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服づくりからカルチャーづくりへ-INHEELSが問い直す“エシカルファッション”の意味

カルチャーの街、東京・下北沢。古着屋が並ぶ雑多な路地を入ると何やらスタイリッシュなお店が一軒。店内に足を踏み入れると、まるでヨーロッパのお洒落なセレクトショップにいるような感覚。ブラックのワンピースからこれからの季節着回せそうなシンプルなニット、古着やカラフルなランジェリー。中央には、個性豊かなアクセサリーもずらり。そこはエシカルファッションブランドINHEELS」初の直営店CHANNEL01

 

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ところで、みなさんは“エシカル”というとどのような印象を持ちますか?

 

“エシカル (Ethical)”とは、直訳すると“倫理的・道徳的”という意味。幅広い定義を持ちますが、最近ではみなさんにとっても身近な存在になってきたオーガニックやフェアトレードなどの言葉も‟エシカル”の理念に含まれます。

 

しかし、INHEELSの“エシカル”はその言葉の持つ意味から想像もしづらい、“クール&セクシー”であると表現します。

 

“エシカル”という真面目そうな背景とは裏腹に、異端とも言える企業文化を併せもつINHEELS。ビジネスを通じて、“エシカル”やファッションカルチャーに新しい息吹をもたらし、活動を拡げるINHEELS COO(最高執行責任者)の布田尚大さんに話を聞きました。(写真/左・INHEELS共同代表 岡田有加さん、右・COO布田尚大さん)

 

 

 


 

 

僕はそこまで善人ではない

 

-INHEELSはどのようなブランドなのでしょうか?

 

INHEELSは2012年に立ち上がったエシカルファッションブランドです。フェアトレードなものづくり、エコな素材、サステナブルなデザインを追求し、30年後も持続可能なものづくり、ファッションを目指して活動しています。

 

-店内の商品もそうですし、今日の布田さんのファッションを見ても私がイメージしていた、いわゆるエシカルなファッションとは違いますね。

 

エシカルファッションというとナチュラルテイストな優しい女性が着ているイメージを持っている方が多いと思いますが、INHEELSのブランドコンセプトは「Who Said Ethical is not Sexy?(エシカルがセクシーじゃないなんて誰が言ったの?)」。エシカルファッションの理念はそのままに、セクシーでクールなデザインを追求しています。

 

-ファッションはもちろん、もともとエシカルやソーシャルな事業に関心があったんですか?

 

そうですね。前職は外資系の展示会主催企業にて企画営業をしていましたが、何か新しいことを始めたいと思い、もともと関心のあったソーシャルデザインを中心に色々探していました。素敵なプロジェクトはたくさんあったんですが、ノリが合わないかもなと感じたんです。お金に余裕のある主婦やフリーランスの方々が真面目に和気あいあいと楽しくやる場面が多くて・・・お酒も飲まず(笑)。それはむしろいいことでもあるのですが、俺は違うんだけどなと思って・・・。

 

ー確かに、ソーシャルビジネスをやっている人っていわゆる「真面目な方」が多い印象ですね。

 

多いですね。純粋に社会貢献がしたい人が多いんだと思います。それこそ、地域創成、フェアトレード、LGBTだったり・・・色んな社会問題に興味があって活躍されている方が多くて。それはそれで素晴らしいことなんですが、僕はそこまで善人ではないんですよね。もちろん、(社会問題が)改善されたらいいなと思っています。でも、自分はその軸だけで24時間活動するのは正直きついなと・・・。

 

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ー布田さんってどういう人なんですか?

 

大学時代はテニスサークルに入っていて、いわゆる“テニサー”といった感じの飲んで、テニスして、また飲んで、みたいな生活を送っていました。僕にとってはそういう生活や、いまだに飲みすぎてばっかりの当時からの友人も大事で。それと同時に、「ソーシャル」「社会貢献」とは違う価値観も織り交ぜながら許容できたらいいなと思ってます。

 

ーそういった意味では、布田さんは異端とも言える?

 

布田:INHEELS自体、異端だと思います(笑)。僕はINHEELSのそういうところに惚れ込みました。エシカルなんだけど、セクシーだし、ビジュアルもナイトカルチャーの雰囲気で。色々見たなかでINHEELSは異彩を放っていましたね。僕の求めていた雰囲気にマッチしました。

 

岡田:INHEELSはまだ小さい企業ですし、私のキャラも良くも悪くも濃いので、布田の性格とかチャラい感じとかは一緒に働きやすいですね(笑)。

 

布田:チャラい感じ(笑)。

 

岡田:でもそのなかで、しっかりお互い得るものがあるし気持ち良く働けていますね。

 

 

「いいこと」からカルチャーにもっていきたい

 

ー布田さんは現在、INHEELSのCOOとしてどんな活動をしているんですか?

 

主には法人事業のゼロからの立ち上げ、ビジネスオペレーション全体です。INHEELSは現在4年目で3年目までは小売り事業がメインだったんですが、スケールをもっと加速させる手段を探していました。そのひとつが法人事業で。企業のノベルティや制服等を作って大手企業を巻き込んでいければロットを出せるし、可能性を感じました。

 

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ーまずは法人を通して数を売っていくと。

 

はい。社会的インパクトを出したいと考えた時に、色んな捉えられ方があるかと思いますが、INHEELSとしては、スケール、数を売って経済的なボリュームを作ってこそ初めて社会的インパクトを出せると思っています。何か裏付けがあるわけではないですが、売上2億くらいを目指す感じですね。

 

ーその次に何があれば社会的インパクトを出せたと感じますか?

 

感覚的ではありますが、「エシカルってカッコいい」と思える人が増えている実感を持てることですかね。エシカルって社会にいいこと、地球にとっていいこと等の文脈でメディアに登場することが多いけど、その「いいこと」から「かっこいい」、例えばサードウェーブのようなカルチャーに近付いているかどうかも一つの指標になると思います。

 

ーここ数年、エシカルがハイファッションの文脈で注目されたり、日本でも浸透しつつあるのかなと思ったんですが、実際にエシカルが広がってきている手応えはありますか?

 

正直あまりないですね。感覚としてもないですし、データを見ても認知率が10%くらいを推移してるんですよ。確かに企業やメディアが取り上げたり、企業がCSR・CSVにより力を入れたりといった動きは増えたと思うけど社会にはまだ波及していないと思います。

 

ーそれはなぜなんでしょう?

 

単純にファッションに関してはカッコよくないからだと思います。もちろん、カッコいいのもあるけどもっとカッコよくないといけない。あと、考えられるのは、エシカルコミュニティみたいなものがあって、国際協力なんかに興味を持った学生さんなどで流入が少しずつ増えてはいるけど、ここ数年くらい、コミュニティの顔ぶれが変わらないんですよ。もっとファッションが大好きな人など他のジャンルの人たちに訴求して増やしていかないといけない。これは僕のミッションだと思っています。

 

ーそうするとエシカル=クールに対する一般の反応はさらに薄い?

 

そうですね、まだ無いですね。むしろ、偉いね、重要だよね、意識高いよねとかの反応が多いですね。自分からは離れてるけど、それをやってるあなたは偉いねという方が多いです。周りの友達からは「変な服屋を手伝ってる」という認識なくらいですから。

 

ー変な服屋(笑)。

 

岡田:光栄です(笑)。

 

布田:ですね。それこそテニサーの友達のように、自分の周りには色んなコミュニティがあって、「エシカル」について関心が低い人の肌感覚を知っているということは強みだと思います。

 

 

エシカルは“考える余地がある”

 

ー今はファッション、アパレル業界が厳しい時代だと言われてますが、そのなかでINHEELSが選ばれるためにどうしていきたいですか?

 

「エシカルファッションと言えばINHEELS」という、最初に思い浮かべてもらえるポジションを獲りに行きたいと思っています。アパレルは確かに苦しいですけど、逆にチャンスだと思っています。今、アパレル業界はハイファッションとファストに二分化されていて、特に中間が厳しいと言われているので、そこのボリュームが減ってくるのではないかと思っています。そのなかでエシカルという強力な個性があれば目立てるんではないかと思っています。

 

ーなるほど。

 

でも、INHEELSだけが成長すればいいとは思っていなくて。INHEELSだけ拡げてもそれまでというか。エシカルやサステナブルってカッコいいよね、というカルチャーにしてはじめてソーシャルインパクトを出さないと意味がないと思っています。先日そういうテーマで学会発表したら賛否両論でしたけどね。

 

ー例えばどんな意見があったんですか?

 

エシカルとして一致団結する「企業群」として売れていくことにあまり実現可能性を感じないという声がありましたね。

 

ー同じように「企業群」として昔流行った裏原系もあるのにエシカルはだめ?

 

僕が思うには、“エシカル”が主観的な概念、アイディアだからかなと。エシカルって生成りのものやエスニック調のものとか、人によっては古着もエシカルだし、INHEELSみたいなスタイリッシュなエシカルもあるし・・・“エシカル”で束ねて打ち出すモチベーションがないからじゃないでしょうか。反対に、裏原系は当時、地域に密着してみんなつるんでたと思うんですよね。その“つるめる度合い”がエシカルは弱いと思います。

 

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ー先ほどのコミュニティの狭さの話につながりますね。

 

繋がりますね。特にファッションは日常的に接する部分だし、色んな人に接しうる可能性があるので閉じているのがもったいないと思います。ソーシャルのなかの位置づけとしてファッションは先鋭的であり得る、境界を切り開くところを担えるはずなんです。

 

ー境界を切り開く、いいですね。では、エシカルをまず広げるのに一番近いのはどういう存在ですか?

 

やはり、サブカルが好きな人たちですかね。映画、演劇、音楽とか。

 

ーというのは?

 

エシカルって考える余地があると思うんです。思考する材料として格好だし、まだまとまっていないからこそ自分なりのエシカルを付加できるので、物事を考えるのが好きな人たちには良いと思います。社会にいいことをする、というよりは一つのアートフォーム・自己表現の手段だと考えているんです。なので、表現をすることが好きな人とは親和性が高いと思います。

 

ーこれまで多くのソーシャルな取り組みを取材してきましたが、良い話のなかでも、率直なご意見やビジネス周りの話も聞けたのは貴重でした。

 

INHEELSは矛盾する価値が入り混じっているのが魅力的だと思っています。一見スタイリッシュだけど、実はエシカル。ソーシャルビジネスも資本主義の土台に乗ってるけど、回路を周っていくととても利他的な社会貢献に繋がるというわけであって。相反するものが混じり合っているものは美しいと思います。代表の岡田もですが、二人ともビジネスマインドが強いので、貧しくてもいいから、清貧でもいいから社会貢献がしたいんです、みたいな会社ではあってはいけないと思います。社会にいいこと、人に優しくするためにはある程度パワーが必要なんじゃないかと。それを得るためにもエシカル、INHEELSを拡げていきたいと思っています。