2017年5月に掲載し大きな反響を呼んだ、こちらの記事。
僕はゴミを売ってきたのか?ーアパレル業界に問いかける「ニーズがなくならない」ものづくり
その後、ALL YOURSは「24か月連続クラウドファンディング」という試みをスタート、これまでに累計3000万円以上の支援を受けるまでになりました。
そんなALL YOURSの最新プロジェクトは、手持ちの服に撥水や防臭などの機能をアップデートする「#作らないでつくる」。実はちょうど1年くらい前、70Seeds編集長の岡山が木村さんと出会ったときに話を聞いて、ALL YOURSに興味を持ったきっかけとなった構想だったんです。
この「取材、その後。」は、そんなALL YOURSの新たな挑戦に迫るインタビュー。Twitterで生配信した取材の様子をできるだけそのまま残しながら、編集して掲載しています。
※完全版の映像(約60分)はこちら。
持ってる服に機能がプラスされれば、もっと生活しやすくなる
‐もともと前回の取材前に、「今ある服をアップデートする」っていう構想を聞いていて、ものすごく面白いなあと思ったのが取材のきっかけだったんですよね。
そうそう、ちょうど1年前だよね。
‐そもそもオールユアーズの思想が面白いのに加えて、さらに「作らなくていい」って言っちゃうアパレルメーカーという。
必要があるものをつくる、必要がないものはなるべく作りたくないっていうのが基本的な考え方。
でも売り上げを大きくしていこうと思うといっぱい作っていかなきゃいけない。そうすると無駄なものをつくってしまう可能性があるじゃないですか。
そうじゃなくて、お客さんが持ってるものに必要な機能をつけていく、そんなサービスをしていきたいなと。
‐それはいつ頃から考えていたんですか。
実は会社を始めるときから考えてて。水を弾く「ONE SWING PARKA」、汗のニオイをとる「CATCHER T Shirt」。そういう加工は、今世の中に存在するTシャツやパーカー、トレンチコートなんかにかけられるんですよ。
そうすると天候や体臭を気にしなくてすむ。生活で気にしなくてすむことが増えると、もっとほかのことに集中できるでしょ。
‐今日雨の予報だけど今のところ降ってないし、レインコート着ていくのもな……。みたいなときとか。
そうそう、意外と天気予報の通りに生活することってあんまりなくって。雨が降ってきたらビニール傘買ったり、しかもそれをどこかに忘れてきちゃったり。
‐その度500円無駄にするという。
もっと言うと、僕は傘を買うためにお店に入ること自体ストレスなんですよ。そもそも傘自体嫌い。
だから(服が雨を弾くから)濡れても大丈夫、という気持ちで生活できればそれがいいなって。さらに持ってる服にその機能があったらそれがいいんじゃないか。
‐ただ「持ってる服に機能がついたらいい」ってことに気づかないことが、意外と多いんじゃないかとも思うんですよ。
潜在的には思ってるんだけど、当たり前すぎてみんなやり過ごしちゃうんだよね。だから、そこに気づいたらもっと生活がしやすくなるよね、そういうサービスです。
‐このプロジェクトが始まる前に、買って10年以上経つバンドTをCATCHER加工してもらったんですけど。
結構ボロボロでここ3年くらい着てなかったけどまた着たいなと思って。そしたら防臭だけじゃなくて風合いも変わって、また着られるようになって。
ありがとうございます(笑)。服って意外と捨てられないんですよね。思い入れがあるから着る、みたいな着るモチベーションをつくるのもこのプロジェクトのひとつで。
でもこのプロジェクトで難しいのは想像力が必要なところ。そこが課題ですね。
クリーニングはマイナスをゼロに、僕らはゼロをイチに
‐今回のファンディングを始めてどれくらい集まってますか?
今2週間くらいで454,000円です。(※取材時点の数字)
‐これまでのプロジェクトと比べると……。
正直遅い。これまでみたいにプロダクトがあって「コレどうですか」ではないから、「ほしい!」となりにくい。お客さんには、すでに持ってる服のことを考えてもらわないといけないんですよね。
だから今回の取材とか、CAMPFIREのライブファンディングとかやってみようと。
‐今回のプロジェクトの伝わりにくさや、お客さんに考えてもらうというステップは挑戦ですよね。
もうちょっと身近に捉えるとクリーニングみたいなものなんだよね。汚れたら出す、着たら出す。プロセスは一緒だけど、「アップデートさせるサービス」ってこれまでにない。
‐クリーニングと言えば、この前クリーニング屋にダウンジャケットを出して、撥水加工もお願いしたんです。で、よく考えたら今回のプロジェクトに近いことってすでにあったわけです。
でも(自分は)これまでなぜやろうと思わなかったんだろう、と。
クリーニング屋は受け仕事、待っているやり方なんですよ。で、僕らは積極的にアップデートしていこう、というやり方。その違いじゃないかな。
‐たしかにクリーニング屋は既に「服をきれいにする」という役割があるし、マイナスをゼロにしていく感がありますね。
そう、ぼくらはゼロをイチにしていくことをやってる。
‐アップデートしたい服がある人ってどれくらいいるんですかね。
洋服が好きな人だったらあるかなって思います。
というのも、僕はずっと販売やってて服がたくさんあってたくさん捨てたりあげたりしてきて、一度服を整理したら残るのって10年くらい着てるものだったりする。思い入れのあるアウターだったり、インナーも同じものを買い換えていたり・・・。
あと、僕って実はうちの服をあんまり着てないんですよ(小声)。だから他の服がニオイを吸着してくれたりしたらいいなって。
‐(笑)。ただ、今のところファンディングがはいつもよりうまくいっていないと。
はい。
‐「アンバサダー募集」というリターンもやってますよね。
1万円でうちの服を提供するからこのプロジェクトを広げてね、っていう破格のリターンです。
で、うまくいってないときにアンバサダーのフェイスブックグループに投げかけたら
「自分の持ってる服でどういうことができるのかが想像できない」と言われて。
それでまずはファンディングページを改修しよう、そしてアンバサダーさんに協力してもらってどんなものが集まっているのか、事例を載せていこうとなりました。
‐アンバサダーってどんな人たちなんですか。
今23人で、今回新たに知ってくれた人もいるけど、毎回支援してくれてる人とかお店に来てくれてる方とかが多いですね。
‐クラウドファンディング自体、自分たちがやっていることの信を問うツール、みたいなところがありますよね。
さらに「自分たちがやってることへのアドバイスを求める」「自分をさらけ出す」って一般のアパレルブランドの感覚だとなかなかできないことだなと思います。
それは全然抵抗ないんです。犬か猫かでいうと犬的なのかも。腹をさらけ出す。わかんないことがあったら人に聞け、と。親に言われたでしょ(笑)。
お客さんとつくる「お店2.0」
さらに言うと、今度お店を移転するんですけどそこではお客さんが仕入れたものを売っていこうとしてて。お客さんが「ALL YOURSっぽい」って思ったものを売っていくっていう。
(写真:ALL YOURS店舗には、取材中も絶えず来客が訪れていた。)
‐まさに「ALL YOURS」。
そうそう、究極「お店は誰のものか」ってことで。僕は「お店2.0」って呼んでるんだけど。
‐お店2.0。
お店は来てくれるお客さんのものでもある。それなら常時開いているべきである、それは場所ではなく精神的に。オープンソースであるというか。
‐この前は裸にもなってましたもんね。
あぁ、あれは初心を取り戻したくて。最近真面目なコンテクストが多すぎて、嫌なヤツに見られることが多くて……。あなたの編集のせいで(笑)。「ヘンな奴がやってる」って思ってもらいたいなと。
(写真:2月から予約受付を開始した新商品の紹介ページでは裸に)
‐(笑)。
それも含めてオープンである、全部見せる、裸であるってことは意識してて。僕、情報解禁って言葉が一番嫌いで。うちの経営方針のこととか、Twitterでガンガンつぶやいてるからフォロワーさんが一番早く情報知るんです。社員は「聞いてないよ」って(笑)。
うちのウェブサイトって売れた金額も買ってくれた人数も全部見せてるんです。僕らはお客さんに育てていただいている、だから親に通知表見せるような感覚。ほんとは決算報告なんかも……。
‐おっ。
全部見せていきたい。それはいろいろ難しいんですけど。お店も「お店2.0」をやっていく。
僕もどんどん面白いところに飛び込んでいこうと思っているけど、自分だけじゃなくていい。同じ目線で見てくれる人を増やしたいなって思ってます。
‐それも「ALL YOURS」ですね。
お客さんに「育ててもらえる」ブランドになる秘訣とは
‐そういえば去年の「毎日着てしまう」服を、ほんとに毎日着てみるってブログありましたね。
そうそう! お客さんに育ててもらってる、とか参加型って言ってることをほんとにやってくれてる方がいるんですよ。
‐試してみようと思わせるコンセプトがおもしろいし、そういうユーザーさんがいることも面白いですよね。何が熱狂的なユーザーが生まれる秘訣なんでしょう。
なんだろう……。お客さんが使いやすいってのを重視してるのはあるかも、個性を邪魔しないように。なんだろうねわかんない、みんな俺のこと好きなのかな(笑)。
(写真:現在木村さんはクラウドファンディングの無料相談も受け付けている)
‐それはきっとあるんでしょうけど(笑)、そもそも「服はユニクロでいい」と思われる時代に、ユニクロじゃなくてオールユアーズがいいって人がいて、というか生まれてきている。
僕もユニクロでいいと思ってる派です(笑)。あ、生活に近い目線で語るからかな。
たとえば「毎日着られる」って機能で語ると、防シワとか速乾とかってことになる。でもそういうのを一言で言うと「毎日着たくなる」になる。その方が面白いし、ユーザーに近い言葉で語ってるってことかも。
‐その話に乗っかると、今後70Seedsでは取材を「対話」にしたいなと思っていて。
いいじゃない。
‐取材対象にとって何か得るものがあって、「話せてよかった」となるように。
この会話から記事になるのって3分の1くらいだもんね、それがもったいないねってことで生配信も始めてるから。
‐方言とか声とかそれも個性で、ひっくるめて届けていきたいなと。
あとどういうテンションで喋ってるか、方言もその人のことを伝えやすいよね。テキストにすると標準語にしないといけなくて、ニュアンスが伝わらないし。すげーわかるな。
【取材を終えて】
次々と新しい挑戦を続けるALL YOURS。自らを「ライフスペック屋」と語る通り、「服を売る」だけの存在ではない役割をつくっていく姿勢には、アパレル業界ならずともこの先の「商売のあり方」を考えていくヒントが詰まっていました。
ALL YOURSの最新プロジェクト「#作らないでつくる」はこちらから!
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