に入ったものだったらずっと使える方がよい、という最初の話につながりますね。

 

もちろん僕らも同じものをつくり続けるんだけど、ユーザーインタビューなんかで挙がった改善点は喜んでマイナーチェンジしていってるんです。それは今の世の中でテクノロジーが起こしていることに近い考え方でもあって。

 

―というのは?

 

iPhoneが固定電話も地図もCDもいらなくしたように、これまでの「当たり前」をひっくり返していこうと。ユーザー視点で物事を見ないと、もはや自分が生きていけない。洋服の業界もテクノロジーが入っていくと壊されていくはず、服づくりを民主化するというのがひとつのテーマです。一番のキーポイントは上から見るか、下から見るか。僕らは後者。

 

―そもそも、服って一番体に身近なものですからね。

 

一番体に触れるデバイス、言い換えると世の中との接点ですよね。ぼくらは業界構造をぶっ壊したいわけじゃなくて選択肢を与えたい、というのが正しい言い方かもしれません。だからメディアではなく口コミの力で広がっていくのが強いですね。人は裸じゃいられないですから、根源的なストレスを軽減していくことが共感を呼ぶんです。

 

―少なくとも今は、服を着るのが「当たり前」ですからね。だったらストレスない方がいいというのはわかります。

 

 

フードはなぜついてる?雨風を防ぐため。だったら水をはじくものをつくろう。Tシャツはにおいが気にならないように。素材も色々あるけど綿のほうが肌あたりがいい。メリノウールは高すぎるし…。そういう風にものをつくってきたんです。使う人を中心に考えていくと別の解釈があるよね、だから「ALLYOURS」。

 

―当たり前のことのように感じますが、そういう感覚ってみんな持ってるわけじゃないんですね。

 

そういう人がいたらお友達になりたいですね(笑)。でも「共感する」とはよく言われますよ。そのあとに「でも会社が(あるから同じことはできない)」って続きますけど、まあしょうがない、こちらの勝手な正義感で「(あなたは)ダメだ」っていうのも違いますからね。

 

 

ジョンレノンからコーヒーまで、ALLYOURSの「ファンづくり」

 

―「共感する」と言った方々しかり、ALLYOURSのファンってどんどん増えていますよね。「一緒に働きたい」って方も多いんじゃないんですか?

 

そうなんですが、それは難しいことでもあるんですよ。

 

―難しい?

 

今の買い物って完全にモノ余りで。飽和してるのにニーズがないものをつくり続けてるから余る。そんなときにやることは2つ、ほしいものをつくる、ほしいと思ってもらえることをする。そういう感覚の人と一緒に働きたいんです。モノを売ってるけどサービスも売っているということです。だから人も大事、顔が見えない商売はやりたくない。

 

―たしかにブログなんかもスタッフの方の人となりが見えますよね。

 

そうそう、Apple製品も「ジョブズ信者」みたいな人たちがいるわけですよね。「誰がつくっているか」を買う理由にしている。で、僕も今「社員全員ジョン・レノン化計画」っていうのを進めていて。

 

―ジョン・レノン。

 

彼、実はソロではあんまりよくない、そんなに売れてないんですよ。でも全部さらけ出すところがすごかった。どれだけ自分がダメな人間かということまでプレゼンテーションできる。だから、自分がどういう人間なのか、どういうシーンでLIFE SPEC WEARが使えるかを自分の生活で見せることがスタッフの仕事だと言ってるんです。ばやし(若手男性スタッフ)の最初の仕事は、商品を着用して自転車で名古屋まで行くことでしたからね(笑)。

 

左がスタッフの「ばやし」さん。

 

―何よりビジネスとしてきちんと成り立っているのがすごいことだなと思います。

 

まだまだですよ。でも暗い顔して販売しているより楽しい顔して販売している方がいいでしょ。やっている人間がポジティブに。もちろんつらいときはつらい顔してればいいんですよ。そしたらお客さんも心配して買ってくれる(笑)。それも含めてあらゆることを公開しようと言ってます。その一環がクラウドファンディング。売れている数も見える、アイデアも見える。全部オープンですよ。

 

―その感覚って今のローカルベンチャーブームとも近いですよね。ユーザーとの距離感というか、温度感というか。

 

そうですね。たとえば僕らがうまく行ってもユニクロみたいな存在にはなれないし、はじめからそんな風にはなりたくないと思っていて。商品は普遍的でもお店はローカライズしたいんです。例えば全国各地でやりたい人にその土地のALLYOURSストアを任せてみるとか。その土地の事情に合わせた、まさにALLYOURSですよね。

 

―まさに。

 

その街にカフェがないからカフェを併設する、とか。子ども預かり所を兼ねる、とか。お店がその土地の社会問題に対して貢献できるっておもしろくないですか?

 

―ああ~面白いですね!

 

伊勢丹さんは売り場を買い場、とお客さん目線で呼んでいて。僕らはさらにたまり場、コミュニティストアでありたいと思っているんです。着ているものもやってることも人種も違うけど集まれる場所。

 

 

もはや洋服は自己表現の手段ではない

 

 

―今、服が売れないと言われる中でショップやブランドの役割を変えていく取り組みとしても、ひとつの挑戦になりそうです。

 

僕らの提起は2つで。今、服が売れないって毎年言ってるけど、そもそも必要なものを売ってるの?っていうことと、もうひとつ、高校時代裏原系(※A BATHING APE、SUPREMEなどに代表される、90年代後半にブームとなったファッションブランドの総称)とかほしかったでしょ?

 

 

―はい、懐かしいですね(笑)。

 

たぶん僕らが、「同じもの」を欲しがっていた最後の世代なんです。情報の普及と反比例してそういう消費行動がなくなっていった。昔は洋服が、今はインターネットが自己表現のツールになっているんですね。

 

―たしかに自己表現ツールはSNSなんかに集約されていった感がありますね。

 

そうすると洋服で奇抜な格好をしなくていい。セルフブランディングとしてもみんなが拒否しだした流れが生まれました。例えば、ノームコアってファッション業界からは説明がつかなかった流れを無理やり納得しようとした、わけわかんないキーワードなんですよ。単に、みんなファッションに興味をなくした結果なだけなんじゃないかっていう。

 

―その解釈はとても腑に落ちます。

 

今ファッション好きっていう人は、地下アイドル好きと人数変わらないんじゃないかって思うくらいですよ。自己表現の場がファッションからよそへ移っていったことで、みんな「何をやってるか」を大切にし出したんじゃないか。

 

―そういう場面にALLYOURSはどうつながっていこうと?

 

体験が重要なら、体験に100%埋没できる服を提供する、っていうこと。服が主役の時代は終わった、洋服じゃなくてあなたが主役なんですよってそう伝えていきたいですね。参加型、自分ごと化できる服をつくりたいと思っています。

 

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岡山史興

70seeds初代編集長

1984年、長崎県生まれ。ストーリーをデザインしています。