よくライブや演劇に行かれる方はご存知かと思いますが、そのようなチケットを購入する場合、チケット会社かコンビニエンスストアで購入するのが普通になっています。特に、いわゆるメジャーデビューしたアーティストのライブとなればなおさらです。


しかし、その流れに逆行するようにインディーズ時代はもちろん、昨年のメジャーデビュー後もストリートライブを行い手売りでチケットを販売し、数千人規模の会場を埋めてしまったアーティストがいます。その名もメロフロート。5年前に関西で結成された3人組です。


そのメロフロート、近隣の迷惑にならないようにいろいろな場所でストリートライブを続けながら、全国47都道府県を回ってしまったというツワモノ。KENTさん(Vo)、YU-KIさん(Vo)、DJ KAZUMAさん(DJ)が札幌を訪れた際に、ストリートライブへの想いを伺いました。

橋場 了吾
1975年、北海道札幌市生まれ。 2008年、株式会社アールアンドアールを設立。音楽・観光を中心にさまざまなインタビュー取材・ライティングを手掛ける。 音楽情報WEBマガジン「REAL MUSIC NAKED」編集長、アコースティック音楽イベント「REAL MUSIC VILLAGE」主宰。

ストリートライブのルールは「3日でCD100枚完売させる」こと

‐メロフロートの結成は2011(平成23)年、現在の体制になってからは4年ということですが、振り返ってみていかがですか?

 YU-KI(以下Y):1年目は好きで続けられて、2年目は少し現実を見て(笑)、3年目はその2年間の思いがあるから勢いでやってきて、4年目はそのつながりでできたかなという感じです。

47都道府県をストリートライブで回るという企画をやってきたんですが、ひとつの都道府県でCDを100枚完売させる、達成できなかったら次の都道府県に行けないというルールを決めてやってきたので、今のメンタルはやばいですね(笑)。

‐ストリートは、メンタルに来そうですね(笑)。結成当初からメンタルは強かったんですか?

全員:全然強くないです!

Y:ストリートライブを重ねることで強くなったと思います。結成当初はライブハウスで歌っていたんですが、自分たちのお客さんがいないんですよ。

ライブハウスに出ても、そもそもお客さんが来てくれないんです。

どうやったらライブハウスにお客さんを呼べるのか……シンプルに『路上で歌うことちゃうか』と。

‐それでストリートに出ていったと。

Y:最初は恥ずかしかったですよ。大阪で歌っていたんですが、目の前をどんどん人が通り過ぎていくので、心細くなっていきますしね。

僕らは、足を止めてくれる人が1人2人のときからストリートで歌っているので、今はどこでも歌えるメンタルがついたと思います。

‐聞くところによると、札幌では手稲駅(札幌駅からJRで15分ほど)というストリート文化があまりない場所でもライブを行ったとか。

Y:ストリートライブをできない場所もあるので、しっかり場所の下調べはしました。

もちろん札幌駅でもやったんですけど、自分たちでウィキペディアで1日の乗車数を調べまして(笑)。

いいなと思った場所は、周りに何があるかを地図で調べて、『1回行ってみよう』と思ったのが手稲駅だったんです。

‐反応はどうだったんですか?

Y:これがめちゃくちゃ良かったんですよ!手稲駅は北海道の2会場めだったんですが、そこで100枚完売を達成しました。

DJ KAZUMA(以下D):3日以内の予定が、2日で完売できたのは嬉しかったですね。

手稲駅に着いたときは『お、これは広すぎるぞ』と思ったんですが(笑)、学生が多い駅という情報があったので、特に下校時は盛り上がりました。

学生以外にも、近くのスーパーに寄った親子連れが買ってくれましたね。

 

LIFE GOES ON』は世代を問わず伝わる曲・より添える曲にしたかった

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‐8月にシングル『LIFE GOES ON』がリリースになりましたが、この楽曲を聴くと、ストリートでも絶大な支持を集めるのがわかりますよ。

Y:『会いたい人にちゃんと会えていますか』というテーマの曲なんですが、自分たちも音楽活動があることで、家族や友達、大切な人に会う時間を削っていたんですよね。

それって、僕らだけじゃなくて皆もそうなんじゃないかと。そう思ったときに、会いたい人に会いに行ける曲を作ろうと思って完成した曲です。

‐歌詞の名義が個人ではなくメロフロートになっていますが、どのように作っていったんですか?

 Y:まず曲があって、その曲にどういう思いを乗せたいかというのを出し合います。

その時点ではまだテーマしか出ていない段階ですね。で、最終的には僕がまとめにかかると(笑)。

D:誰かがまとめないとめちゃくちゃになってしまうので(笑)

Y:これまでの楽曲はほぼ僕が歌詞を書いてきたんですが、この曲に関しては自分の中ではまとめきれなくなっちゃって……何度も何度も書き直したんですが、フラットにして再構築しました。

D:本当、些細なことなんですよ。でもその些細な言葉の違いで伝わり方が変わるので、まあ大変でした(笑)。

Y:スタジオに3日間閉じこもって、不眠不休で作りました。というのも、今までの楽曲に比べてテーマが壮大になっているので、世代を問わないで伝わる曲・より添える曲にしたかったんです。

 

ライブに来てくれるファンは、ストリートからの経緯を知ってくれている

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‐メロフロートというとライブのチケットはすべて手売りということなんですが、メジャーデビューしても続けているんですよね。

KENT(以下K):今回のツアー(2月から9月に渡って開催された全国9都市ツアー)も、直接お会いできた方々に『ライブ楽しみにしていてね』という思いを込めてお渡しできました。

正直、デビューしたらチケットは手売りせんでいいんやと思っていたんですけど『え、まだ手売りなんや』って(笑)。

Y&D:思ってたんかい(笑)。

K:ただ、これまで手売りをしてきたことの価値というのを思い返して、良い出会いがあったからこそここまで積み重ねて来られたというのを感じたので、最終日のZEPP OSAKAまで手売りができたのは財産だなと思いますね。

‐これが「お客さんを呼ぶために路上に出た」延長線上なんですね。

Y:ストリートを始めたころは、まさかZEPP OSAKAのライブチケットを手売りするところまで来られると思っていませんでした。

ライブは華やかなものを見せるものだと思うんですが、僕らのライブに来てくれるファンの方々は、その経緯を知っているというのが大きいと思うんですよね。

だからこそ、1曲1曲の受け取り方が違う……音楽を通じて重ねられる相手が、(ストリートで歌っている)僕らだったりするわけです。

‐それはメロフロートならではですね。

Y:MCの内容も変わりますよね。これまでの経緯をかみ砕きながら、目の前にいてくれる方々に伝えていかないとダメなので。

今後、北海道で大きな会場でできたときには、『あの日の手稲駅』の話もしたいんですよ。

K:これから寒くなりますけど、皆さんの心を温かくできるような音楽を届けていきたいと思います。

D:メロフロートはライブが一番伝えられる自信があるので、めちゃくちゃ楽しませます。機会があったら是非遊びに来てください。

 

【取材を終えて】

ストリートという日常で歌われていた楽曲が、いつのまにか数千人クラス収容のライブハウスで聴くことができるというのは、なかなかあることではありません。そのなかなかあることではないことを、メロフロートの3人は見事にやってのけたわけです。

 

メジャーデビュー前から続けているライブチケットの手売り。KENTさんは「デビューしたら、手売りはしないはずだったんですけど」と笑いますが、このリスナーとの近さこそが日常と非日常をつなぐというメロフロートならではのライブ空間を生み出していると思います。

 

地元関西ではZEPPクラスを制覇、近々に全国的に大きな会場で「非日常」のライブをすることになりそうなメロフロートですが、その前に突然私たちの「日常」の中でもライブをやってくれるはずです。

 

【ライター・橋場了吾】

北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライ