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日本初のVRメディア「PANORA」開始の背景ー運営の広田氏が語るVRへの思い

2016年は「VR元年」と呼ばれ、VR業界は大変な盛り上がりを見せた。

 

VR元年とは、その名の通り「VR時代」の幕開け。VRが世間に普及するための準備が整い、世間的にもVRと関連したニュースが多く流れた年となった。

 

背景にあるのは「ヘッドマウントディスプレイ」と呼ばれるゴーグル型デバイスの低価格化、そしてテクノロジーに精通していない、ハードウェアを持たない人でも楽しむことが出来る「ロケーションVR」と呼ばれるアミューズメント施設の登場など。

 

2016年の1年で、VRは「ギークのもの」ではなく、一般の人々が楽しめるものとなったのだ。

 

そんな「VR時代」の波を見据えて、2014年11月「日本にバーチャルリアリティー(VR)を広める」を目的とした日本初のVRメディア「PANORA」を立ち上げたのが、パノラプロ代表の広田 稔 氏だ。

 

大手出版社に入社後はフリーライターとして活動していた広田氏が「PANORA」を始めた理由とは。VRにかける思いと、メディア人としての志を聞いた。

 


 

 

VRは絶対に来る。開発者を通じて見たVRの可能性

 

 

ーVRメディアの「PANORA」について教えていただけますか。

 

2014年11月に始めたメディアで、VRの情報を消費者向けに発信していくニュースメディアです。ライターとして活動していく中で、自分でもメディアを立ち上げたいという思いが募り、2014年11月にスタートしました。

 

VR関連のニュースから、VR製品のレビュー、VRイベントレポートなどを発信。会社としては、VRメディアのPANORA以外にも、360度動画の撮影やVRイベントの開催なども手がけています。

 

ーPANORAを始めようと思ったきっかけは何でしょうか。

 

当時、VRの周りに面白い人たちが集まっていて、自分もライターとして取材や寄稿もしていたんですが、それならVR情報をまとめて発信したいと思ったことがきっかけです。

 

もともと出版社時代にも、テクノロジー系の取材をしてきました。中でも技術を扱う人を取材したりすることに魅力を感じていたんです。

 

具体的には、iPhoneの初期の取材や、初音ミクやニコニコが盛り上がってきた頃にはクリエイターの取材などをしていたのですが、技術が生まれたばかりの初期の時代に、新しい技術を絡めて何かを作ることで、新しい分野が広がっていく姿を見るのが好きだったんです。

 

その流れでVR関係の連載を始めることに。そこで出会ったVR関係者たちは、魅力的な人たちがとても多くいました。

 

ーどんな方たちがいたのですか?

 

技術系って、その技術を扱う人たちが集まって「界隈」ができるのですが、VRも「VR界隈」が出来ていました。その中で内輪ネタとして消費して終わりではなく、開発者たちが手作りで何かを開発して、その上で外界に発信するところまで行っている。

 

VRの開発者たちがVRを盛り上げるために色々と試行錯誤しているんです。熱量の高さにまず惹かれましたね。

 

その中でも多くのキーパーソンと出会ったことで、僕はPANORAを作る決意をしました。

 

ーキーパーソンですか。

 

有名な方でいうと、GOROmanさん。僕がアスキー時代にVRの連載を始める第一回で連絡をした方なんですが、色々とぶっ飛んでいる方でした(笑) Oculus Riftのヘッドマウントディスプレイを被らせてくれたり、もちろんVRの技術についても色々と聞きました。技術も、人も面白いなーと思いましたね。

 

そこから徐々に桜花一門さんとか、様々なキーパーソンが出てきて、VRを盛り上げようという動きが強くなりました。

 

ーVR界隈の盛り上がりを現場で感じたんですね。

 

その後、GOROmanさんと、ハシラスの代表をしている安藤さん、当時は藤山さんと呼ばれていた2人が行なった「オキュ旅」というプロジェクトに着いて行ったことも大きな理由になっています。

 

オキュ旅というのは、沖縄の宮古島の360度映像を撮影して、オキュラスをつけると沖縄に行かなくても沖縄に行ったような旅体験ができるというプロジェクト。

 

そこで撮影や発信のプロセスを見ていたときに、VRはエンタメ利用も産業利用も両方いける。それに、「IT」や「インターネット」のような広義で重要なものになると確信しました。

 

だからこれは、僕も一緒にVRを応援したいし、その流れは必ずくるものだから、情報をまとめて発信できる媒体があればいいという思いで、PANORAをスタートさせたんです。

 

 

作ることが好きで、作り手の話も好き。

 

ーもともと「クリエイター」に関心があって、その上でVRを見出したんですね。「自ら発信すること」にこだわる理由はありますか?

 

そうですね。ライターというか、メディア人として生きてきているのでそこまで強く意識したことはありませんが、大学時代は僕自身が作り手だったんです。DTPオタクで。

 

ーDTPオタクですか。

 

そうなんです。バイトで稼いだお金を機材費に当てて、学内のフリーペーパーを発行していました。そこでも取材とか、インタビューをしていましたね。

 

当時はコンピューターで何かソフトを使うと本格的なものづくりができる。プロみたいな仕上がりになる!っていうことに喜びを感じていて、色々とお金を投資しては試していました。コンピューターで何かをつくるっていうことに僕自身喜びを感じていたし、いまでもそういうことが好きなので、取材をするクリエイターさんたちのこともよくわかるんです。

 

ーもともと広田さんも「作り手」だったんですね。

 

単純に作ることが好きで、つくることが好きな人が、つくることを語っているのがすごく面白くて。技術が変わってもつくる人たちの思いは変わらないなというのがあって、そういうのを伝えていきたいなと思っています。

 

それに、自分たちでも何かを作りたいというのがあって。会社名がPANORA PROで、プロダクションのプロっていう意味なんです。自らも作りつつ、作り手のことを世の中に知らせていきたいなと。

 

 

VRを身近に、体験できる場を提供する

 

 

ーVR元年の以前以後で、何か業界やメディア自体に変化はありましたか?

 

これまではVRの情報自体が少なくて、ニュースも多くはありませんでした。ですが、2016年の1年間でVR関連の事業を開始する企業は増えて、送られてくるニュースリリースは急に増加しました。

 

VR関連の言葉での検索自体も増えているようで、これまで関心のなかった人たちにまでVRの情報が届いているんだなという実感があります。

 

ただ、ニュースが増えて、他社もVRの記事を書き始めると、僕たちは何か「違う記事」を書かなくては、と思いつつあります。

 

ー違う記事というのは。

 

それこそVRがあまり知られていない時期であれば、ニュースを発信するだけでも喜んでもらえました。ですが、大手メディアもVRのニュースを配信し始めたら、今度は縦に深堀りした、深い情報を届けて行かないといけないと思っています。

 

1つの軸は、製品のレビュー記事やイベント記事の配信です。現在も発信はしているのですが、まだまだニュース記事の割合が高い。ニュース記事を制作する体制はうまく作れたので、今後は消費者が「VR製品を買おう」と思った時に参考にできる情報を発信していきたいと思っています。

 

また、2つ目の軸も製品の魅力を伝えたいという思いの延長にあるのですが、リアルでVRを体験できるイベントの提供も行なっていきたいと思っています。

 

ーWebメディアだけど、リアルなイベントも開催すると。

 

そうです。VRって技術的にも、コンテンツ的にも魅力的なものが多い一方で、1つ弱点があるんです。それは「見ている人に魅力が伝わらない」ことなんです。

 

ーというのは?

 

見ているだけではなくて、実際に体験して何かを見たり感じたりしないと、VRコンテンツを楽しむのは難しいんです。例えば、VRのジェットコースターの映像や、360度動画を見たことがありませんか? それも、ただの映像で見るのと、ゴーグル型のデバイスを装着して見るのでは臨場感が格段に違います。もはや別物の域ですね。

 

だから、PANORAでは、一般ユーザーが気軽にVRコンテンツを利用できる場を、イベントとして提供していきたいと思っているんです。

 

ー最近、アミューズメントでのVR体験も多いですが、あれとは違いますか?

 

アミューズメント施設でのVR体験も魅力的なものではありますが、あれは「ロケーションVR」という、その場に設置されて、その場でしか楽しめないコンテンツとして作り込まれたものです。

 

VRってもっと普段の生活や、生活の中の娯楽として消費できるコンテンツが多い。例えばPlayStation VRやHTC Viveなどは、日常でも非常に高レベルのVR体験ができるコンテンツを配信しています。その魅力を知ってもらう場を提供したいんですよね。

 

ー消費者がもっと日常でVRを消費できるように、オンライン・オフライン問わず情報発信を行なっていくんですね。

 

 

「媒介者」としてのPANORAは、VRを日本に浸透させる

 

 

ーVRコンテンツを一般層に広めていく、というお話でしたが、やはりVRの見せ所は「ゲーム」ですか?

 

もちろんゲームは強いですが、僕が注目しているのは「コミュニケーション手段としてのVR」ですね。

 

ーコミュニケーションですか。

 

はい。VRは将来的には今のコミュニケーションをもっと代替していくと思っています。手紙が電話に、電話がメール、メールがLINEに代替されてきましたよね。その中でテレビ電話やSkypeのような、音声通話に映像がついた体験は世間的に普及したコミュニケーション手段だと思います。

 

そこにVRでの立体的な通話体験が加わると、目の前で話しているような体験ができるようになるんです。

 

ー相手が目の前にいるようなテレビ通話ですね。

 

はい。Oculus Touchが提供する「Toybox」という体験デモがあります。このデモは、おもちゃ箱に2人で入って、ものを投げ合うという他愛もない体験ができるデモなんですが、バーチャルの空間で他の人と物を投げ合う体験って思った以上に楽しいんです。

 

まるで目の前に相手がいるように、ものを投げ合って、非言語コミュニケーションができる。Skypeは便利ですが、空気感や非言語コミュニケーションはできませんよね。そこがVRのコミュニケーションの可能性だと思っています。

 

ーたしかに、直接話すことはまだ代替できないと思っていますが、VRならそれが可能なんですね。

 

そうです。日本でも「cluster.」というVRでイベント開催ができるサービスが開始されていますが、PANORAでも、これまでリアルで行なっていたVR関係者向けのイベントを、このサービス上で実施するという取り組みを開始しています。

 

イベントの会場に行った時の雑談、拍手とか、みんなが一斉に登壇者の方を向く体験とか、臨場感を味わえるのが、ただの映像配信とも違って楽しいんです。

 

ー空気感が味わえるんですね。

 

そうです。なので、僕としてはそのあたりに注目して、まずはVR関係者向けにVRイベントを提供しつつ、消費者向けにも、VRを体験できるイベントの開催や、製品レビューやイベントレポートの発信を行いたいなと思っています。

 

ーありがとうございます。最後に、今後の目標は。

 

VR元年を超えて、VRの検索も純増しています。VRのニーズが徐々に増えていることや、一般の消費者に認知されてきていることも感じています。僕たちは専門メディアだからこそできる情報や体験を提供していきたいし、そのためにリアルでもWebでも、VR情報の提供を行なっていきたいと思っています。

 


 

【編集後記】

日本初のVRメディアを立ち上げた広田氏。1時間の予定が2時間にも延長されて行なったインタビューでは、VRに対する情熱、そしてメディア人としての情熱を感じることができました。

 

何より、広田氏が大学時代から現在に至るまで持っている「クリエイター魂」、そしてクリエイターへのリスペクトを感じるインタビューに感化され、僕も取材終わりにヘッドマウントディスプレイを調べまくり、今後買う予定です(何を買うかは、PANORAを見て決めます)。

 

 

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大沢 俊介

1994年2月生まれ。フリーランスのライター。「働き方」を中心に執筆中。現在はライターとして活動しつつ、Web制作、PR支援や雑司が谷でカフェ・バーの共同経営、ゲストハウスの運営なども行なう。