70seedsで最近取り上げることが多いトピックといえばズバリ「ローカル」。このままローカル専門メディアになってしまうのか…!?という勢いです。

 

でもどうしてここまで取り上げるのかというと、純粋にローカルって面白いんですよね。場所が違えば人も違う。人も違えば出てくる話も違うし、考え方も違う。ローカルネタは底をつきません。

 

そんなローカルについて存分に語りつくすイベント「ローカルの未来を考える」のシリーズ第2回が2017年3月、有楽町MUJIにてふたたび開催されました。(以前のイベントの様子はコチラ

 

第一部では『大槌食べる通信』編集長の吉野和也さんと70seeds編集長の岡山によるトーク、第二部では更に『ソトコト』編集長の指出一正さんをお迎えして「ローカルのこれからの役割」や「ローカルでの生き方」をテーマに生々しい失敗談まで、ローカルに関するリアルをとことん語り尽くしました。

 

※それぞれへのインタビュー記事は下記から。

 

地方の「ゆるやかな衰退」、防ぐのは“よそもの”―『大槌食べる通信』の挑戦

 

東北へ移住した”よそもの”が見つけた、コミュニティの可能性-『大槌食べる通信』が挑む地方創生

 

ソトコト編集長に聞いた、地方で「幸せ」は本当に見つかるか?

 


 

『大槌食べる通信』吉野さん流「心の壁の乗り越え方」

 

第一部は吉野さんと70seeds編集長の岡山が登壇、参加者の皆さんとのトークセッションを行いました。「ローカルヒーロー」として活躍を続けている吉野さんに対し、地域の”リアル”を聞き出したい岡山からは生々しい質問が飛び交いました。その一部を紹介します!

 

会場:よそ者が地域にかかわるときに心の壁を感じると思いますが、どんなふうに乗り越えていったんですか?

吉野:人それぞれ距離感があると思うので、話しながら測っていくんです。傾向としては、地方のおじいちゃんおばあちゃんって結構踏み込んでいった方が受け入れてくれやすいんですよね。なのでいきなり自分の祖父母に話す感じで行くと、「いつでも来い!」みたいに受け入れてくれますよ。でも、中には踏み込まれるのを嫌う人もいるので、距離感を読み間違えると怒られたりもしますけど(笑)

その辺りは経験を積んでいくしかないと思います。僕もたくさん失敗して、怒られたりしてきたので、怖がらずにどんどん話しかけにいってください!

岡山:そういう基本的な心構えって地域差あったりするんですかね。大槌だといいけど、他の地域だと難しかったみたいな。

吉野:細かい違いはあれど、基本的な入り込んでいくスタンスっていうのは変えなくてもいいんじゃないかなと思います。去年、震災のボランティアで熊本に行って色んな人と関わりましたけど、そんなに意識して変えた部分はなかったです。

あと、このスタンスは海外でも通用するんじゃないかと思います。なぜかというと、僕の大槌刺し子プロジェクトの始め方が、アフリカの地雷撤去に関わるNPOとプロジェクトの始め方が一緒だという言われたことがあるんですね。現地に入って、何が起きているのかを実際に聞いて、相談して、何をやるのかを組み立てていく…このプロセスはどこの国で何を始めるにあたっても同じなんだと教えてもらいました。

岡山:なるほど…国を超えて一緒なら日本国内でも、と言えそうですね。

会場:ローカルで生きるリアルってどんなものがありますか?

岡山:どうでしょう。これは吉野さんの失敗談みたいなものが聞きたいですね。

吉野:そうですね…僕はこんなことがありました。 地元で影響力のある3人(A,B,Cさん)がいて、AさんがBさんについて言った小言を聞いて、親切心でBさんに言ったら、なぜかCさんがそれをAさんに注意して、3人が少しもめちゃったんです。これは、空気を読んで「ここだけの話」を察知しなくちゃいけないということですね。むやみに誰かに言ってしまうと、もめちゃったりすることがあるので…注意しなければいけないことだと思います。

あと、地域で関わるうえでとにかく大事なことは、何か所かお話を聞ける仲の良い人を作るということだと思います。一か所だと見方が偏ってしまったりするし、地域の中で立場が違ういろんな人と仲良くなっておくと、地域の中で動いていくときにスムーズにいくんじゃないかなと思います。

岡山:なるほど…でもそういった居場所を作るのって相当コミュニケーション能力が必要なイメージですが、吉野さんは元々得意な方だったんですか?

 

吉野:そんなことないです(笑)でも…必要に迫られて、大槌の皆さんに必要なものを届けたいという一心で話を聞いていったのが始まりで、それを続けていくうちに話を聞くのもうまくなったんじゃないかなと思います。あと、刺し子のプロジェクトをしていく中でラッキーだったのは、仲良くなったのが主におばあちゃんだったっていうのがあると思います。

岡山:と言うと?

吉野:地方のおばあちゃんって、家庭ですごい力を持ってるんですよ。僕は刺し子で200人くらいのおばあちゃんと話したんですけど、その「刺し子ネットワーク」が地域で動いていくうえでプラスになったんじゃないかなぁと思います。

岡山:なるほど。ではおばあちゃんを巻き込むというのがミソですか?

吉野:女性ならおじちゃん。無条件にかわいがってもらえるので(笑)男性ならおばあちゃんですね。

こんな調子で、普段なかなか聞くことのない話が繰り広げられた第一部。少人数開催ならではの距離感で、密度の高いセッションになりました。続いてはさらに多くの方が集まった第二部の様子です。

 

ソトコト編集長に聞く、地方での役割の見つけ方(第二部)

 

 

第二部は雑誌『ソトコト』編集長の指出一正さんを加えて、「ローカルの未来」について語っていただきました。イベントの中盤では指出さんが先日出版した本のテーマでもある”ローカルヒーロー”について、とても面白い話が聞けたのですが、それは本を読んでもらうとして…指出さんと会場の参加者の皆さんとのセッションの様子をお伝えします!

 

 

 

会場:これからの地方の役割って何でしょうか。

指出:教育の場所じゃないでしょうか。人間の手では到底作り出すことのできない“自然資本”をたくさん持つローカルができることはいっぱいあります。特に教育という面、単に算数の解き方などのテクニックではなく、情操面、メンタル面や、自然との距離の作り方、間合いの詰め方とか…そういったものを学ぶことに、中山間地域はすごく秀でてるんじゃないかと思っています。

岡山:ありがとうございます。それでは次の質問です。

会場:地域で活動をしていくうえで、地域の方々との関わり方はどうしたらいいですか?

岡山:その土地に根差していない人、かつ若者だけで活動していくときに、こういった悩みが生まれやすそうですね。どうしたらよいのでしょうか。

指出:僕は地域おこし協力隊で活動されている方ともたくさん会いますが、うまくいっている人と、残念ながらそうでない人がいるんですよね。それは何が違うかというと、すごく簡単な論理があるんです。それは、一番最初にその地域に来た時に、一番最初に挨拶すべき相手を間違えないようにするということ

行政に「どの人から挨拶したらいいんですかね?」と聞いておいて、最初に町の中心の十傑に先に手早く挨拶をしちゃう。これが大事なんです。そうすると「お前わかってるじゃないか!」と。「挨拶をしない人間が嫌いだ」というウェットな部分も地方には残っていたりするので、それを根に持たれてしまうと活動に影響が出てしまうかもしれない。なのでまず、「これからよろしくお願いします!勉強させてください!」ってハキハキ挨拶するのが結構大事ですね。

岡山:なるほど。挨拶はどこの世界でも大切ですよね。次の質問です。

会場:移住後、地域の中で役割を見つけていくには??

岡山:地域に移住する人も増えていますが、移住で終わらず、その地域で役割を見つけていくことが重要なのかなと思います。フワッと地域を変えたい…というのではなく、地に足をつけて、自分の役割を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。

 

指出:実は最近、移住に対する熱が落ち着いていっている気もするんですよね。そうは思えないかもしれませんが、これはいい意味で。地域の魅力が落ちていってるのではありません。ますます地域に関わりたい人は多くなっている中で、移住することがゴールに終わらず、移住をした後にそこで自分に何ができるのか、次のステップを探している人が増えているんですね。

じゃあ何をやったらいいかっていうのは、まず人を巻き込もうとしないこと。まずは巻き込まれることが重要です。とにかく巻き込まれて、誰が何を必要としているのか、何に困っているかを知ることがです。そうやって地域の動きに参加していくうちに、自分がやりたいことと、地域の住民が必要なことが理解できて、どこかで噛み合ってくるんじゃないかなと思います。

このあたりは第一部でお話した吉野さんの「住民と関わる心構え」の話と重なる部分がありますね。やはり日本中で共通しているということなのでしょう。

 

地方はワンダーランド

 

 

イベント終盤。最後にまとめとして指出さんからローカルの魅力を語っていただきました。

 

 

指出:今日は本当にありがとうございました。今日のようなイベントをおふたり(吉野さん、岡山)のような若い人たちがやってくれているというのが、社会が変化したなぁというのを感じて本当にうれしく思います。

今日の皆さんは、ローカルに興味を持って来てくれたと思います。そんな皆さんに伝えたいことは、地域を自分事に考えて動いていくって本当に面白いということです。東京では成し得ないけれど、ローカルではできることっていっぱいあるんです。船も手に入るし、島も手に入るし、ビルも手に入る。僕なんか宮司になれって言われたんですよ(笑)。そんな感じで、突拍子もないことが待ってるのが日本のローカル。本当にワンダーランドだなと思うんです。

映画のセットなんかより遥かにリアルな街並みが残ってるし、ファンタジーの世界の住人のような信じられないくらいチャーミングなおじいちゃんやおばあちゃんがいっぱいいます。東京では見たことない元気いっぱいな住民の方々がたくさんいますから、そういう方たちにも触れあって、これからみなさんがローカルの魅力を味わってもらえれば幸せです。今日はありがとうございました。

 


 

ローカルはワンダーランド…指出さんのローカルへの熱い想いの余韻を残して、イベントは終了となりました。参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。

 

さて…ここまで読んでくださった方の中に「こんな風に自分のローカルへの疑問を答えてくれる講師がいるイベントに参加したい」と思った方も多いのではないでしょうか。70seedsと大槌食べる通信では、そんな方々に向けて今まで取材してきたローカルヒーローの方々を講師に招いた「ローカルでの生き方」をテーマにした寺子屋を開校予定です!

 

詳細は後日70seeds内で紹介する予定ですので、お見逃しなく!!

 

※本文中でも登場した、指出さんの著書『ぼくらは地方で幸せを見つける』はこちらから購入可能です!