現代の日本文化を語る上で、欠かせないのがアニメソング、通称アニソン。



そんなアニソン、そしてアニソンファンにとって欠かせないイベントがあります。毎年夏に行われる「Animelo Summer Live」通称「アニサマ」。日本最大級の「アニソンフェス」として知られるアニサマは、話題のアニソンシンガーや声優はもちろん、ももいろクローバーZなどの日本を代表するアイドルや、過去にはT.M.Revolutionや織田哲郎さんといった日本を代表するトップアーティストが参加しています。



今回お話を伺ったのは、2005年にアニサマを創設し、現在は株式会社MAGES.の代表取締役を務める、太田豊紀さん。アニサマの裏話や最近のアニソン事情について、語っていただきました。



そして、前回記事に引き続き今回の記事では若手人気アニソンシンガーである鈴木このみさんに特別コメントを頂いています!



(写真提供:Animelo Summer Live 2014/MAGES. Animelo Summer Live 2005/DWANGO)

伊藤 大成
1990年、神奈川生まれ。島とメディアをこよなく愛する25歳.

 

1年に1度のアニソンの祭典「Animelo Summer Live」

KN1_1851

(写真:一年に一度、アニサマの会場は熱気に包まれる)

 

-まず「Animelo Summer Live」について教えて下さい。

「Animelo Summer Live」は2005年に初回公演を行い、今年で11回目を迎えます。

今年度もさいたまスーパーアリーナスタジアムモードで公演を行い、アニソンライブとしては国内最大級の81,000人の動員を見込んでいます。

-アーティストのラインナップもいわゆるアニソンシンガー・声優といった人たちから、J−POPを代表するアーティストやアイドルなど非常に様々です。

ももいろクローバーZ_1

(写真:アニソン以外でも絶大な人気を誇るももいろクローバーZ)

 

様々な枠を超えて一堂に集うのが、アニサマの特徴でもあります。

我々としても「あのアニメに使われていた名曲」を会場に来ていただいた方に聴いて頂きたいと思っていますし、ジャンルにとらわれないステージの提供ができればな、と。

-この時期になると、各所で夏フェスが開催されます。「アニサマ」もそれらを意識されての開催なのでしょうか。

開催に関しては、国内で同時期に行われている夏フェスイベントを強烈に意識して行っていますね。

-アニソンを歌う人たちの中でも、登竜門としてアニサマを目指しているような方もいると聞きます。

登竜門としてアニサマを開催しているという意識はありませんが、結果的にそうなっていることは光栄だと思っていますし、これまで、2005年の初開催から2014年の開催まで340組近いアーティストの方に参加して頂いており、非常に多くのアニソンアーティストの方々に関わって頂ける機会にはなっているんだと思います。

 

 

「普通だったら成立しない」アニソン専門フェスが成功したワケ

DSC_0121_m

(写真:2005年に初開催された時の「アニサマ」)

 

-そもそも、なぜアニソン専門のフェスを行おうと思ったのですか?

10年前、私が勤めていたドワンゴという会社では、当時流行していた着メロを専門に取り扱うサイトを運営しており、その中にアニソン専門の「アニメロミックス」というサイトもありました。

着メロには歌声が入っていないので、基本的にはJASRACに登録されている楽曲であれば、自由に着メロを作ることができ、ほぼ全ての楽曲を提供することができていました。

しかし、携帯の技術が進歩し、着メロに代わって着うたが主流になってきます。

歌入りになると、原盤権をメーカーさんから直接ご許諾いただく必要があり、当時は今と違って「配信」に消極的なメーカーさんも多く、サイトとして豊富な楽曲提供が難しくなってしまったんですね。

そこで何とかメーカーさんとお近づきになって楽曲の許諾をいただきたいという邪(よこしま)な想いで(笑)、携帯サイト「アニメロミックス」のプロモーションイベントとして、アニソンだけを集めたフェスを行おうという運びになりました。

-なるほど。10年前のアニソンを取り囲んでいる状況はどのようなものだったのでしょうか。

10年前はいわゆる美少女ゲームのアニメ化が次々と行われ、ヒット作品が生まれた頃でした。

作品と同時に主題歌も注目を浴びるようになりまして、水樹奈々さんが歌う「ETERNAL BLAZE」がオリコンウィークリーチャート2位を記録するなど、アニソン自体の注目度が世間的に上がっている時期でもありましたね。

-アニソンに対する世間的な評価が変わりつつあった、と。

はい。とはいえ、まだまだ一般の人々には馴染みのない文化でしたし、アニソンのフェスを行うといっても、メーカーの枠を超えることは現実的に難しいと思われていたはずです。

普通だったら成立しないものだったと思っています。

-そういった事情があるなか、なぜアニサマの実現が可能になったのでしょうか。

アニソンシンガーである奥井雅美さんが、2003年にキングレコード所属のまま、ランティスさんのJAM Projectというアニソンシンガーが集っているグループに参加され、メーカー(レーベル)の枠を超えるということを実際に体現されました。

その2003年末に、前述の携帯サイト「アニメロミックス」のCMソングを奥井雅美さんに歌って頂いたのが大きなきっかけです。

奥井雅美さんは90年代に数々の名曲アニソンを歌って来られた、アニソン業界を代表するアーティストです。

翌2004年、奥井さんがフリーになられたきっかけでアニサマ実現へのご協力をお願いし、ご快諾いただきました。

奥井さんのご協力が無ければ、アニサマは絶対に実現しなかったと思います。

-レーベルという枠を超える事が実現したのですね。

それまでもアニソンのライブというのは行われてきたのですが、基本的に作品のライブやレーベル内での取り組みといったものがほとんどでした。

そういった枠を超える事が、アニサマの開催によって実現できたと思っています。

-アニサマの初回開催にはどのような方々が中心になって行われたのでしょうか。

アニサマ開催にあたっては、奥井雅美さんを中心に、ランティスの井上社長、JAM Projectのリーダーである影山ヒロノブさん、水樹奈々さんのプロデューサーであるキングレコードの三嶋さん、同じく水樹奈々さんに楽曲を多数提供されており、キングレコード時代の奥井さんの音楽プロデューサーでもあった矢吹俊郎さんら、本当に多くの方々にご協力いただきました。

-アニソン界の重鎮ともいえる方々が参加してくださったのですね。

もちろん、本当にそんなものが実現するのか、といった声もたくさん聞きました。

前例のなかった取り組みですから、我々も実際に開催してみないと成功するかも分からない、という状況でした。

-実際にアニサマを開催してみて、手応えはどうだったのでしょうか。

DSC_0191_m

(写真:2005年に開催されたアニサマの様子)

 

2005年の第1回公演は、1万人が収容できる代々木体育館で行ったのですが、いざチケットを販売してみると、ソールドアウトになりました。

チケットが売り切れた時点である程度の成功を予感していました。

実際開演当日になると、会場に訪れてくれたお客さんからのリアクションが我々の予想していた以上のもので、曲に対するリアクションやコールが完璧だったんですね。

この時は、アニソンファンが持っている熱量の凄さを改めて認識しました。

開催する前に想像していた最高の形が、2005年のアニサマでした。

この年の成功を持って、翌年以降ずっと続けられるという手応えを感じましたね。

-そして、アニサマは今年11回目の公演を迎えます。アニサマ開催当初に掲げていた目標のようなものは受け継がれているのでしょうか?

アニサマの基本的な理念としては、2005年公演のテーマソングタイトルであり、2014年公演のサブタイトルにもなっている「ONENESS」が元になっています。

レーベルや作品、音楽のジャンルや国境も超えて、みんなでアニソンを楽しもうというのは、10年前から変わらない普遍的なものであり、アニサマにある根本的なテーマです。

 

 

文化から入れば、壁を越えて一緒になれる。アニソンに秘められた可能性。

-アニサマが開催されてから10年、アニソンを取り巻く環境も変化しているかと思います。

アニソンイベントの市場規模で言えば、10年前には恐らく10億円もなかったように思いますが、アニメ産業レポート2014によると2013年は前年比169%で59億円を超えていると言われておりますので、2015年は100億円にせまるのではないでしょうか。

また、2013年のアニメの放映本数は200本を超えており、こちらも2015年には過去最高を記録するのではないでしょうか。

 

また、アニソンシンガーだけでなく、アニソンを歌う声優の人たちが表舞台に出る機会が増えてきました。

-きっかけはなんだったのでしょうか。

ハルヒブームが要因の一つだと思っています。

「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディングテーマは「ハルヒダンス」と呼ばれ、当時ネット動画サイトなどで話題となり、アニメファンの間で大ブームを起こしましたが、同時にその踊りをアニメに出演されていた声優さんが、ライブで再現したというのが大きなポイントです。

現在の「2.5次元アイドル」と言われるものの先駆けだったと思います。

-当時「ハルヒ」は非常に大きなブームになりました。

μ's_2

(写真:アニサマに出演するμ’s)

 

 

最近では「アイドルマスター」や「ラブライブ!」といった人気の作品に出演されている声優の方々が、アイドル声優として非常に大きな舞台に立つようなりました。

また、女性のアニソンファンも増えています。アニサマの客層は男性9:女性1という割合ではあるものの、宮野真守さんなどを始めとする男性声優の人気もあり、女性がアニソンに触れる機会が、徐々に増えてきています。

(写真:性別問わず人気の男性声優「宮野真守」)

 

-国内ではサブカルチャーの枠を超え、文化の一つとなったとも言われているアニソン。海外での反響はどうなのでしょうか?

アニサマの派生イベントして、2011年にAnisama in Shanghai(上海)、2014年にANISAMA WORLD 2014(台湾)を行ってきましたが、この時もお客さんの反応の凄さに驚かされました。

実際にイベントを行うことで、海外でのアニソンの人気を再認識した形です。

-海外のアニソンファンも日本と変わらないのですか?

アニソンイベントのお客さんは、日本も海外もほとんど変わりません。

我々も海外で公演を行うにあたり、どういったイベントにすればいいのか、日本と変えたほうがいいのか、ということを非常に考えたのですが、結局今の日本で流行っているアニソンをそのまま持っていけばいい。という結論に至りました。

-海外でも日本と同じ物を求められているのですね。

日本のアニメに関しては、海外でも放映をリアルタイムで共有できる仕組みが整備されつつあります。

彼らからすれば、日本で放映されているアニメの文化をリアルタイムで共有したいわけです。そして何より音楽は、言語に依存しないコンテンツですから、海外でも人気を得やすいのです。

-アニソンを通して、国の障壁をなくす事も夢ではない気がします。

アニメやアニソンに憧れ、日本へ留学するような人は以前から多くいらっしゃいますし、アニソンを始めとした文化から入れば、国と国の間にある壁をなくし、一緒になれる可能性があるとも思っています。

-「壁を超えて1つになる」というのはアニサマのテーマにも通じる物がありますね。なぜ、アニソンはここまで聴いている人たちを1つにできる力を秘めているのでしょうか。

アニメ自体が見る人を元気にするものだからだと思います。アニソンは元々明るい歌詞が多く、曲を聴いている人々を元気づけてくれます。

今アニソンを作っている人々のトップにいるのは「ヤマト」や「ガンダム」といった作品を見た世代です。

彼らもまた、小さい頃にアニメを見て元気づけられた世代です。

戦後の日本において、アニメやアニソンといった文化が培った物が、次世代に継承されているんだと思います。

-最後に今年のアニサマを楽しみにしている読者の方にメッセージをお願いします。

今年のアニサマも例年と同じように、お客様の期待を裏切らない物を提供できるとおもっています。

ぜひご期待ください!

——

今回の記事では前後編それぞれに、「Animelo Summer Live」にゆかりのあるアニソンシンガーから特別コメントを頂いています!

 

後編では、若手実力派アニソンシンガーとして第一線で活躍されており、「Animelo Summer Live 2015 -THE GATE-」にも出演されるアニソンシンガー鈴木このみさんからコメントをいただきました!

Konomi_1stTour_KeyVisual_0715

-世界中では愛されるようになった「アニソン」。鈴木さんは今後アニソンをどのように広め、歌っていきたいですか?

アニソンに興味を持っていない方にも魅力を伝えられるようなシンガーになりたいです。

私自身、アニメやアニソンを好きになったのは高校生の時で、それまでは意識して触れたことはありませんでした。

学校で隣の席になった友達から、これ面白いよ!と「マクロスF」教えてもらってを見たのがキッカケでアニソンをどんどん聞くようになり、J-POPシンガーから、アニソンシンガーを目指すようになりました。

ですが、それまでも知らなかっただけで、昔のアニソンを歌っていたり聞いたことがあったりと、意識をしていなかっただけで身近にあったんだな~と気づきました。

そういう意味でアニソンはきっと皆さんにとっても意外と身近な音楽だと思いますし、以前の自分がそうだったからこそ、アニソンに興味のない方にももっと知って欲しいし、好きになって欲しいなという気持ちが大きいです。

それから、アニソンは国境も越える音楽だと思うので、海外にももっとアニソンを広めていきたいです。

海外のアニソンファンの方の熱量は本当に凄いと思います!何度か海外のライブに出せていただいたのですが、皆さんが日本語で一緒に口ずさんで下さったり、握手会ではアニメを見て覚えた日本語で会話して下さったり、中にはコスプレを楽しんでいる方もいたり・・・アニソンは日本の文化の1つなんだなぁと、強く肌で感じました。

私からもきちんと魅力を伝えられるように、今、英語をコツコツ勉強しています。

-鈴木さんにとって「アニサマ」とは?ご自身が感じているアニサマの魅力を教えてください。

アニサマの1番の魅力と言えば、一体感だと思います。
あの27,000人が入る大きな会場でアニメを通して一つになれるのは、アニサマだからこそ味わえる感動だと思います。

ステージ上から見る沢山のサイリウムは凄く綺麗で、逆に私がお客さんから元気をもらえて、とても温かい場所だなぁと毎年思います。

そして、私にとってアニサマは「挑戦」の場所でもあります。

例えば、去年はメドレーや早着替え、ダンス、バズーカ砲を打ったりと、沢山のことに挑戦させて頂きました。
アニサマは、「今年も来年も出たい!」という1年の大きな目標になっていて、出させていただくからには、去年の自分を超えたいという刺激とプレッシャーをもらっています。

アニサマがあるから、自分もアニソンシンガーとして成長出来ていると思うので、そんな機会を頂けることに、本当に感謝しています。

-「アニサマ」に初出演した時は、15歳という若さだった鈴木さん。出演が決まった時はどのような思いでしたか?

デビューする前からアニサマの存在を知っていたので、いつか出演出来たらいいな~なんて思っていました。

まさかデビュー1年目で出演させて頂けるとは思っていなくて、出演が決まったと聞いた時は、とてもビックリしました。

実はそれまで、会場のさいたまスーパーアリーナには1度も行ったことがなくて、リハーサルで会場の中に入った時は、ここにお客さんが入ったらどんな感じになるんだろうと少しの不安と期待を感じていたのを覚えています。

正直、本番前はお腹が痛くなるほど緊張していたんですが、本番は楽しすぎてあっという間でした。

あんなに沢山の方にサイリウムを振っていただいたのは初めてで、でもそれが凄く嬉しくて、ステージに立って皆さんが見えた瞬間に緊張がとんでいきました。

また、ソロだけではなく他のアーティストさんとコラボもさせて頂き、色んな歌い方や、シンガーとしての意識の持ち方にも刺激を頂きましたし、自分ももっと頑張りたい!という気持ちになりました。

それに、個性豊かな他のアーティストさんのステージをみて、「じゃあ自分の個性はなんなんだろう?」と深く考えるきっかけとなりました。

-最後の読者の方へメッセージをお願いします。

アニソンは今、ジャンルの垣根を超えて、沢山の方に愛されていると思います。

カラオケに行けばアニソンが履歴に入っていたり、アニメという共通の話題からクラスメートとグッと仲良くなったり・・・。

アニソンを歌っているからこそ、アニソンが好きだからこそ、出会えた作品や人が沢山います。

私は有難いことに、アニメカルチャーがすごく盛り上がってきた時期にアニメを好きになり、アニソンシンガーとして活動させて頂いていますが、アニソンには、ここまで大きくなるまでの多くの歴史があると思います。

アニソンにもらった沢山のエネルギーで私が歌っていくことで、その大きな歴史をしっかりと次の世代にちゃんと渡せるように頑張っていきます!