不二家のキャラクターでありミルキーのパッケージや人形でおなじみの「ペコちゃん」。



終戦直後に誕生した「ペコちゃん」は、誕生から60年以上が経った今でも、老若男女問わず、非常に多くの人から愛されている存在です。



そんなペコちゃんの魅力を感じられるイベント「ペコちゃん展」が、神奈川県の平塚市美術館で9月13日まで開催されています。



今回は展示会を開催されている平塚市美術館の学芸員勝山滋さんにペコちゃん展についてお話を伺いました。

伊藤 大成
1990年、神奈川生まれ。島とメディアをこよなく愛する25歳.

‐まず、ペコちゃん展を開催するに至った経緯を教えてください。

平塚市美術館としてはかねてから、地域の企業とコラボレーションして美術館で催しを行いたいと考えていました。

平塚は戦時中まで軍事用の火薬工場があったのですが、それらの工場が終戦後一気になくなり、余った広大な土地に不二家や日産車体といった企業の工場を次々と誘致し、それらの企業と戦後の発展を共にしてきたという背景があります。

そんな平塚において、市民に馴染みのある企業、不二家と催しをできれば、という話になりまして、不二家のキャラクターである「ペコちゃん」を取り扱ったイベントを行う事になりました。

‐なるほど。平塚という土地ならではの展示会ということですね。

はい。そして、ペコちゃんといえば、単なる企業キャラクターの枠を超えた「国民的アイドル」として、多くの人に知られています。

ぺコちゃんは誕生から60年近くが経っていて、今の日本が振り返るべきである「昭和」を見てきた存在なのです。

今回「ペコちゃん展」では、ペコちゃんを通して、日本が歩んできた歴史や文化に触れてもらえれば、と思っています。

‐ペコちゃんも戦後の歴史をずっと見てきている、と。

そうなんです。今回の展示会にも工夫がしてありまして、まず展示会の入り口には2体のペコちゃん人形があるのですが、その次に展示されているのは、先の大戦にて孤児になった子供が、ペコちゃん人形の持っている商品を狙っている写真です。

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そして、その先にあるには1960年代の華やかそうな銀座の写真です。

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ペコちゃんは、食べることが精一杯だった子供がいた時代から高度経済成長、そして現代に続く歴史の流れを見てきています。

そんなペコちゃんが見てきた歴史の追体験をしてもらうことで、お客さんに「ペコちゃん展」はただかわいいだけの展示会じゃないぞ、とびっくりさせたかったんですよね。

‐なるほど。確かに、単にペコちゃん関連のアートを展示しているだけでない。それの以上の物を感じました。

今回の開催にあたって展示物のラインナップを非常にも心がけました。

終戦直後の写真や昔のペコちゃんから始まり、最後はロボットと現代アートの展示で終わるという歴史の流れを感じて頂くのに加えて、実際に触って頂けるペコちゃん人形、昔のペコちゃんのCM映像の展示、現代のアートの展示など、普通の人が見ても楽しいし、マニアにも唸って頂けるような展示をしようと。

‐実際に訪れているお客さんからの反響はどうですか?

当初は、我々も夏休みの企画として立ち上げた経緯がありました。

しかし、蓋を開けてみると、お子様はもちろん、昔からペコちゃんが好きだった5,60代の方々にもお越しいただいています。来場者も3万を超える勢いになっていて、普段1万人くらいが来場すればヒットと言われる美術館の展示会では、異例の大ヒットと言えます。

ペコちゃんの予想以上の人気に、我々も驚かされていますね。

‐良い意味で予想を裏切られた、と。

はい。そして面白い話がありまして、「ペコちゃん展」にアートを出展している芸術家の一人が、ペコちゃんには叶わないと言っていました。

なぜなら、ペコちゃんは「昭和」を背負っている存在であるのに対し、自分たちは時代を背負っていないというのです。

‐ペコちゃんが昭和を背負っている、深いですね。

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今回の展示会を行うことで、私自身もペコちゃんに対する知見が深まっただけでなく、キャラクターの向こうにある「戦後の昭和日本」を感じることができました。

ぜひこれから来て頂くお客さんにも、単なる企業のキャラクターではない「ペコちゃん」の知られざる魅力に触れて頂ければ、と思っています。