「Attention please!」―”機内”アナウンスが流れ、いよいよ離陸開始。

 

ミャンマー旅行に行ってきました!

 

…とは言っても、今回私が搭乗したのはLunchTripが主催する「ミャンマー便」。LunchTripは「美味しい笑顔が世界を好きになる直行便」をキャッチコピーに、毎回違う国をテーマに開催。日本にいながら、食と旅をとおして知らなかった世界を学び、自分のこととして考える体験を提供する素敵なイベントです。スタッフは”クルー”、参加者は”パッセンジャー”と呼ぶなど、空の旅に見立てたユーモアあふれる仕掛けも見どころです。

 

※LunchTripの成り立ちや想いについてはこちらのインタビュー記事をご覧ください。さて、みなさんはミャンマーへ行ったことありますか?民主化が進み、その激動する姿は世界中から注目を集めています。私は「ミャンマー便」に”搭乗”するまでは、正直なところ、あまり詳しくは知りませんでした。

 

今回のミャンマー便のテーマは「発酵食」。近いようで遠い存在だったミャンマーが、食文化を通じて少し身近に感じられる…そんなミャンマーの美味しくてエキサイティングな空の旅の様子をお届けします!

 


 

 

世界中の注目が集まる激動の国、ミャンマー

 

LunchTripでは、料理を食べる以外にも、その国やテーマに詳しい人が旅の”ガイド”となり、様々な話が繰り広げられます。

 

まずはじめに登壇したのは、2013年から国際教育支援NPO、e-Educationにてミャンマーを担当している小沼武彦さん。冒頭、そんな小沼さんから素朴な質問が投げかけられました。

 

小沼:「ミャンマーってどんなイメージがありますか?」

 

「アウンサンスーチーさん」や、最近、迫害を受けていることでも話題になっている少数民族の「ロヒンギャ」、「軍事政権」など…パッセンジャーからパラパラと声が挙がりました。私が知っているのも、ここ数年でニュースになっていた政権交代にかかわるお話程度。

 

そんな私たちに向けて小沼さんから、ミャンマーの基礎情報や現状について、民主化直後からミャンマーを見てきた彼ならではの体験談を交えたレクチャーがはじまりました。

 

日本の約1.8倍の国土面積を誇るミャンマーの人口は、約5,000万人と推定されています。これまで国が閉鎖していたこともあり、実は最近まで正確な数字が得られなかったそうです。

 

また、その急速な民主化や経済発展が進む様子は国際的にも注目され、「最後のフロンティア」とも称されるほど。世界中の企業が中国をはじめ、東南アジア諸国に安価な人件費を求めて海外へ進出してきましたが、経済発展に伴い人件費が高騰。これまで閉ざされてきたミャンマーはアジアに残された最後のフロンティアというわけです。

 

これには地政学的な要素も大きいと小沼さんは話します。ミャンマーは、タイ、ラオス、バングラデシュ、中国に隣接しており、さらには中国に並ぶアジア大国インドとも距離が大変近く、東南アジア諸国のハブのような存在。各国は陸路での物流ルートを確保するため、ミャンマーの市場に参入しており、中国やインドとのパイプラインの敷立や、インフラ整備のプロジェクトがどんどん進んでいます

 

(画像:Google Map)

 

さらに、ミャンマーではレアメタルや宝石類などの天然資源が豊富。特に翡翠は世界でナンバーワンクラスのクオリティを持っているのだそう。

 

ここで、小沼さんからちょっとしたクイズが出題されました。

 

小沼:「ミャンマーの民族はいくつあると思いますか?」

 

…みなさんはいくつだと思いますか?小沼さんが答えたその数字は、私の想像を遥かに超えるものでした。

 

小沼:「ミャンマーには135種類の民族が存在します。」

 

機内からも、「へー!」「お~」と感嘆の声があがりました。一番多いのは、国民の70%を占めるビルマ族で公用語もビルマ語。その次に多いのは、シャン族という少数民族。また、数多くある少数民族のなかには、”カチン族”や”ロヒンギャ”のように、差別や迫害を受け苦しんでいる民族もいて、国際社会からも注目を浴びていることが語られました。

 

まさに激動の国、ミャンマー。そんなミャンマーの変化を直接肌で感じた小沼さんの体験談もリアル。

 

小沼:僕がミャンマーに行ったときは、ATM0台というとろから、現在は数千台あるし、日本食レストランも15軒ほどだったのが、今は数百軒あります。携帯の普及率も僕がいた時はSIMカードなしで一台20,000円だったのが、今は150円!

 

これまで新聞は規制がされていましたが、今では色んな民間の新聞紙が街中で販売されています。”民主化”というキーワードで国がどんどん発展しているんです。

 

ミャンマーが凄まじい勢いで発展している様子が伝わります。複雑な政治事情や内戦はあるものの、ミャンマー人はみんな優しく、歴史的な背景もふまえて今後ミャンマーを楽しんでほしい、と最後に小沼さんは締めくくります。

 

 

ミャンマー・シャン族にとって発酵食は死活問題

 

さて、ミャンマーの基礎について学んだところで、今回のメインテーマであるミャンマーの料理、そして発酵食について紹介するガイド2名の登場です。

 

まずは、異色の肩書”発酵デザイナー”として国内外に活躍の場を広げる小倉ヒラクさんのご紹介から。ヒラクさんはデザイナー兼微生物研究家として、一般の人でも発酵や微生物の面白さが分かるようなプロジェクトを作っています。日本の食文化を支える発酵食品の発酵菌の目に見えない働きや素晴らしさを口で説明するのではなく、”デザイン”を使ってその魅力を伝えています。アートディレクションからパッケージ、コンセプトデザイン、絵本やアニメの制作など、お仕事も多岐にわたります。

 

そして、次に紹介されたのは、今回のフライトのお料理(機内食というには豪華過ぎる…)を提供した、ミャンマーのシャン族料理店『ノングインレイ』のオーナー、スティップさん。在日ミャンマー人が多く、”リトルミャンマー”とも呼ばれる高田馬場にお店を構えます。メディア掲載実績も多数、連日、日本人やミャンマー人で賑わうほどの人気店なんだとか。

 

スティップさんは、ラオス出身のシャン族。シャン族は、中国、ラオス、タイ、ミャンマーの北東部にあるシャン州など、国をまたがって住んでいる民族だそうです。そんなスティップさんは、シャン族の発酵食文化について語りました。

 

実は、シャン族は、豆腐、お漬物、そしてなんと納豆もよく食べるのだそうで、日本の発酵食文化と共通する点がたくさんあり、発酵食品はシャン族の人たちにとって、大事な保存食だということが語られました。昔は、5日に1回のペースでやってくる移動式市場でしか食材を買えなかったんだとか。今でも小さな村の家庭には電気が通っておらず、冷蔵庫もないため、現在でも発酵食品はシャンの人にとって重要な保存食として受け継がれているそうです。

 

そんな発酵文化を生んだのが、シャン州の山間部の気候。乾燥しており朝晩の気温差が大きく、発酵に適しているんだとスティップさんは話します。日中は食品を天日干しにして乾燥させたり、寒さと暑さを利用することにより、発酵熟成が進むんだそう。

 

ここで、本日振る舞われるメニューの発酵食品について説明が始まりました。

 

まずは、「お肉とお米の皮なしソーセージ」について。

 

豚の挽肉の赤身、お米、塩を混ぜ合わせてラップにつつんで重石をし、3日間発酵させて出来上がり。本来は、生でも召し上がれるそうですよ!

 

次に、本日の料理、納豆味噌そうめんのトッピングにも使用されている高菜漬けについて。高菜を小さく刻んでから、唐辛子、黒砂糖を混ぜ合わせ、空気を抜いて袋に入れて3日間程置いておきます。高菜漬けは日本でもポピュラーなお漬物で、よく似ていますね。

 

また、個人的に「納豆って日本特有の発酵食じゃないの?」とずっと気になっていた納豆については、配られたシャン州の”納豆せんべい”をつまみながら、納豆文化の新たな一面を知ることになりました。

 

スティップさんの友人でもあるという、ノンフィクション作家・高野秀行さんが現地の納豆文化を取材した際の動画も流れました。ミャンマーにも日本に似た納豆があること、さらには、納豆のバリエーション豊かな食べ方を知り、日本が実は”納豆後進国”だったことに衝撃を受け、アジア納豆に関する本を最近出されたそうです。そして、高野さんが実際に訪れたシャン州で出会ったのがこの”納豆せんべい”。納豆の風味がしっかりあって、香ばしい!食感もよくて…ビールに合いそう!

 

 

ミャンマーの納豆文化、日本に勝る!?

 

そして、ここからは小倉ヒラクさんを交えたトークセッション。納豆について、さらに議論がヒートアップしました。

 

ヒラク:納豆は毎日食べるんですか?

 

スティップ:はい、本当に毎日のように食べます。ミャンマーでは納豆の色んな取り入れ方があって、日本でいうところの味噌のような役割でしょうか。汁物に入れたり、うまみ調味料として、唐辛子やにんにくと混ぜて使ったり。

 

日本にも納豆があるにも関わらず、他の発酵食に例えられてしまうとは…!

 

ヒラク:ミャンマーの典型的な朝ごはんにはどんなものが?

 

スティップ:焼き魚に高菜のお新香とスープ。スープには、納豆とお野菜を入れ、塩で味付けします。

 

ヒラク:納豆はまさにシャン族のソウルフードですね。その納豆は、普段どこから手に入れてるのか気になります。

 

スティップ:村に納豆を専門に作っている人がいるので、分けてもらうんですよ。

 

ミャンマーの納豆文化、恐るべし!これには、ヒラクさんも思わず「ミャンマーに行きたい!」と興奮を隠せない様子でした。そして、話は日本の発酵食とのさらなる共通点探しへ。お味噌、醤油、魚醤、お漬物…そのなかでお酒の話もあがりました。ミャンマーでもお酒は焼酎が一般的だそうで、原料はお米や玄米。発酵の専門家としてヒラクさんからはこんなお話も。

 

ヒラク:アジアとヨーロッパのお酒は結構違うんですよ。ヨーロッパのお酒は葡萄とか麦芽で作んですが、穀物や果物のなかには糖分があって、その糖を酵母という微生物が食べてアルコールを出し、お酒ができる。すごくシンプルな発酵。一方で、アジアではお米からお酒を造ることが多い。お米自体に糖分がないので、発酵に二段階必要なんですよ。最初にカビ(麹)をつくり、そのカビでお米のでんぷん質と糖化させた後に酵母を使う、ちょっと複雑な発酵ですよね。これを持っている文化と持っていない文化があって、ミャンマーはそういう意味では日本と同じ系譜の発酵文化を持っています。ただ、日本の場合は蒸留して焼酎にしないで、日本酒にして飲むのがどちらかというとメインですね。

 

お酒の造り方も”文化”として捉えれれば、今後楽しみ方が変わってきそうです。続いて、ミャンマー料理のなかでもシャン族の食生活について話が展開されました。

 

ヒラク:シャン族の食生活は他の民族の人たちと違ったりするんですか?

 

スティップ:結構異なりますよ。ビルマ族の料理は油っぽかったり味も濃いです。シャン州のなかでも中国に近い地域では、中華系の料理が主流だったり。

 

ヒラク:そうなんですね。でも、その料理を美味しくする油をつかわなくても、シャン族の料理が成り立っている理由はなんですか?

 

スティップ:うーん…それはやはり食材が持つ自然の美味しさを活かせているからでしょうか。素材の味ですね。

 

ヒラク:去年、ブタペストで世界発酵食学会に参加したんですけど、和食って何が面白いって、動物性たんぱく質や脂質をあまり使わなくても美味しいというのがあって。みんなと色々話してわかったのが、それは味噌と醤油なんですね。味噌と醤油って油がなくても料理の味がまとまるので、和食はある意味ヘルシー。シャン族も似てるんじゃないかと。

 

トークセッションでシャン族料理の魅力をたくさん聞き、お腹が減ってきたところで、みなさんお待ちかねのランチタイム!

 

前菜には、お茶っぱサラダ(ラペット)と納豆味噌で食べる野菜スティックが振る舞われました。

 

(写真:お茶っぱサラダ「ラペット」)

 

お茶の葉を発酵させ、豆やナッツ類、キャベツ等と混ぜ合わせたミャンマーの伝統的なサラダ。ピリ辛で少し酸味が効いていてすごく美味しい!今回のサラダには5種類のお豆が入っていて、ナッツもとても香ばしく、やみつきになりそうです!

 

(写真:納豆味噌の野菜スティック)

 

日本でもこのようにお味噌をつけて食べたりしますよね。こちらのソースには、納豆、トマト、ピーナッツなどを混ぜて作ったのだそうです。

 

そして、次に運ばれてきたのは、「納豆味噌そうめん」、「お肉とお米の皮なしソーセージ」と「納豆チャーハン」。デザートにはタピオカをいただきました!

 

(写真:納豆味噌そうめん)

 

酸味があってツルっといけちゃいました!夏にまた食べたい。

 

(写真:お肉とお米の皮なしソーセージ)

 

素材を活かしたシンプルな味で、こちらも美味でした!

 

 

発酵食BARに発酵婚活!?

 

お腹も満たされ、最後のコンテンツであるワークショップにうつります。お題は発酵食品の魅力。発酵食の新しい楽しみ方をグループになって考え、発表しました。

 

発酵食品の魅力として、多くのグループが挙げたのは、旨味成分、保存性、美容・健康に良いということ。そして、発酵食の新しい楽しみ方として、ユニークなアイディアがたくさん出ました。特に、ヒラクさんやスティップさんの評価が高かったのは、”発酵食BAR”。駅ナカに野菜ジュースBarがあるように、忙しい人が朝気軽に立ち寄り、納豆やお味噌汁などを食べれるお店。あるいは、みんなでワイワイ発酵料理を作りながら婚活パーティを提案したグループなんかも。味噌づくりと恋づくりのワークショップを開いているヒラクさん曰く、発酵食づくりには共同作業も多く、麹は二泊三日で作ったりもするので、「結構Boy meets Girlする」とのこと(笑)。

 

ワークショップが終わると、二時間半の楽しかったミャンマーの旅もいよいよ幕を閉じます…クルーの着陸のアナウンスが流れ、成田空港に到着です!

 

到着後、パッセンジャーにも旅の感想を聞いてみました。

 

「海外旅行が大好きで、その国の文化も知れるので参加したいなと思っていた。」

「ミャンマー料理って普段食べれることないと思う。とても美味しかった。」

「今回参加するまでミャンマーのことはあまりよく知らなかった。まして、発酵食がこんなに使われているとは…唯一無二のイベントで楽しかった!」

 

知らない国の文化に触れられて、美味しい料理が食べられて、みなさんとても充実した様子で帰路に…

 

(写真:今回のイベントは、ミャンマー大使館のある品川区のシティプロモーション事業の一環で開催されました。)

 

LunchTripは都内を中心に定期的に開催しており、次回のLunchTripは「シンガポール便」だそうです。この機会に一度”搭乗”してみてはいかがでしょうか?

 

LunchTrip共同代表・松澤さんへのインタビュー記事はこちら。こちらもぜひお楽しください!

 

 

 

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