東京から遠く離れて暮らすことだけが「移住」ではありません。今回は東京から電車で30分の距離に位置する横浜市でのワークライフを提案します。
1859年に開港して以来、外国の文化を積極的に取り入れてきた横浜。そんな150年前のイノベーターたちのDNAは、現代にも受け継がれています。
横浜でのビジネスについて、横浜市経済局の高木秀昭さん(左)と大橋直之さん(右)にお話を伺いました。
“東京にこだわらない働き方”を推進する「OFF TOKYO」。70seedsも主催者の一員として関わるこのプロジェクトとの連動コンテンツとして、IT先進自治体の取り組みをご紹介します!
東京との距離が近いからこそ、アイデンティティーを出していきたい
‐横浜は、ビジネスという観点から見るとどんなエリアですか。
市内には大規模な研究開発拠点の集積が進んでいます。日産自動車さん、富士ゼロックスさんはもちろんのこと、みなとみらいエリアには次々と企業進出が決まっています。
京浜急行さん、資生堂さん、LGさん、コーエーテクモゲームスさん、村田製作所さん……。特に2020年前後にかけて都市型R&D投資が続々と竣工します。
‐すごいですね。企業さんは、横浜市民の方々とどんな関係を築こうとしているのでしょうか。
先ほどご紹介した企業さんから「他社やお客様との協業で新たな価値を生み出していきたい」という声が聞かれています。
新高島駅周辺はお客様と研究者が直接対話できるようなスペースを作る企業もあり、特徴的なエリアになってくると思います。
‐働く場としては、どんな環境ですか?
例えば、就業者全体に占める研究職・技術職の方の割合は、東京都区部で5%程度に対して、横浜市は8%程度と高いんです。
もともと製造業の多い土地柄でもあって、そういう仕事を選ぶ方が多いのではないかと思います。
‐東京から電車で30分程度の距離にある横浜。これまで「移住」というイメージはあまり持っていませんでした。
多くの市民の皆様が毎日東京で働いています。横浜市の人口は2019年がピークでそれから減っていくという試算が出ていますが、職住近接のニーズも高まっており、横浜にもっと働く場が増えることで、いい循環ができてくるのではないでしょうか。
一方で、東京に近いからこそ、街の個性を押し出すのが難しいというのは感じていますね。そのためにも、横浜のアイデンティティーを前面に出していければ良いと思っています。
大企業もベンチャーも。一体となって盛り上げていくまち
‐街のアイデンティティですか。横浜市はどんな街を目指しているんですか。
「ヨコハマ イノベーターズ コミュニティ」というコンセプトを進めています。技術者・研究者・起業家・学生など多様なイノベーター同士がつながって、活き活きと働く街。
社会のニーズにマッチする挑戦を、地域ぐるみで応援する環境がある。イノベーションが日々生まれるような、そんな街を目指しています。
‐具体的な取り組みとしては。
一例として、「ガジェットまつり」というイベントを民間企業と一緒にやっています。
ロボットやVRを開発した人たちに、自身で作ったものを持ち寄って出展いただき、エンジニアがゆるやかに交流する場です。
昨年は約1000人の来場者数がありました。今年はさらに拡大して、11月17日・18日に開催する予定です。
‐どんな人に来てもらいたいですか。
市内で働いている方はもちろんですが、横浜に住んでいて、東京に通勤している方にも仕事帰りに気軽に寄っていただければと思っています。
‐昨年の反響はどうでしたか?
自分が開発したものへの思いを語っている開発者たちが嬉しそうにしている姿が印象的でしたね。
来場者の皆様からも「雰囲気がいい」「斬新な発想は参考になった」「みんなでイノベーションを盛り上げていきましょう」などの声を多くいただきました。そういう意味ではものすごく手応えを感じましたね。
受け継がれるイノベーターのDNA
‐皆さん、横浜のどんなところに惹かれて集まってくるのでしょうか。
最近東京から移ってこられたベンチャー企業さんからは「横浜の歴史に惹かれて、横浜で開業した」という声をよくいただきます。
横浜は150年前に開港して、世界から新しいものがきたり、逆に日本から世界へ発信をしたりした場所です。
今で言うイノベーターのような人たちがたくさんいました。そんな歴史と自分たちのビジネスを重ねている人が多いのではないでしょうか。
「自分のビジネスを世界に向けて発信していくのに、横浜のイメージがぴったりだった」なんていう方もいらっしゃいました。
古いビルでもリノベーションをして、格好よくオフィスを構えているベンチャー企業さんも増えてきています。
‐企業誘致をしてきて嬉しかったことを教えてください。
誘致した企業の従業員の方に大変喜んでいただけたことが嬉しかったです。「来てみるとやはりすごくいい環境だった」と。
みなとみらいなど、仕事の後でもショッピングができて、また少し足を伸ばせば野毛などの居酒屋もたくさんあり、良い環境だと思います。従業員の方々に評価をしていただいて、すごくハッピーだったという話を聞くと、よかったなと思います。
企業さんを誘致するのはすごく大事なんですけれども、その先、そこで働いている人がいかに楽しめて良い生活を送れているかが大切ですよね。
‐住んでる人の生の声はなかなか聞けないですよね。今後やってみたいことがあればぜひ。
横浜には、海や山など自然が身近にあり、子育てにも適した環境です。横浜に住み、横浜で働く……。
仕事ではイノベーティブな環境があり、通勤時間が短くなったぶん充実したプライベートな時間を過ごせる。そうしたライフ・ワークスタイルが満たせる街になっていくための取り組みを、様々な方とともに進めていきたいと思っています。
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