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【第2回】お笑いで目指すのは「動くメディア」! たかまつななさんに聞く「お笑いジャーナリスト」という生き方

「フェリス女学院出身」の煽りで颯爽とデビュー、2013年に日本テレビのお笑いコンテスト番組「U-20お笑い日本一決定戦 ワラチャン!」グランプリを獲得した、「お嬢様芸人」たかまつななさん。自ら名乗る「お笑いジャーナリスト」は、芸能界でも異色の肩書き。その肩書きが生まれた背景から生い立ち、「お不良」時代が明かされた第1回エピソードにつづく70seeds編集部の突撃インタビュー第2回。

 

 

17連敗でもあきらめなかった高校時代

 

 

okayama(以下、岡): フェリス在学中の頃から、お笑い芸人を目指して活動していたんですか?

 

たかまつ: そうですね。中学2年生の時に、お笑い芸人を目指すきっかけとなった「憲法9条を世界遺産に」を読んだ後、中学3年生が初舞台です。新宿区と吉本興業さん主催の「ちびっこ漫才グランプリ」に出場させていただいたのがはじめてで、決勝まで残れました。

 

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岡: その後も、お笑い芸人を目指して。

 

た: 学内でお笑い4人組のカルテットを組んで、活動はしていました。「ハイスクール漫才」という吉本興行さんの大会には17回出て、17連敗しました。

 

岡: すごい。それでよくあきらめなかったですね。

 

た: ほんとですよね。(笑)あきらめたほうがいいですよね。(笑)

高校3年生は受験をしなければならないので、高校2年生でお笑いをあきらめると思っていたのですが、17連敗してもあきらめきれなくて、AO入試一本にしようと思いました。

 

大: 部活動がお笑い部?

 

た: いえ、ハイキングクラブに入って、ずっと登山をしていましたね。

 

岡: あ、山のことも考えながら、お笑いをやっていたのですね。

 

た: そうですね。(笑)あとは読売新聞の子ども記者を、かなり真面目にやっていました。

 

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岡: すごいですね。山に始まり、山を続け、お笑いに出会い、お笑いを続け。

 

た: いえいえ、でもみなさんも趣味とかいっぱいあるんじゃないですか。

 

岡: それでもこれをやろうと思って、それを仕事として今実現していることは、すごいことだと思います。

 

た: いやいや、全然まだまだ駆け出しの芸人なので。あと5年後、10年後を見てみないと、正解だったかは誰にもわからないですからね。

 

大: そういえば、私たちには高校3年生で高校生平和大使※1の活動をした共通点がありましたね。

 

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た: そうなんですよね!こうしてお仕事を通じて出逢うことができて、嬉しいです。

 

 

「社会派ネタ」の失敗が「お嬢様ネタ」を生んだ。

 

 

岡: 「お笑い」で伝えたいことを伝えようというのは、実はとてもハードルが高いことなんじゃないかな、と思います。

 

た: ハードル、高いですね。

 

岡: 社会派のネタを笑いに変えるバランスは、非常に難しいと思うんですが、そういうネタを最初に挑戦されたのはいつですか。

 

た: 高校3年生のときに3.11(6ページの震災記事は高2記者と表記)があって、お笑いが自主規制のムードになった時期があったんです。お笑いイベントも、中止が続いていました。ようやく出られたライブで原発のネタをやったら、初めてお客さんにヒかれる、という経験をして…。終わった後は、主催者の人から「何を考えているんだ。不謹慎だ。」と怒鳴り込まれました。

 

誰でも出られるライブだったけれども、私だけ今度からネタの事前チェックがあるようになってしまって。そういうこともあったりして、なかなか最初はできませんでした。いろんな人に相談して、先輩方にアドバイスをいただきました。そうすることで、笑いがとれるという基礎が身に付いたら、応用ができるんじゃないかと思って、まずは自分の名刺となるネタを作るために「お嬢様ネタ」をやり始めました。

 

でも、なかなか社会派ネタをやるのは今でも難しいです。単独ライブでやったりしますが、やると不謹慎だとか、すっごい言われます。年齢的なものもあるので。同じネタを今の私がやるのと、40歳になった私がやるのとでは違いますよね。そういうバランスも考えながら、やっていかないと。

 

大: 一番伝えたいテーマは、やはり環境問題ですか?

 

た: そんなことはないですね。興味のない人に興味を持ってもらって、行動してもらう、というのが描いている夢なので。この問題だけ解決する、というのが目標だったら、学者さんでもいいですし、私じゃなくてもいい。「お笑いを通して社会課題を身近にする」となると、幅広い分野に対応できないといけないので、見聞を広めようと思いまして、大学に入りました。

 

岡: 大学は、どうですか。

 

た: かなり真面目に、週5日通っています。教職もとっているので、いろんなキャンパスに行っています。

 

岡: 大学で友達に接する時は、芸人であることが求められますか?(笑)

 

た: たまにありますけれど(笑)でも、勉強になることの方が多いですね。

やっぱり、若い人がムーブメントをつくるので、先生に頼んでライブ前に授業でネタをやらせてもらったりとか。「明日オーディションなので、よかったら見てください。」と、キャンパス路上ライブをやったりもします。大学の研究発表会では、2年連続個人ブースでネタのデモンストレーションをして、お客さんにその場でダメ出しをいただいたりとか。こういうネタの作り方をしている人は、あまりいないかもしれませんね(笑)

そういうことができるのも、慶應大学は単独ライブの際に、研究助成金としてお金を支給してくださったり、研究発表会でネタを披露して最優秀賞を受賞させていただいたりと、芸人であることを認めてくださっているからです。

 

 

お笑い芸人と教師に共通する「伝える技術」

 

 

岡: 教職を取ろうと思った理由は?

 

た: お笑い芸人って、例えば地方へ営業で行くと、アドリブでやっているように見えるかもしれませんが、与えられた15分という時間なら、その15分を同じクオリティで持って行く、というのが仕事になるわけです。テレビとかラジオだと違ったりしますが。しゃべったりとか、面白くするプロフェッショナルではあるかもしれないけれど、「情報を伝えるプロ」になるのは難しいと思いました。

 

岡: う〜ん!なるほど。

 

た: もちろん、そういうことが出来る方がテレビで生き残っていらっしゃると思うんですけれども、そういう練習が、意外とライブではできないんですよ。

ライブだと、持ち時間3分。その3分のクオリティを上げる、という努力の仕方になるので。そこは、練習の場としては向いてないな、と思いまして。それで、もともと教師というのそういう意味では一番近いんじゃないかな、と思っていました。子どもにわかりやすく伝えなくちゃいけないじゃないですか。中学生や高校生に伝わる、ということは、おそらくテレビだとその世代の人には伝わりますし、分かりやすいなら、全世代の方に伝わると思いまして。現代社会や公民とかは、まさに今起こっている事と絡めて話すとわかりやすかったりするので。そういう理由で、教職を取り始めました。

 

岡: ずっと、首尾一貫していますね…!

 

大: いつか、先生という職業に就かれることも考えていますか?

 

た: そうですね、本当は、週何回か自分のコマ(授業)を持たせてもらいたいと考えていますが、なかなか芸人やりながら、非常勤講師をさせてくれるところはなさそうですよね。あの、募集していますと書いておいてください(笑)

 

 

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大: わかりました!!

 !!たかまつななさんを社会科の非常勤講師としてお招きしたい教育現場の方、ご連絡お待ちしております!!

た: 本気です。

 

岡: 先生こそ、そういう「伝える技術」って磨いていくべきなんでしょうね。

 

た: そうですね。先生も、そういう部分で苦労されていると聞いたりもしました。

 

岡: 「伝える」ということに非常にこだわってますよね。社会の事を考える自分と、お笑い芸人である自分とのギャップって、感じる事はありますか?

 

た: 感じますね。まず、それを出さない方がいい。とお笑い芸人の先輩はほとんど言いますよね。実際そういうことに深く関心をお持ちの人とかも、楽屋とかでは話すのに、外ではケロっとしてたりとか。

 

岡: なるほどなるほど。

 

 

目指すのは「動くメディア」

 

 

岡: 笑いの場では、社会的なことを出さない。というのがプロの一つの姿、のような気もするんですよ。とはいえ、そこに伝えたいものがあって、やっている人も、それはそれでプロの姿だと思っていて。どういうプロを目指しているのか、というのをお聞きしたいと思っていました。

 

た: そうですね。私は、自分自身が「動くメディア」になりたい。と思っています。例えば、野口健さんというアルピニストで有名な方が清掃をします。そうすることで、え、そういう問題があったの?って注目されるじゃないですか。今だと、健さんは遺骨収集とかをされて、それが注目されたりとか。ルー大柴さんもそうですよね。有名な人が現場に行って、こういう問題がある、ということを認知させることはできると思うので、私自身芸人として、もっと活躍できるようにがんばって、「たかまつななが来た、じゃあその問題何だろう。」と、あまり注目されにくい社会課題とかに、目を向けてもらえるような。より困っている人の力になれるような芸人になりたいですね。

 

岡: 福山雅治さんが被爆二世だと言った時のインパクトも、そうですよね。そういう存在は、やはり強いと思いますね。

 

た: そのためには、より有名にならないといけないので。

 

大: 今、何パーセントくらい、理想のお笑い芸人になれていますか?

 

た: まだ、1%くらいです。それは、仕事だけでなく勉強面とかすべてにおいてです。特に、「お笑いを通して社会問題を」という夢は、まだまだ実現できていないですね。なので、今政治塾に通い始めたりしています。政策とかちゃんとわかってないと何も言えないので。平日の夜とか、土曜日とかに参加しています。起業したりNPOを立ち上げたりした、いろんな人がいて面白いです。

 

Youtubeで政治家の方と対談して、そこでもっと社会課題に興味持ってもらえるようなこともはじめました。「一年後にNPOをつくれたらいいな」と思って、今活動しています。現場の声が、ちゃんと届けられるような番組を作りたいです。

 

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お笑いが一番好き

 

 

岡: なんか、ちょっとカジュアルな話もしようかな、と思うのですけれども。

お笑い芸人であるたかまつななさんと、フェリス女学院のたかまつななさんと、子ども記者であるたかまつななさん。どれが一番モテました?

 

た: あははは!う〜ん、あの、どれもモテてますね!

 

大: じゃあ、いろんなたかまつななさんがいる中で、どの自分が一番好きですか?

 

た: どれも好きですけれど、やっぱりお笑いが一番楽しいですかね。どれも楽しいけれど、楽しさではトップですね。舞台に立って、お客さんの笑いを感じる時が、一番楽しい。

 

例えば、読売新聞のこども記者として記事を書く場合は、読売新聞の一記者「たかまつなな」になるわけじゃないですか。今、サンミュージック所属ですが「たかまつなな」として自分の責任で言葉を発しているので、反響も全部自分のところに届きます。それはやっぱり嬉しいですよ。

地方とかに行くと、「ず〜っとお会いしたかったんです!」という方にお会いできたり、ファンレターいただいたり。ワラチャンで、最初「お嬢様の言い返し」というネタをやらせていただいたんですけれども、「庶民の方にこういわれて、私はこう言い返しました。」というネタをやった後に、「私はいじめられているのですが、明日からはこの言い返しを使って学校に行こうと思います。」というお声をいただいて。私は、そういうつもりで投げかけたつもりではなかったんですけれども、そういうお声は嬉しいですよね。

 

大: 直接、人前に出ない「新聞記者」という伝え方と、人前で自らをさらけ出す「お笑い芸人」という伝え方、どちらが好きですか。

 

た: 向いている、というのは記者だと思いますね。

やっぱり、私お笑い向いてないと思っていますから。(笑)

【第3回】につづく

 

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インタビュー:okayama・okawa(70seeds編集部)

写真:okawa

※1毎年公募で選出される「高校生平和大使」は、1998年から国連を訪問。核兵器廃絶と平和な世界の実現を求める「高校生一万人署名」を届ける。活動はすべて市民の募金で行われている。