大川 史織
1988年、神奈川県生まれ。 大学卒業後マーシャル諸島で3年間働いて帰国。夢はマーシャル人も驚く大家族の肝っ玉母ちゃんになること。

「フェリス女学院出身」の煽りで颯爽とデビュー、2013年に日本テレビのお笑いコンテスト番組「U-20お笑い日本一決定戦ワラチャン!」グランプリを獲得した、「お嬢様芸人」たかまつななさん。

自ら名乗る「お笑いジャーナリスト」は、芸能界でも異色の肩書き。その肩書きが生まれた背景から生い立ち、「お不良」時代が明かされた第1回。第2回では、「動くメディアになりたい」という夢に向かって邁進する一方、「お笑いに向いていない」発言が飛び出した。最終回では、どんな結末を迎えるか…突撃インタビュー最終回。

 

努力した人で運を取り合う世界

okawa(以下、大): ご自分でそう(お笑いは向いていない)思いますか?!

たかまつ: 思いますね。努力をしても、結果が他のものより出ない。お笑いは、相当死ぬ気でやっても、人と並べなかったりするんですよね。

例えば、作文コンテストとかだと、2、3時間で書いて、1000人の中で最優秀を受賞できたりとか。

でも、お笑いはワラチャン※1も、同じ1000人くらいを相手にするとしても、1年で200回くらいライブで披露するために考えたネタを、やったりするので。

同世代と戦うという概念だったら、両者はたぶん比べられるんですけれども。

全然努力の仕方が違うし、しても追いつかない。だからこそ、がんばれる、というのもあるかもしれないです。

okayama(以下、岡): 中学受験の時から、苦手なことをガッとがんばってやって、成し遂げて来たわけじゃないですか。それでもやっぱり、お笑いは別格ですか。壁の高さというか。

た: そうですね。というのも、たとえば有名なコンテストだと、4000組くらい参加者がいては決勝に行かないと意味がないんですよ。4000分の4位とかでも意味がない場合もある。

一方、受験だと100人とか受かったりする。特に芸歴20年の方々と戦わないといけないというのは、なかなかしんどいですね。

岡: う〜ん、確かに。

大: 人前に出る、ということにはあまり抵抗ないですか?

た: ありますよ。本当に人見知りでしたし、今でも人見知りなので。

でも、芸人さんは人見知りが多いですね。楽屋とかでどうしていいかわからないですし(笑)はじめてお会いするスタッフさんと、なかなか打ち解けられなかったりとか、ロケ車が静かだったりとか(笑)

全員: ははははは。

た: でも、恥ずかしいとおびえてしまうより、ありのままをさらけ出している人の方が意外と売れていたりもするんですよね、周りをみていると。

そこが難しいですよね。面白くても売れていない人も、いっぱいいますしね。

大: お笑いって聞いてくれる相手によって反応が違うので、ずっと前から活動していたのに、あるとき突然ブレイクしたりする、という事が多々ありますよね。そういう意味で、お笑いを時流の中で、分析されたりもしていますか。

た: そうですね。芸歴としては、今デビュー2年目ですけれど、ライブ歴では年数がもう少し経っています。

大:「おもしろい」と観客が笑う感覚を、敏感にキャッチしつつも、先読みする力を磨くことが大切なのでしょうか。

た: いや、もう運ですよ。有名な大会だって、優勝して売れる年もあれば、私が出場した時はあまり視聴率がよくなかったりとか、今年は開催されない大会があったりとか。

やっぱりそれも、運だったりするじゃないですか。同じ番組でもどのタイミングで出るかとか。

大: 運に任せつつも、努力をし続ける、ということですね。

た: そうですね。やっぱり、努力しないと運もついてこないと思うので。

努力している人がいっぱいいる中で、運を取り合っている感じがするので。

努力していないところには、運は舞い込まない。と私は思っていますけれどね。

全員: う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

岡: たかまつななさんは、それこそ、17連敗から始まり、今までずっと続けて来たからこそ、今、運をつかんだというか。

た: いや、全然つかんでないですよ!つかみきれてないです。まだまだ、これからなので、これからつかみ取ります!

大: 一度くらいは、もうやめよう。って思った事はないですか?

た: ありましたよ!毎回、落ちた時は家に帰って泣いていましたもん。

それはでも、今も全然変わらないですね。収録やロケでうまくいかなかったときは、一人しくしく泣いていることもございます。

 

お笑いをあきらめない理由

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岡: 「続ける」ことの大切さを、すごく感じますね。でも、社会の問題って、そう簡単には変わらないじゃないですか。

それこそ、環境の問題だったら、100年くらい取り組まれているテーマがあったりとか。それでも、変わると思いますか。

た: 変わると思っているので、続けてはいますが、なかなか難しいとは思いますね。

それは、1、2年後に実現したいテーマではないので、自分の実力がついてからいくらでもシフトのチェンジはできると思っています。

そういう意味では首を長く、でも短気なので、「できない〜やめよう〜」とネガティブになってしまう時もありますけれど、そうではなく、がんばっていこうと思っていますね。

大: 私の場合は、好きな事をやっているときほど、家族や身近な人の理解や支えが力になっているので、たかまつさんのご両親がお笑い芸人を反対されていると知って、自分だったら反対されてもそこまでがんばれるか、と正直なところ思いました。

自分のやりたいことをご両親に反対されても、がんばれるその原動力はなんですか?

た: やっぱり単独ライブが大きいですね。私を見に、たとえば200人とかこないだもお客さんが来てくださったりとか。そういう経験ができると、がんばろうと思えます。

やっぱり嫌な意見の方が、いい意見より胸に残っちゃったりするんですよね。

Twitterとかでも面白いという意見が10件届いて、面白くないという意見が1件届いたとしたら、面白くないの方が残っちゃったりします。

でも、私を応援してくださる人がこんなにいるんだ、と。やっぱりお客さんの言葉から勇気をいただくことが多いですし、芸人さんって、本当にお笑いバカな人が多いんですよ。

じゃないと、月1万の収入で、バイトを深夜しながらとかお笑いを続けられないですよ。ほんとうにいい人がすごく多いんですよね、芸人さんには。

みなさん苦労されているから、優しい先輩も多いですし、テレビなんか出ると苦労された上で今のポジションを取られた方が多いので、みなさんものすごい優しい。

こんなにいい人たちと一緒に仕事ができたり、話題を作ったりすることができるのは、例えば今芸人を辞めて違う会社に行ったとして、これくらいの熱意があって、熱い思いがあって、夢を追いかけて、プロジェクトをする、ということはなかなかできないだろうな、と思うのです。

もう辞めようかな、とたまに思っても、ライブとかで先輩に会うと、もっとがんばろうって思います。「俺もそういうときあったよ。」とか言われると。

親は反対してますけれども、周りの方の支えが多いと力になりますね。親を恨んでいたときもありましたが、先輩芸人に「君はとても礼儀正しいし、すごく好感が持てる。

それは親に本当に感謝しなきゃいけないよ。親の教育がよかったから、礼儀よく優しい性格になったんだよ。」と言われると、確かにあ〜そうだな。と思ったり。気づかせてもらうことが本当に多いですね。

岡: 親御さんと対立してて、感謝に変わるタイミングって、仕事してからという人はやっぱり多いですね。

た: 親が勧めてやることって、あまりありがたみを感じないと思うんですね。

中学受験ができる人は世の中の何%か。と考えると、それ自体感謝しなければならないことなんですけれども、当時はもう、勉強をやらされている。という感覚しかなかったりして。

例えば、親がうちわを持って来て、一列目で応援していて、舞台で一回でも滑っていたら、「なんでこんな事やらせるんだ!」って親に言っていたと思いますし。

反対してくれていたからこそ、いつか認めてもらいたいという反骨心が逆に芽生えたりして。周りの人には、「優勝したからもう認めてもらえたでしょう。」と言われたりもしましたが、まだ認めてもらえていません。

もし認められていたら、そこで成長が止まっていたかもしれない。一番身近な人だからこそ、認めてもらいたいからこそ、がんばるというのはあると思うので、今は「反対してくれてありがとう。」と思いますね。

岡: 今、ふと思ったんですけれども、今のお嬢様ネタがあるのは、中学受験のおかげ。というのもありますよね。

た: あっそうですよね。在学中、学校の許可が必要だったりとか、大変だったりしたんですけれども。

ネタをやるにも、先生の検閲があったりして。「なんだこれは!?」と思っていたんですけれども、今はネタになっているので。

大: あ、じゃあ今はもう学校をあげて応援されている?

た: いえ、学校をあげて反対されている(笑)

全員: あはははは(笑)

岡: それも、ひとつのネタになっているのですね(笑)

た: そうですね(笑)

 

戦後70年「リアルボイスちゃんねる」誕生!

岡: では、最後に、今年は「戦後70年」ということで、たかまつさんが注目しているトピックがありましたら、教えてください。

た: 今、ちょうど「戦後70年」ということでやっているプロジェクトがありまして。

岡&大: おー!そうなんですか、すごい!

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た: この機会を逃したら、次の「戦後80年」では30歳の時に戦争体験した方が110歳じゃないですか。

今年は、リアルに体験した人の話を聞ける最後の年かもしれない、と考えておりまして、この機会を逃したらダメだ、とすごい思っているので。この間は、戦争を風化させないために防空壕を撮影しに行ったりしました。

今年、教育実習で沖縄の久米島高校へ行く事になったんですけれども、現地の様々な歴史を伝えることをYoutubeで配信したりできたらな、と考えています。

そういう意味で、「戦後70年」という節目をきっかけに、Youtubeでできる限りいろんな視点から情報を集め、撮影したり編集したり、取材交渉したりということを、今ちょうどやっています。

岡: チャンネルは、これから開設ですか。

た: 今持っているチャンネルで配信します。今年は「戦後70年」をテーマにやって、一年後はもっと多様なジャンルを扱えるように。

プラットフォームではないけれど、一年後にもやる、ということを目標に今やっています。

「リアルボイスちゃんねる」という名前で、生の声を届けるNPOを作りたいと考えていて、今はまだ私ひとりでやっていますけれども、ミュージシャンの方とかいろんなジャンルの方にご協力いただいて、届いていない現場の声を、まずはYoutubeで配信することを考えています。

いずれ、それを番組にしたりとかできたらな、と思っています。協力してくださる方、探しています!

岡: Youtubeチャンネルを活用する、いいですね。伝え方一つで全然印象が変わるのに、固まったやり方しかできていないことって結構多いなと。

た: 配信動画を5分以内にして、できれば教育教材として使ってもらえたらいいなあ。と思っています。

教職の授業をとって、模擬授業をやるときに、冒頭の先生の「つかみのネタ」を探すのって、至難の業で。歴史の授業とかで見る映像で1時間のものが60個あるとしたら、なかなか60時間は見れない。

そういう時に、検索ワードで調べたら、現場の様子がすごくわかるYoutubeの映像が出て来る。

5分でも短くあったら、全然違うな。と思うので、いずれそのような形で活用していただけたらと思います。それを教育実習中に、実際に再現しようと思っています。

「リアルボイスちゃんねる」で伝えたい思いがある人や、取材してほしいテーマ・人などありましたら、取材させていただきます!

※1 日本テレビが開局60年目に次世代のお笑いチャンピオンを決める一大コンテスト。2013年優勝。

 


 

インタビュー:okayama・okawa(70seeds編集部)

 

写真:okawa