鈴木賀子
ジュエリーメーカー、広告クリエイティブ領域の製作会社、WEBコンサルティング企業を経て、2016年より70seeds編集部。アンテナを張っているジャンルは、テクノロジー・クラフト・自転車・地域創生・アートなど、好奇心の赴くまま、飛びまわり中。

皆さんが最後にお祭りに行ったのは、いつでしたか?伝統的な大きな祭りから、商店街の小さなものまで日本各地で繰り広げられるさまざまなお祭りですが、近年は人手不足やマンネリ化で活気が失われつつあるといいます。

 

そんな「お祭り界」で今注目を集めているのが、「お祭りコンサル」を名乗る若者たち。聞きなれない肩書ですが、今や日本だけでなく世界にもその活躍を広げているんだとか。

 

そもそも「お祭りって変えられるものなの?」という疑問を胸に、「お祭りで日本を盛り上げる」を旗印に掲げ、2014年7月に本格的に発足した株式会社オマツリジャパン代表の加藤優子さん、COOの山本陽平さん、CFOの橋本淳央さんにお話を伺いました。

   

元気になれる不思議ツール「お祭り」に注目した理由

‐オマツリジャパンというド直球なネーミングですが、立ち上げにはどんなきっかけがあったんですか?

加藤:青森ねぶた祭りに行ったのがきっかけです。私は東京出身ですが、青森には祖母の家があるので毎年行っていました。

大学3年生のときのねぶた祭りは、東日本大震災から5ヶ月ぐらいしか経っていないからか、観光客がとても少なかったんです。

けれど始まったら地元の人達だけでも盛り上がっていて、久しぶりに元気な人を見たなと。

「すごいなあ、お祭りは日本人の力の源かもしれないな」と思いました。調べてみたら、ねぶた祭りだけで238億円もの経済効果があるという説もあります。

楽しくてビジネスになって、みんなが元気になる。「こういう仕事もあるかもしれない」と感じましたね。

‐お祭りの持つパワーを目の当たりにしたわけですね。

加藤:大学卒業後は漬物メーカーで働きながら、オマツリジャパンというお祭り好きの集まるFacebookページを立ち上げたんです。

そのときに山本と出会って、お祭り話で意気投合しまして。オマツリジャパンも、おもしろそうなお祭りにみんなで行ったり、お祭りをつくってみたりと、サークル活動のようになっていきました。

‐加藤さんと山本さんは、当初からお祭り好きだったんですか?

山本:僕は趣味でずっと世界のお祭りを巡っていました。加藤との出会いは、栃木で共通の友人がやっていた田植えに参加したとき。

お祭りの話が聞こえたので、声をかけて……というのが始まりです。本当に偶然ですね。

加藤:私は日本の奇祭や、びっくりするようなお祭りに興味がありました。でも奇祭じゃなくても、落ち着いて見るとお祭りって不思議ですよね。

例えばお神輿もすごく一生懸命だけど、外国人からしたらよくわからないし、「What are you doing?」みたいな(笑)。元気が出る不思議なツール、それがお祭りだと思っています。

‐そこからビジネスへ踏み切るには、どんなきっかけが?

加藤:神奈川県のある商店街で、ハロウィンのお祭りをどうするか困っていると聞き、お手伝いを始めたんですよ。

ポスター作りや装飾をする程度だったのが、だんだん企画から関わらせてもらえるようになって。

ちょうどそのころ、オマツリジャパンの構想でビジネスプランコンテストに出るようになって、いろいろな賞もいただきました。もしかしたらビジネスにできるかもしれないと、かじを切ったんです。

‐そして会社を設立した、と。

加藤:はい。お祭りの元気がなくなっている背景には、補助金などに頼りすぎて、そのお祭りだけでちゃんと回る仕組みづくりができていない、ということもあるんです。

「これからは自立できるお祭りを作らなきゃいけない」という思いを込めて、株式会社という形を選びました。私たちの利益が上がれば、それだけ日本の祭りが盛り上がった、という意味もあるんですよ。

 

新参者が信頼を得るには、何度も足を運ぶべき

‐お祭りプロデュースの依頼は、どのように受けているんでしょう?

加藤:プロデュースをするのは関東近辺が多いです。実はこちらから営業に行くことはあまりなくて、メディアで知っていただいたり、ご紹介でお話をいただいたりしています。

地域のビジネスプランコンテストに出たりもしているので、そこで「困ってるんだけど、何とかしてくれない?」と広がっていったこともあります。

‐ひとつのお祭りに数ヶ月はかかると思うのですが、人手はどのように確保しているんですか?

加藤:実は、こうして2人がフルで入るようになったのは今年からなので、今やっとスタートラインに立ってガンガン進められるようになったと感じています。それでも我々3人だけでお祭りをつくるのはまず不可能ですね。

山本:そんなにたくさんできるものでもないですし、地域の人たちがどれだけ協力的かによります。

加藤:やっぱり地元の人たちにも、何とかしたいという想いはあるんですよ。主催者さん側でも知恵を絞って、「人手は出すけどちょっとここだけ助けてよ」みたいにお話をいただくことが多いです。

‐お祭りのプロデュースとなると、概念をつくりあげるというか……モノを納品するのとまた違いますよね。そういった難しさについては、どうですか?

加藤:最初は何も分からないし、地域の人とも繋がっていないので、関係構築には時間がかかります。

お話をいただいてから形になるまで、何度も足を運び、商店街の人たちと話し、時にはお酒を酌み交わしたり、街の良いところを教えていただきます。お祭りを一種のPRの場として、その良いところを生かしたいなと。

‐地域の人との信頼関係を築くには、どれぐらい通うんでしょうか。

加藤:人と人の付き合いなので、だいたい半年以上は必要ですね。特に初めのうちは足を運ぶ回数が大事です。

何も分からない中では進められないので、今は日帰りで行ける範囲でプロデュース依頼を受けています。

山本:向こう側は、みなさんボランティアですからね。ふだんは仕事をしていて、その片手間で準備をされているので。

‐地域の人たちと、いい関係を作る“コツ”があれば教えてください。

加藤:そうですね……単に受注・発注の関係ではなく、応援されている、一緒にやっている雰囲気というか。

「一緒に町を盛り上げていく感じ」が重要なんじゃないかなと思います。当事者になることが、いい関係を作るコツかもしれない。

確かにパワーは必要ですが、楽しいんですよね。各地にお父さんや親戚のおじさんがいるみたいで、温かい気持ちになります。

 

成功には地域の熱意が欠かせない。お祭りコンサルのリアルな側面

‐プロデュースを依頼されるお祭りには、どんな共通点がありますか?

加藤やる気やなんとかしなきゃいけないって思いはあるんですけど、少子高齢化で人手が足りない、人・モノ・金・アイデアがないというところですね。

山本:あとは、参加者にも運営側にも若い人が足りていない。商店街の「青年部」と言っても、50代60代の方が多くなってしまっている地域もあります。

‐みなさん、後継ぎがいない?

加藤:そうですね。ご主人は八百屋さんだけど、息子さんは商社で働いているとか。飲食店でずっとお店にいるので、地域のお手伝いもままならないとか。

山本:若い人はいてもチェーン店が協力的じゃない、というケースもあります。でも一方で、サポーターたちのように「お祭りに関わりたい」というニーズもすごくあって。だから、重要なのはマッチングだと思っています。

‐ですがそういうニーズを持つ人たちは、一人でもお祭りに参加しようとまでは思っていないんですよね。

加藤:そうですね、友達や家族と行く人が多いです。オマツリジャパンでコミットメントを集めて、「みんなで行こう!」となればいいですね。

橋本:お祭りですから、その方がより楽しいと思います。

‐たくさんのお祭りに関わる中で、残念ながら実現に至らなかったこともあると思うのですが。

山本:はい。たとえば、関東のとある町でお祭りの企画をしたときです。その街では製造業が活発だったので製造品をメインにしたお祭りを開催したら面白いんじゃないかと思ったんです。

加藤:ですが、街の人々はあまり乗り気じゃなく、企画は無くなってしまいました。お祭りは街ぐるみでの協力体制が大切ですね。

‐何回か足を運んでいても、同意を得るにはハードルがあるんですね。

山本いろんな方の合意形成を取らないといけないんです。反対する方、疑問に思う方、そもそも外から人が来るのはいやだと言う方……さまざまですね。日本に約30万のお祭りがある中で、全部をサポートするのはなかなか難しいです。

‐では次に、特にうまくいったプロデュース事例について聞かせてください。

加藤:集客面で言うと、最初に関わり始めた時と比較して、16倍の集客をした街もあります。

‐そこまで成功したのは、どんな要因があったんでしょう?

加藤やっぱり町の人たちががんばったんですよ。最初こそ私たちがアイデアを出したりしましたが、「もっと何かできるんじゃないか」と仲間が増えていって。

どんどん輪が大きくなってやる気がアップしていったんです。 今は私たちがいなくても回ります。

制作物やデザインデータなどは全て置いていくようにしていますし、来年以降は自分たちだけでできるよっていうのなら、それで良いと思います。

‐成功するには、地域の人たちの熱意が欠かせないんですね。他にも印象に残っているお祭りはありますか?

加藤:あとはある大きな商店街を通行止めにして、子どもの落書きコーナーをつくったんです。

というのも、そこではマルシェを毎月やっているんですが、通り過ぎるだけの人も多く、滞留時間が短いという悩みを聞きました。

それなら子どもの落書きコーナーをつくって、お母さんたちがゆっくり街を見られるようにしようと。

山本:プロデュースで関わるのは、市民祭り系が多いですね。神社仏閣の伝統的なお祭りへは、参加・見学できるツアーを組んでいます。

元々あったお祭りをリ・デザインすることもありますし、新しくお祭りを作ることもあります。

加藤:困っている市民祭りはプロデュースをして、伝統的なお祭りにはツアーで行く、という感じで。

「お神輿は見飽きたけれど、奇祭ならおもしろそう」みたいな人もけっこういますし。

 

海外にもお祭りの魅力を!ツアー目的はモノからコトへ

‐お祭りツアーでは、たとえば自治体から「うちのお祭りに来てほしい」なんて依頼が来たりするんでしょうか。

加藤:それもありますね。たとえば茨木県の笠間市には、青森のねぶたが来るんですよ。ねぶたには「跳人(ハネト)」と呼ばれる踊り手が必要なんです。

でもずっと跳ね歩いて回るから、若い人が多くいた方が体力的にお祭りが盛り上がる。そこで宿や交通機関の手配は笠間の観光協会にお願いし、若者を集めるところは我々がお手伝いします。

‐その参加者はみんな、サポーターの方なんですか?

加藤:SNSやチラシで広報させていただいたツアーなので、全員がサポーターではないです。私たちは集客のための企画などをお手伝いさせていただきました。

山本:うちでは2種類のツアーを扱っていて、ひとつは今お話したような若者向けの参加中心ツアー。そのほかに、外国人向けインバウンドツアーもやっているんです。

‐そんなツアーまで。外国の方が喜ぶお祭りって、どんなものなんでしょう?

加藤:参加できるものですね。なおかつ写真映えすると、さらに良いです。例えば浴衣を着るのは日本のどこでもできると思うんですけど、お神輿を担ぐのってなかなかないですよね。

特別な体験でセンスアップできるし、はっぴを着たり、地元の人たちとお酒を飲んだり、そういうお祭りがとても喜ばれます。

山本:あとは、築地本願寺の盆踊り。あそこは「日本で一番おいしい盆踊り」って言われているんです。場外市場の屋台がいっぱい出るので、レベルが高いですよ。

加藤:外国の方はいつお祭りやっているのかも、盆踊りの踊り方も知らないですよね。

そもそも盆踊りの輪に入っていいのか、何をやっているのかもわからないんです。なので、私たちのツアーで一緒に日本の文化を楽しんでもらいたいと思います。

‐やっぱり人気は体験型ツアーにシフトしているんですねぇ。

山本:ほんとに、モノからコトですね。お祭りのツアーって、日本人向けでも全然ないんですよ。

加藤:なんでないのかと言うと、いつでもできる体験じゃないので、すごく予約が取りづらいんです。日程が限られているので、スケジュールに合わないと行けないようで。

山本:今もうちで「7月8月ならお神輿や盆踊りができるよ」とは発信しているんです。具体的に反応があったら、「じゃあ何月何日にここでやるので、来てくださいね」みたいなやり取りはありますね。

目指すのは、お祭りをもっと身近に感じられる世の中

‐オマツリジャパンが目指す未来について教えてください。

加藤お祭りをもっと身近にしたいです。今でも、いつどんなお祭りがやっているかよく分からないじゃないですか。

例えば私はお酒が好きなので、近くで日本酒のお祭りがあったら行きたいのに、どこでやるか知らない。せっかく地域の魅力を発信できるのに、もったいないです。

でも、サポーターの間で「このお祭り行きます」と言ってみたらこんなに集まる。おもしろそうだって見てくれたり、いいねを押してくれたりするんです。

将来的には「休みどこ行こうか」となったとき、映画館や動物園みたいにお祭りという選択肢があったらいいなと。

‐確かに、各地のお祭り情報って一握りしか載っていないですよね。「お祭りという選択肢を増やす」って、素敵だと思います。

加藤:あとはインバウンド。外国の方がお祭りを目的にやって来るようにしたいです。

極端ですが、何もやっていない街と、お祭りをやっている街だと印象は違いますよね。日本に来てお祭りを見て、「なんか楽しそう」と思ってもらいたい。

‐お祭りをやっていると、なんだかワクワクしてきますもんね。

加藤:それにプラットフォーム、「お祭り版食べログ」みたいなものを完成させたいです。今も大きめのお祭りや花火大会はまとめられているんですが、「これおもしろそう!」と感じるお祭りって、役場のホームページに埋もれていることが多いんです。

そういうお祭りをもっと発信したく、オマツリジャパンでは言わば「お祭り版食べログ」を制作中です。

‐「お祭り版食べログ」!おもしろい発想ですね。いつぐらいに公開なんですか?

加藤:徐々にですが、一応は今年の夏前を目処に考えています。

山本:今お話した参加者向けとは別に、人・モノ・金・アイデアの不足を解決できるような主催者向けのプラットフォームも考えています。

加えてこれまでのツアーやプロデュースももっと広範囲に広げていけたら、オン・オフ両方でお祭りに貢献できると思うんですね。

加藤:お祭りで一番困るのは、やっぱり主催者さんなんです。人手は減っちゃったし、お金もないし。

そこを私たちが盛り上げることで地域の絆も強くなりますし、お金も回るんです。そういう活動が増えると、日本が盛り上がる。祭りは日本を盛り上げるトリガーなんだと信じて、がんばっています。

‐ターゲットとしては、どんな層を想定しているんですか?

加藤:どちらかと言うとウェブの話なので、若い世代に興味を持ってもらいたいです。

例えば「子どもと日曜日どこ行こうかな」と考えているファミリー層であったりとか。何食べよう、と調べるのと同じイメージで利用してもらいたいなと。

‐出資金もあると思いますが、今後のビジネスモデルも気になります。

橋本:プロデュースは先行投資がほとんど必要ないので、主力のプロデュース事業で利益を積み上げ、その利益と出資金をあわせて投資に使おうとしています。

そこをプラットフォーム事業にまわして、プラットフォームが立ち上がっていくと新しい収益になる。

加藤:主催者さんは資金がないので、プラットフォームの基本的な部分は無料で使えるようにしたいなと。そうすると、日本中の主催者さんが集まってきますよね。

そこに魅力を感じた企業、例えば交通機関や飲食店、ホテル、あとは飲料業界や日用品業界など。そういった企業とスポンサー契約をして、回していく予定です。

‐サービスのローンチが楽しみです。

山本:はい、ぜひ楽しみにしていてください!

 

悲しいことや辛いことがあっても、この国の人々は前を向いて乗り越えてきました。そのパワーのもとになっていたのは、お祭りが持つ不思議な魅力だったのかもしれません。お祭りがもっと身近になれば、日本から世界へ大きなイノベーションを起こすことも夢ではなさそうです。

取材:鈴木賀子 編集:佐藤むか