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プロダクトデザイナーが取り組む小豆島とデザインのグッドリレーションシップ

瀬戸内海の島、小豆島。オリーブとお醤油とおそうめんの島。

小豆島には2013年、2016年と新しくユニークな作品が増えました。それはプロダクトデザイナー清水久和さんの「オリーブのリーゼント」「愛のボラード」です。

「オリーブのリーゼント」 作:清水久和 撮影:Shim

 

「愛のボラード」 作:清水久和 撮影:瀬戸内国際芸術祭実行委員会

 

なぜこのユニークな作品たちが小豆島に作られたのか。そして清水さんと小豆島の皆さんが取り組み、2016年に発表された「愛のバッドデザイン」プロジェクトとは何なのか?

 

2月8日に東京ミッドタウン・デザインハブで開催された、地域×デザイン2017のトークイベントで伺ってきました。

 

 

瀬戸内海とデザイン。観光から関係へ

 

 

小豆島は瀬戸内海で2番めに大きい島。観光資源として、オリーブ、『24の瞳』、農村歌舞伎、醤油などがあります。現在の人口は3万人弱。近年では「瀬戸内国際芸術祭」の開催地としても話題にあがることが多くなってきました。

 

瀬戸内国際芸術祭(せとうちこくさいげいじゅつさい)とは瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代美術の国際芸術祭です。会場となる島々には今でも伝統的な文化や美しい自然景観が残っている一方、高齢化、過疎化が進み活力を失いつつあります。芸術祭を開催することで起きる、島の住人と来訪者の交流により島々の活力を取り戻し、伝統文化や美しい自然を活かした現代美術作品を通して、瀬戸内海の魅力を世界に向けて発信することを目指しています。

 

清水さんと小豆島の出会いは2013年。2回目の瀬戸内国際芸術祭の時。特別自治区となった小豆島にエリアディレクターとして着任した椿昇さんから、小豆島でおこなったプロジェクト「醤(ひしお)の里」のクリエイターとして招聘されたことがきっかけでした。

 

©(公社)香川県観光協会

©(公社)香川県観光協会

 

現在町長を務めている塩田町長は「瀬戸内国際芸術祭」での課題を以下のように語ります。

 

塩田:住んでいる人たち、とくにこれからの若者たちが「元気になる、自信を取り戻す」ということがいちばん大切だと思っています。それができる「面白い取り組み」を依頼しました。

 

その「面白い取り組み」として生まれた作品が、冒頭の「オリーブのリーゼント」でした。

 

清水:元々島という場所は好きでしたので、いろいろ行きました。椿昇さんにお話をいただいて小豆島でのプロジェクトをお受けし、最初に「オリーブのリーゼント」を作りました。リーゼントのルーツは元々私が制作していた「ヘアスタイルコレクション」です。古くは長谷川平蔵とか井伊直弼とか、「日本人として意志を感じさせる、自分の意志を強く伝えることのできるヘアスタイル」を作品にしていたのです。リーゼントが息が短いヘアスタイルだったこともあり、スポットを当てたいなと、リーゼントを選びました。(笑)

 

これは実は野菜即売所なんですね。おかげさまで人気が出まして、子供たちにワークショップをしました。その流れで、作品に絵を描くワークショップですとか、リーゼントを体験するワークショップなんかを、実施しました。

 

ワークショップの様子。 ©小豆島町役場 撮影:濱田英明

 

清水さんは島での取組を依頼された時、現地の方との係作りにおいてキになった出事、印象深い出事として以下のように述べました。

 

清水:島っていいものが残ってるんですよね。もともと僕は島が大好きで、いろんなところ回っていたんですが。島はいろんなものを運んでくることが大変なこともあって、ものが捨てられない。だからいろいろいいものが残っているんです。あとは、小学校で授業したときの、子供たちのあの素直な感じ…素晴らしいなぁって思いました。

 

そしてやっぱり島に係すると、「子供か、お年寄り」しか出てこないことが多いんですよね。若者は仕事で忙しいし、いままで交流がなかった。「島に居ないんじゃないか」とも思っていましたが。町長がを集めてきてくれて、「こんなに若者がいたんだ!?」と驚きました。

 

塩田:小豆島って二つの町があるんです。だけどその若者たちはお互い活発な交流がなかったんです。その二つの町をひとつにしてやることをしたかったんですよね、そこで商工会の青年部などに声をかけました。

 

清水: 「オリーブのリーゼント」が人気が出てきて、もっとやろうというお話をいただいて2013年のあとも取り組みをすることに。僕には『愛のバッドデザイン』というのがありまして、それを小豆島でやってみたいなっていうのを相談したんですよ。2013年の瀬戸内国際芸術祭が終わった次の年も継続して、島に伺うことになりました。

 

そこから始まるのが、「小豆島愛のバッドデザインプロジェクト」でした。

 

床屋さんの店先 ©小豆島町

 

バッドデザインはグッドデザイン

 

 

愛のバッドデザインプロジェクトとは、清水さんが25年前から続けているデザインリサーチプロジェクト。賞をもらうような話題になるデザインではなく、忘れられているけど優れているデザインを見つけ出すプロジェクトです。

 

緞帳(どんちょう)のふさふさ ©小豆島町

こしょうのボトルキャップ ©小豆島町

 

 

 

 

 

 

 

 

たまごの白身わけ ©小豆島町

おそうめんの束をまとめる紙テープ ©小豆島町

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清水さんと塩田さんは、このプロジェクトの裏側についてこのように語りました。

 

清水:プロダクトデザインは、こういう部品とか、細部の集積なんです。全体を大まかに捉えていてはデザインってできないんですよ。そういった意味では、点しか作らない「オリーブのリーゼント」のような一点ものでも、500万台作るものでも、このリサーチを参考にしていますね。

 

塩田:清水さんと出会ってから、「アートとデザインの違い」がとても印象にのこっています。工業デザインは100人いたら100人良いと思うものでないといけないと言われたんです。

 

清水:そうです。アートとデザインの違いは作られる数。たくさん作られるものは、世界のどんな人種のどんな年齢の方でも同じように使えるようにしなければいけないという制約があります。作る数によって見た目がかわるというのがデザインですね。その中でも1点ものである「オリーブのリーゼント」や「愛のボラード」にはは制約がない。自分のコンセプトがはっきり出せたと思いますね。

 

さらに未来のデザインの話や、清水さんのこれからの活動観にも話が及びます。

 

清水:工業製品って、先程も申し上げたとおりいろんな制約のもとで作られているんですよね。製造上の制約、コスト上の制約、形の制約…。もう制約の塊なんです。それがゆるくなり、制約がどんどんなくなっていき、より自由になっていくデザイン。制約がなくなったときに新しいデザインが生まれると思っています。例えば、金型で成型するんじゃなくて、3Dプリンタで自由にできちゃうとか。そういった自由度が上がっていくということが未来のデザインじゃないかなと。

 

仕事柄やっぱりデザインに興味ある人たちだけではなく、いろんな人にデザインにふれるきっかけづくりをしたいと思ってます。例えばリゼントをやったときに、リゼントはみんなわかる。だから、どんどんどんどんがっていく。デザインってこういうものなんだっていう風にがっていく。そこのきっかけをつくりたいです。

 

きっかけを作ることとしてまだこういった活動がどういうものかまとめたことがないので、一回まとめないとわかってもらうのがむずかしいなぁと感じています。今回もやっててえるのに苦しましたから。(笑)小豆島の若者たちも一年以上は何のことかわからずにやってきていたみたいです。だから本という形で、今回のプロジェクトを残せたら、と思っています。

 

清水さんが小豆島でいちばん印象に残ったデザイン「渕崎パン」

リーゼントメロンパンも作りました。

 

人口が年に1%増える島に

 

 

塩田:小豆島の最盛期の人口は6万人。今は3万人なんですが、近年年間200人以上の移住者が増えています。20~30代が多いですね。この移住してくれる方々が増えてくれると、小豆島では高齢化がすすまないのです。高齢化は日本で多くの自治体が課題として取り組んでいる問題ですよね。

 

小豆島町町長の塩田さん

 

この結果から、私は都会に比べて離島や地方の方が可能性があるのでは、と考えるようになりました。2020年台2030年台と、続いていった場合、都会の高齢化、地方の反高齢化が交差するような時期がきそうです。100年後に地方が輝くような時代が訪れたといわれるような時代になるのではないかという漠然とした思いがあります。

 

 

行政の政策をつくる立場でも地域政策を考えるときも使える有効な「見落としがちな箇所に本質的な次の可能性がある」こと。マジョリティーの評価を受ける社会政策と工業デザインの共通性を感じました。

 

なんの縁もなかったふたりが取り組むこのプロジェクトは、今後も島の歩みとともに続いていきます。

 

 


小豆島町公式サイト:http://www.town.shodoshima.lg.jp/

 

清水久和さんデザインプロダクション:S&O DESIGN

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鈴木賀子