古くからアジアとの玄関口として発展を遂げてきた九州随一の街、福岡県福岡市。最近では「福岡クリエイティブキャンプ(FCC)」などの取り組みや、スタートアップの盛り上がりなど、移住希望者からの注目を浴びる自治体としてひときわ目立つ存在となっています。



そんな福岡市の盛り上がりの裏側について、福岡市役所の内田沙弥香さん(トップ写真左)と福岡移住計画の窪田司さん(トップ写真右)にお話を伺いました。



“東京にこだわらない働き方”を推進する「OFF TOKYO」。70seedsも主催者の一員として関わるこのプロジェクトとの連動コンテンツとして、IT先進自治体の取り組みをご紹介します!

地理的条件が生んだ「クリエイティブの街」福岡

‐福岡市が注目を集めるきっかけとして、FCCの存在も一つの要因だと思うのですが、どのような狙いで始まったのですか?

内田:端的にいうと、福岡のクリエイティブ産業を盛り上げてくれる人材に多く集まっていただきたい、ということからでした。

福岡市では、ITやデジタルコンテンツなどのクリエイティブ産業の振興に力をいれていますが、そのためには、やはり担い手となる優秀な人材が必要ですので、そのような方々が福岡に来るお手伝いができれば、と。

‐最初はイベントだったんですよね。

内田:はい、4年前に福岡移住計画さんと一緒に東京で開催した移住イベントがきっかけです。

福岡のクリエイティブ企業と東京のクリエイターとのマッチングイベントで,約150人のクリエイターが参加してくださり福岡への移住熱の高さを感じました。

その一方で、移住を検討するときの課題としてやはり仕事は大きくて。それをきっかけに、翌年からFCCという形での取り組みが始まっていきました。

‐その成果が、今の「クリエイティブ都市」としての福岡市のブランドにもつながっているんでしょうか。

内田:実はもっと前から「クリエイティブ都市」を目指す流れはありました。

福岡市は、政令指定都市で唯一一級河川がなく、大量の水を必要とする工場があまりない土地なんです。

そのため、大規模な設備がいらず、成長性の高い産業として、ITやデジタルコンテンツなどクリエイティブ産業の振興・集積に早くから力を入れてきました。

‐そんな背景があったんですね。東日本大震災以降に注目が集まっていったイメージでした。

内田:震災をきっかけに、企業の立地が加速したという側面もあります。

ただ、福岡に本社を置きながら成長を続ける企業も多いですし、震災以前から福岡にはクリエイティブ産業が集積していたんです。

若い人材が多い、理系の学校が多いなど担い手となる人が豊富なこともあります。都市としても親和性が高いんですよ。

 

 

暮らしてみて気持ちがいい街

‐福岡に住む方々には共通点があったりしますか?

窪田:自分のペースで軸をしっかり持ち実直な方が多い印象があります。<

内田:女性が多いというのも特徴のひとつです。福岡に進出された企業からは、福岡は優秀な女性が多いという評価をよくいただきます。

転入人口でも,10~20代の女性がとても多いんですよ。福岡の産業は9割以上が第三次産業で、女性が活躍する仕事も多いというのも一因だと思います。

窪田:男性は一度九州の外に出てから戻ってくるパターンが多いようですが、九州圏出身の女性は九州内にそのまま残る方が多いと思います。

‐それは親の意見だとか…?

窪田:それもあると思いますが、単純に福岡・九州が合うということがあると思います。こっちの空気感が合う、体が無理しない。

その点でパフォーマンスも発揮できているという話はよく聞きますね。

福岡は住んでいて気持ちいいというか、みんな助けてくれる、一緒にやるなら盛り上がる、そんな空気があって。みんな福岡が好きで気持ちいいんですよね(笑)。

‐地元愛が他のエリアに比べても強い街だと。

窪田:だれと話しても「福岡はいい街だよ」と、まずポジティブワードが出てくるんですよ。地方でよくあるのが「何もない町」とネガティブワードから飛び出すんですが、福岡はそこから違いますね。

外から来る人を受け入れる土壌がもともとあるのだと思います。

内田:福岡人は福岡愛を隠さない。政令市を対象としたアンケート調査「市民のプライド・ランキング」でもほとんどの項目で福岡が1位ですからね。

窪田:飲み会の場でも、福岡をもっと良くしたい、と言う人が多いですよね。

そういう人が周りに多いので仕事もパフォーマンスが上がりやすい。そういうところに引き寄せられていく人が多いのだと思います。

 

 

コンパクトな街だから、争わない生き方ができる

‐内田さんは福岡生まれ福岡育ちなんですよね。外に出たいと思ったことはないんですか?

内田:考えたことはありますけど、やっぱり福岡が好きなんです。自分の住んでいる街が好きで、この街の発展につながる仕事がしたいと。

‐それはよそと比べて、ということですか?

内田:よそと比べてと言うより、単純に福岡が好きですね。都市と自然のバランスがちょうどよくてとても暮らしやすい環境ですし、リフレッシュにも最適です。

買い物スポットや水族館などの娯楽施設から、海、山、ゴルフ、温泉などの自然レジャーまで多彩な楽しみ方ができるので、休日の過ごし方には困りません(笑)。

それに東京と比べると通勤にかかるストレスが全然違うと思いますよ。平均通勤時間が30分以内の人が約半数ですし。ご飯もおいしい(笑)。

‐それは大事ですよね(笑)。窪田さんは東京からのIターン移住ということですが、元々ご出身が宮崎でしたっけ。違いを感じることはありますか?

 窪田:人とのつながりもコンパクトなので、すぐつながることですかね。

共通の友人が多いので、つながることが嫌な人はうっとうしく感じるかもしれないんですが、クリエイティブ業界はコミュニティ活動も盛んだし、同業他社ガチガチにやり合う争いが起きない、というのは面白いと思います。奪い合うよりも一緒にやる、という。みんな仲がいいからならではですよね。

‐そんな距離の近さは、子育て環境にもいい影響がありそうですね。

内田:FCCに登録いただく方は独身が多いですが、一方で「子どもが生まれた」「子供が小学校に上がる」などのタイミングで移住してくる方もいらっしゃいますよ。

 

 

最初に“福岡”となるように

‐これまで移住転職支援に取り組んできてよかったことを教えてください。

内田:福岡に移住された方が元気で活躍している姿を見られることですね。

移住・転職はその方にとって人生の転機となる出来事ですので,そのような重要な機会に携われることをありがたいと思う一方で,責任の大きさも感じています。

だからこそ,移住された方の生き生きとした姿を見られることが何よりも嬉しいです。

そのためにも,転職先のミスマッチがないよう,丁寧な相談対応やマッチングを心がけています。また,移住後の不安を軽減できるように移住してきた方の同窓会なども企画しています。

窪田:FCCを通じて福岡に来た人から「移住転職を考えるときに、今までは情報がなかなか見つけきらなかったけど行政が主導になって仕事情報をまとめたりしているのはユーザーとしてとても助かった」という意見をいただきます。

私自身も移住を考えたときはいろいろ情報がまとまっておらず見つけるのに苦労しました。

その経験を踏まえやっていることが、これから福岡に来たいと思っている方の役に立っていると思うと嬉しいです。

FCCでは現在70社以上の求人情報をまとめています。これから福岡市内への転職をお考えの方はぜひFCCを活用してほしいです。

‐とても熱い温度を感じますね。これからやっていきたいことはありますか?

内田:福岡ももちろんそうですが、魅力や可能性にあふれた地方都市はたくさんありますので、もっと多くの方に東京以外の暮らしに目を向けていただきたいですし、FCCや福岡がその先陣を切る存在になれるようこれからも頑張っていきたいです。

窪田:とりあえず福岡に来てください、と(笑)東京にいると仕事がないと言われますが、めちゃめちゃ面白い会社があります。

県外に住んでいるといい情報は見つけられていないだけで、福岡に来てみれば何とかなるので、リスクばかりを考えて動かないよりも動いてほしいと思います。

自ら動いてみないと何も変わりません。今回は11月11日のイベントで私たちが東京に行きますが、是非福岡のブースにお越しいただきたいと思います。そのまま一緒に福岡に行きたくなるような生の声をお伝えします!