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「映画」で見つめる東日本大震災の現在地-「3.11映画祭」仕掛人に聞く-

 

戦後最大規模の災害となった2011年3月11日の東日本大震災。あれから今年で5年を迎える今年、70seedsでは被災地の「次の一歩」に挑んでいるいくつかのアクションに焦点を当て、特集企画「311が迎える6年目」として伝えていきます。 第1回の今回取り上げるのは、ある「映画祭」の話。上映会にとどまらない、新たな社会のあり方を提示する取り組みにぜひ触れてみませんか?

 


 

 

えらべ未来 3.11映画祭」(以下、「3.11映画祭」)が、3月11日~3月14日の4日間「3331 Arts Chiyoda」(アーツ千代田3331)ほか全国で開催される。メイン会場の「3331 Arts Chiyoda」では、3.11から未来を問う16作品が一挙公開となる。震災直後から被災地に向き合い活動を続けてきた「わわプロジェクト(3.11映画祭主催)」統括ディレクターの中村政人さんに話を聞いた。

 

中村政人-1963年秋田県大館市生まれ。東京藝術大学絵画科准教授。「美術と社会」「美術と教育」との関わりをテーマに様々なアート・プロジェクトを進める社会派アーティスト。第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2001年)日本代表。「ヒミング」(富山県氷見市)、「ゼロダテ」(秋田県大館市)など、地域再生型のサスティナブルアートプロジェクトを多数展開。プロジェクトスペース「KANDADA」(2005~2009)を経て2010年6月よりアーティスト主導、民設民営のオルタナティブ・アートセンター「アーツ千代田3331」(東京都千代田区/秋葉原)を立ち上げる。

平成22年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を芸術振興部門にて受賞。2011年より震災復興支援プロジェクト「わわプロジェクト」を始動。さらに2012年からは東京・神田のコミュニティとの関わりの中でまちの創造力を高めていくプロジェクト「TRANS ARTS TOKYO」を開始。2015年10月にアーツ千代田 3331にて「中村政人個展『明るい絶望』」を開催。

 

 

中村さん

 

 

 

「これまでのネットワークが新しい機能をもつ」

 

 

‐「3.11映画祭」を主催している「わわプロジェクト」はどんな団体なのでしょうか?

 

東日本大震災後、3331 Arts Chiyodaの活動から生まれたソーシャル・クリエイティブ・プラットフォームです。事務局を務める一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドNは、1998年にアーティストイニシアチブとしてはじまり、以来、アート・プロジェクトを街にインストールし続けていく活動が「3331 Arts Chiyoda」(旧練成中学校を利用して誕生したアートスペース)の立ち上げに繋がっていきました。

 

‐3.11はどのタイミングで経験されたんですか?

 

「3331 Arts Chiyoda」がオープンしたのが2010年の夏だったので、その次の年の3月に東日本大震災が起こりました。3331 Arts Chiyodaは地域の防災拠点の役割も担っていて、あの時は地域住民の方や帰宅困難者の受け入れも行いました。そしてその後すぐに、館内に入居するアーティストやクリエイター、これまで多くの展覧会やプロジェクトを通じて培ったネットワークを支援活動のネットワークにシフトさせ、多くの復興支援プロジェクトが生まれていきました。そして生まれたのが「わわプロジェクト」です。

 

‐わわプロジェクトではこれまでにどういった活動をしてきたのですか?

 

3.11後は、たくさんのアーティストが現地へ飛び込んでいきましたが、はじまりはそういったアーティスト同士の活動をつなぐことでした。その後も、アーティストにかぎらず、さまざまなに復興へ向かう人々の取り組みを展覧会という形で国内外へ届けたり、仮設住宅に住む人や避難する人々に向けた新聞(わわ新聞)をつくったりと、いろいろな手段で「伝える」ことを主軸とした活動を行ってきました。

 

この5年のうちにもフェーズが変わり、その時の問題やニーズに応じたさまざまな取組みが生まれています。そういった活動そのものを伝える役割は、まだまだあると思います。

 

‐活動範囲が広範囲ですね。2014年にはじまった3.11映画祭は何がキッカケとなったのでしょう?

 

そうですね。記録技術の発達によって東日本大震災の映像や映画は観きれないたくさん生まれています。映画以外にも、写真・映像などはとくに、自身の切実な視点から現実を切りとり解釈して伝えていこうというものばかりです。さらに映画は、単なる娯楽としてだけではなく、人と人との対話や関係づくりのツールとしての可能性も秘めていると思います。3.11のことに限らず、今、世の中ではシリアスな話や本音を言い難くなっているように感じます。そこで、1年に一度だけでも、映画をツールにしていつもはぐらかしてしまう真剣な問題や、自分たちの未来についてリベラルに話せる場があればと思いました。

 

‐なるほど。「伝える」ことをきっかけに、対話する機会をつくるということですね。

 

はい。3.11映画祭では、これまでに70本以上の作品を上映してきましたが、それらの作品のほとんどは、監督の想いで作られている映画、興業的な仕組みに組み込まれていないものが多く、上映できる場所も少ないのが現状です。

 

 

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「少しでも開いた気持ちを誰かと共有する」

 

 

‐映画だからこそ伝えられることはなんでしょうか。

 

リアルさを繊細に伝えられる点ではないでしょうか。ひとりひとりの心のゆれは時間がたつと薄れてきてしまうものがありますが、映画はこういったものこそを時間が経過しても繊細に伝えることができるのではないでしょうか。
悲惨な状況や、厳しい状況というのは、誰しもが見続けられるわけではないですね。自分が心の底から何かに気付いたり、感情を揺さぶられたり、心がちょっとだけひらくような瞬間は、日常でなかなかないと思います。だからこそこの映画祭で、ほんの少しだけでもそんな瞬間があればと思っています。そして、そのひらいた心を、気持ちを、誰かと話してぜひ共有してほしいですね。

 

‐映画祭の反響はいかがですか?

 

1回目より2回目、2回目より3回目(今回)へと広がりは生まれています。会場も増えていますし、多くの方にご来場いただいています。被災地から距離があるほどやはり時間の経過とともに記憶の風化も進んでしまっているということも感じる一方で、震災から丸5年たった今だからこそ話せること、できることがまだまだあると実感します。

 

だからこそ、「3.11」は365日のなかで心のなかに留めざるをえない日として、意識を引き締めて行きたいですね。

 

‐被災地域からの反響もありますか?

 

そうですね。例えば前回は福島県いわき市と、宮城県石巻市でも開催しました。3.11映画祭のサテライト会場は、それぞれ自分たちが選ぶ作品を上映するのが特徴ですが、昨年のいわきでは「いわき未来会議」という震災後に生まれた任意団体が連携参加し、「あの日 福島は生きている」と「無知の知」を上映しました。石巻では、ここも震災後に生まれた団体ですが「石巻2.0」が「地球にやさしい生活」というドキュメンタリーを上映して、上映後に、対話やトークイベントの時間を設けて、地元ならではの議論を重ねていましたね。

 

‐どのようなことを議論するのでしょうか?

 

自分たちが日頃から持っている問題意識を、映画を通じて自分自身のことばで話すということです。映画が持つパワーは、映画を観た後に、リアルな議論を生み出せるところだと思います。映画のなかに様々な視点が存在している。映画を観たその瞬間、議論をしたその瞬間だけでも意識が変化するのはすごく大きなことだと思います。

 

 

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「自分たちのできる方法でアクションを起こす」

 

 

‐「3.11映画祭」を通じて、映画を観た後のアクションとして何を期待しますか?

 

映画を観ることで、日ごろの仕事や家庭や社会へのまなざしに少しでも変化が起きれば嬉しいですね。変化の種類やレベルは人それぞれだと思いますが、批評性をもって自分の未来を重ねてみる、考えていく姿勢が生まれてくれば良いですね。

 

‐今回は全国30のサテライト会場で同時期開催とのことですが、どのように参加者を募ったのでしょうか?

 

映画祭というと、どうしても大都市に集中してしまいがちですが、私たちは同じように3.11以降に何かを語り合った人たちと一緒にやりたいと思いました。そこで広報活動や、必要であれば作品選びや申込みなども事務局がサポートし、現場の運営は全国どこでも賛同していただく方々にお任せしています。今回は、北海道から九州まで、個人・企業・市民団体など、さまざまな層の方々が自分たちのできる手段で参加しています。

 

またサテライト会場参加団体の4割は、共催の日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合のネットワークから参加しています。こちらもレンタル店、地域の映画祭実行委員会、単館映画館、NPOなどさまざまです。

 

‐会場ごとの運営団体が上映作品をセレクトするには面白いですね。どうしてこのような運営方法になったのでしょうか?

 

震災から5年がたち複雑に多様化している課題や問題は、やはり現地の方々が一番切実に感じています。だからこそ「やらされる」のではなく、映画をツールにして自分たちの問題意識や伝えたい事を自分たちの手段と言葉で提示していくという点を何よりも尊重したいと思いました。そしてそれらが3.11映画祭という全体の動きになることで、国内外の多くの人々がその多様さを知り、一辺倒になりがちな「復興」や「震災」のイメージを広げ、自分自身の問題としてアップデートしていけるのではと考えています。

 

‐3331 Arts Chiyodaでは映画の上映だけでなく、参加型のイベントもたくさんありますね。

 

はい。上映後の対談や監督舞台挨拶にも力を入れていますし、そのほかにもライブやマーケットイベントなども開催します。とくに13日の日曜は、3331 Arts Chiyodaのコミュニティスペースでサステナブルな活動をする団体が出店するマーケットを行います。同会場では「わわプロジェクト」が発行を続けている「わわ新聞」連載小説「仮設のイーハトーブ」の読み芝居がありますが、これは宮城出身の演劇ユニットによる活動です。

 

同じく同日開催のミニ太陽光発電ワークショップ(要予約)は、こちらも震災後から活動に取り組む藤野電力さんが講師となり、家で使えるミニソーラーシステムを組み立て、お持ち帰りいただけるワークショップです。14日は、せんだいメディアテークなどで震災後に継続して行われている「てつがくカフェ」も行います。陸前高田を記録した映像作品「波のした、土のうえ」を観賞後、ファシリテーターの進行の元で考えを廻らせていく非日常な時間を、是非体感して頂きたいですね。

 

 

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3.11映画祭、メイン会場の3331 Arts Chiyodaは、3.11〜14の4日間で開催
http://311movie.wawa.or.jp/
前売券発売中(当日券あり)上映1000〜1500円
サテライト会場は会場により異なる http://311movie.wawa.or.jp/satellite/

 

 

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