藤田 郁
京都出身。IT企業、戦略PR会社を経て、2016年より70seeds編集部に所属。主なテーマは、地域、食、女性の生き方、ものづくり。"今"を生きる人たちのワクワクする取り組みを追っています。

ひと昔前、「何か面白いことや新しいことをはじめたい!」と思ったとき、必ずと言っていいほど立ちはだかるのが「お金」の問題でした。

 

ところが現在、そのハードルが急速に下がりつつあります。そのけん引役となっているのが、オンライン上の支援サービス「クラウドファンディング」。

 

実は、70seedsで取り上げた方々の中にも、クラウドファンディングで最初の資金集めをした、という方がこんなにいました。

 

東京の役割はカーストからのリセット―ヤンキーの人生をビジネスで変える

だから僕は京都を選んだ-出会いとカルチャーを編む”五感”体験型ホテル

日本酒に革新を生む20代チームー老舗酒造の最年少社長、伝統に挑む

藍染と包丁のハイブリッドを生み出した「好きなものを仕事にする」伝統工芸の魅力再編集

芸大時代の劣等感ー導いてくれたのはアートな日々の片隅にあった「パン」

 

クラウドファンディングは「ハートに火をつける」をコンセプトにした70seedsの読者にとっても、背中を後押ししてくれる存在となるはず!

 

そんな想いから、国内最大のプラットフォーム「CAMPFIRE」で地域活性型サービス「CAMPFIRE × LOCAL」を運営しているメンバー3人に話を聞きました。全国に地域の公式パートナーをつくり、地域プロジェクトの立ち上げ・運営のサポートをしています。

 

「お金」と関わる彼らだからこそ言える”お金ではない”地域との関わり方、全国を駆け巡るなかでのサバイバルな実体験エピソードなどなど…たくさん語っていただきました!

 

ローカルへの想いに溢れるインタビュー、前後編でお送りします!

 

(トップ写真:左から荒井洋平さん、菅本香菜さん、渡辺高史さん)


 

一人でも多くの人が挑戦できるような社会に

‐そもそも、CAMPIREがなぜ地域に注力するんでしょうか?

渡辺:「CAMPFIRE × LOCAL」は2016年3月に立ち上がったんですが、それまでは都市部にプロジェクトが集中しているという課題感があって。そうすると、馴染みがない地域の人からすると、クラウドファンディングって「インターネットで資金を集めるよくわからないもの」とか、東京のWeb会社というだけで怪しまれることもありました。

‐あるでしょうね…。

渡辺:でも、「資金を集めたいという声」は都市以外にもたくさんあるんです。だったら、「CAMPFIRE × LOCAL」を立ち上げて、地域に根付き事業をされている方々と一緒にその地域でプロジェクトを立ち上げ、一人でも多くの方が声を上げて挑戦できるような社会をつくっていきたいなと思っています。

‐代表・家入さんの想いもあるんですか?

渡辺:そうですね、家入が島根県・海士町に訪れ、”生き方”ありきで仕事をしている移住者にたくさん出逢ったことがきっかけです。彼らは‟海士町で生きること”を選択し、”結果的に”農業やアーティスト活動など、手に職をつけて仕事をしています。海士町は人口が少ない島でしたが、そんな若い移住者たちがブームの火付け役となり、今では面白い人たちが集まる地域のひとつとしてブランディングも出来ていますよね。これも、ひとりひとりがやりたいことを実現した連鎖で生まれています。

荒井:決して収入は多くないかもしれないけれど、夕方5時くらいには町の人が集まってお酒を飲み始め、遅くなる前に寝て、また翌日働く…そんな密なつながりがあるんですよ。家入は、その経験をもとによく「仕事から生き方を選ぶのではなく、生き方から仕事を選べ」と言っています。

‐いいライフスタイルですね(笑)。

菅本:東京を目指して頑張っている地方が多いなかで、海士町だからこそ得られるライフスタイルや風景に惹かれて人が移ってるんです。地方には、地元の方も気付いてないような、その地域ならではの魅力があるんですが、うまく発信できてなかったり、発信するきっかけがなかったりする。家入は、そこにクラウドファンディングを地方で活性化する意味があるんじゃないかと言っていましたね。

 

 

 

 

「どうせ無理だという大人になりたくない」

‐そんななか、みなさんはなぜこのチームに加わったんですか?

渡辺:昔からアンダーグラウンドのカルチャーとかインディーな音楽が好きだったんです。でも好きだったアーティストがある程度の年齢になって現実を考え始めたり、バンド活動を続けるためにバイトをしていた生活が逆転して、いつの間にか活動そのものが中途半端になっていたりする現状を見て、何か解決策はないだろうかと学生時代から考えていました。そこでクラウドファンディングの存在を知って「これだ!」と。元々アングラなものを探るために、ネット上やリアルでも発掘するのが好きで。まだ世の中に知られていないものを発掘し、広めていく過程はクラウドファンディングにも通じる部分があって興味を持ちました。

菅本:私は「CAMPFIRE × LOCAL」チームに入るために、2016年7月に入社しました。福岡出身で、大学も熊本だったので入社前はずっと九州で地方に関わる活動していました。そのとき、100人集めて風船で空を飛ぶという企画をやったんですよ。そうは言ったものの、お金がない…。企画の背景としては、「どうせ無理と言ってしまう大人になりたくない」「社会人になる前に子どもの頃の夢を一つ叶えてみよう」というのがあったので、その想いを地元の企業の方たちにお伝えしたら、お金や物資をいただけたりして…結果的に実現できたんです。

‐おぉ…!

菅本:それを、大学生のときに偶然会った家入に話をしたら、「それってクラウドファンディングだよね」と言われたのが印象強く残ってました。それで、「CAMPFIRE × LOCAL」を立ち上げたタイミングで熊本の震災が起こり、私は発生時熊本にいなかったので、今すぐ熊本に入りたくても入れないという状況があって…。今の自分に何ができるんだろうと考えていたときに、CAMPFIREで募金プロジェクトが立ち上がってすぐに支援ができた。何かできるきっかけを作ってくれたのが、すごく嬉しくて、ありがたくて…。家入に御礼を伝えたら、「CAMPFIRE × LOCAL」チームにおいでよと誘ってもらいました。

‐入るべくして入ったという感じですね。荒井さんはいかがですか?

荒井:僕は2016年の4月入社で、はじめは掲載や問い合わせ対応など、営業側の責任者をやっていました。当時も日本全国いろいろな地域から質問が来てたんですよ。どうやって掲載したらいいのか、リターンをどうすればいいのかわからないとか。なかなか案件単位で地方に行くのも難しいので、電話でどうですか?って聞くんですが、地域の方って対面でのサポートを望まれることが多くて。そこにずっともどかしさを感じていたので、家入が「CAMPFIRE × LOCAL」をもっと加速させていくという話を聞いて、メンバーに入りました。

 

 

おじいちゃんおばあちゃんがクラファン!?

‐「CAMPFIRE × LOCAL」ができて1年ちょっとですが、各地で活動していて、クラウドファンディングが地方にも浸透してきている感覚はありますか?

荒井:渡辺の話にもあったように、地方では、まだまだクラウドファンディングというのが、東京の怪しい会社がやっているみたいに誤解されていることが多いんですよ。でも、実際にセミナーを開きお話ししてみると否定されることはないですね。行政や市役所からセミナーをやって欲しいというお声も増えてきましたし、案件としても、クラウドファンディングを活用してもう一歩踏み込んだ何かをやってみたい、という話も最近は多くなってきていると感じます。

菅本:自分の地域でプロジェクトが立ち上がると、「身近な人がやっている」という事例が増えて、それがPRになっていたりもしますね。セミナーにも、おじいちゃんおばあちゃんが来てくれてたり。あとは、名刺を渡したら「あのCAMPFIREの!」って言ってもらえる機会が地方でも増えたのは嬉しいですね。

荒井:でも、この間地元のおじさんと名刺交換したら、「冬は暇だろう」って言われて…。”キャンプファイヤー”やっている会社だと思われたよ (笑)。

全員:笑!

 

‐ほっこりする話ですね(笑)。でも、普段とは違う層が来るのは嬉しいことですね。

渡辺:岐阜県の山奥にある町では、駅前にぽつんとある昭和の雰囲気漂う個人商店のレジ横にクラウドファンディングの宣伝用のチラシが貼ってあったりするんです。そこで行ったセミナーでもおじいちゃんおばあちゃん多かったし、反響も大きかったですよ。

荒井:タンスに眠っている着物を直して何かしたいっていうおばあちゃんもいたね。もう着ないし、子どもや孫にも着てもらえないし…ただ、すごくいいものだから、それを直して何か商品をつくりたい、みたいな。

‐意外ですよね。

菅本:おばあちゃんたちも色んなことをずっと考えて溜め込んでいらしたのかもしれません。ひとつきっかけが見つかると、またそれに対してあれもこれもできそう、とおっしゃるんです。懇親会で30分くらいずっと1人のおじいちゃんと喋ってたり。そんなにやるの?また次出てきた(笑)、みたいなことがあるくらいやりたいことがたくさんあるというのは感じます。

 

 

地方創生ブームが終わったとしても…

‐現在も、東京を中心に”地方創生”って言葉が使われてますけど、その話を聞くと東京メインで言ってるのもおこがましいような…。

渡辺:私たちもそう思っていますね。

菅本:ちょっと怖いなって思うのが、地方創生が一過性のブームになってしまうこと。ブームって結局去っちゃうし、わーわー言っていた人が突然、地方創生終わりだよね、次はこれだよねって去っていくみたいなことがなければいいなと。でも、例えそうなったとしても、地域の人たちが自分たちで声を上げられるということや手段をわかっていれば、これからは自分たちで発信して地域を盛り上げていくんだってなると思うので、そのきっかけになれば嬉しいですね。

‐そう考えると、地方の方にクラウドファンディングを正しく理解してもらうことってすごく重要だと思いました。

荒井:そもそもクラウドファンディング自体、都市部だから特別に集まりやすいというわけでもないので。もちろん逆も然りで集まらないケースもあるんですけど、そういう偏りがないので、地域の方にももっともっと積極的に使って欲しいですね。

後編では、その想いを胸に全国各地に足を運ぶメンバーによるディープなローカル体験、そして今後の展望が語られます。

取材:鈴木賀子

編集:藤田郁


【取材コメント】

挑戦したいことがある、実現したい夢がある…そのような人がいるのは、東京も地方も同じ。想いの強さにも地域差はないはずです。むしろ、地方に住んでいるからと夢を諦めている人も多いかもしれません。そう思うと、拠点に依存しないクラウドファンディングを一つの手段として知っているだけで、地域の人には大きなステップとなりそうですね。

 

最後に、現在も絶賛支援募集中の一押しプロジェクトを各メンバーより紹介してもらいました!是非チェックしてみてください。(※現在は終了しています)

 

【荒井さん】

宮城県多賀城市「さくら米粥を全国に広めたい!!」

コメント:講師をつとめた仙台でのセミナーをきっかけに生まれたプロジェクト。このページはセミナーに参加した人達協力の元で完成し、その出来栄えの良さからクラウドファンディングを同じ年代の人達にも勧めたいとの声も。地域内でこのような連鎖が生まれるのはとても素敵だなぁと思います。

 

【菅本さん】

新潟県佐渡島「17人の限界集落虫崎で100人盆踊り!」

コメント:住人の人数で“限界集落“と言われてしまう地域は多くありますが、数字だけでは見えない地域の個性や魅力があります。その魅力に触れてもらいファンが増えることで、どんな化学反応が起きるのか注目!リターンでは、そんな集落のみなさんと宴を楽しみ民家に宿泊できる権利も盛り込まれています。

 

【渡辺さん】

北海道・上富良野「地ホップ100%の超希少クラフトビールをつくる!」

コメント:地元の人が、地元の素材を使って、地元でブルワリーを作り地ホップ100%のクラフトビールを作るというコンセプトが素敵。舞台となる「上富良野(かみふらの)町」は道内で唯一、ホップが栽培されている町なのだそう。募集開始から18時間で目標金額の650万円を達成したのも驚きました。