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北海道とともに育った「バターサンド」六花亭の戦後史

 

 

創設者・小田豊四郎が先輩から受けた助言

 

 

北海道は銘菓の宝庫ですが、その中でも特に気候的にもお菓子作りに恵まれているといわれているのが、十勝地方。その中心都市である帯広で誕生したのが、六花亭(ろっかてい)。『マルセイバターサンド』『ストロベリーチョコ』などの人気商品を生み出した、北海道はもちろん日本中にファンが多い銘菓製造会社で、ホワイトチョコレートを初めて日本で生産したことでも知られています。

 

六花亭はもともと、帯広千秋庵という名前で営業していました。これは、札幌に本社を置く札幌千秋庵(現在の千秋庵)から1933年(昭和8年に)に暖簾分けされたものです。最初は、札幌千秋庵社長・岡部式二の弟・岡部勇吉が経営していましたが、体調不良のため1937年(昭和12年)に甥の小田豊四郎に引き継がれました。その豊四郎が、六花亭の創設者となるわけですが、その間に戦争が起こり、さまざまな出来事を経て今の六花亭があるのです。

 

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その帯広千秋庵、豊四郎が引き継いだ当時は非常に経営が苦しく、豊四郎とその母の二人でその日暮らしをしていたそうです。そのような中、1939年(昭和14年)に豊四郎は旧知の先輩から500円(現在の価値に直すとおよそ220万円)を借りることになりました。豊四郎はそのお金を別の借金の返済に充てようとしましたが、先輩から「借金の返済よりも、(お菓子の原料である)砂糖を買いなさい」との言葉に従いました。

 

実はこの砂糖の大量購入が、帯広千秋庵にとってプラスに働きます。というのも、日本は太平洋戦争にまっしぐら、価格統制令などにより砂糖に予備購入をしていなかった同業他社が砂糖不足に陥ってしまったのです。しかし、豊四郎のもとには砂糖が豊富にあったので、地域一番店へと躍り出ました。

 

 

戦争を乗り越え、日本初のホワイトチョコレートを製造・販売

 

 

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とはいえ、好事魔多しとはこのこと。1943年(昭和18年)に豊四郎は招集され、帯広千秋庵の店舗は偕行社(陸軍の部隊駐屯地外の集会所としてスタートし、軍装品などを販売していた会社。戦後に一時解散したが、現在は戦没者の遺族の支援などを行っている)の売店となり、豊四郎の母と妻はその家賃で生活していたそうです。もちろん、菓子を製造する機械もすべて強制疎開、帯広千秋庵としては営業・製造ができませんでした。

 

そして終戦。豊四郎は1946年(昭和21年)6月に帯広に戻り、帯広千秋庵の運営を再開しました。統制品は使用できないので、蜂蜜・たまご・牛乳だけで作ることのできるアイスクリームのみの販売でしたが、物資不足の中好調な売り上げとなりました。そして、フスマ(麦の製粉時に出る糠)やかぼちゃの餡でつくった饅頭など菓子の種類を増やしていき、帯広千秋庵初のヒット商品となる『ひとつ鍋』を1952年(昭和27年)に販売。

 

そして、1968年(昭和43年)には日本で初となるホワイトチョコレートの製造・販売をスタート。帯広という場所は、低湿で水・空気がきれいなことから、チョコレートを作るには最高の環境といわれています。良質なココアバターと北海道のミルクをたっぷり使った滑らかな口溶けに仕上げたホワイトチョコレートは徐々に人気を博して、1977年(昭和52年)に札幌進出を機に千秋庵の暖簾を返上、六花亭という新たな屋号で再スタートを切りました。

 

 

「北海道を代表する菓子屋になるように」という願いを込めた社名

 

 

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この六花亭という名前の「六花(りっか)」とは、雪の結晶のことです。社名を変更するにあたり豊四郎は東大寺管長(当時)・清水公照に相談、「北海道を代表する菓子屋になるように」という願いを込めて、北海道の代名詞・雪にちなんだ社名にしました。
現在の六花亭は、帯広・札幌はもちろん、全道で72店舗を展開する「北海道を代表する菓子屋」に成長しました。そして蔵書約7,000冊を誇る喫茶「六花文庫」や「ふきのとうホール」「真駒内六花亭ホール」など演奏会を行う会場も展開しています。

 

このように菓子はもちろん文化全般に尽力している六花亭ですが、現在の基盤は戦時中に豊四郎が先輩の助言に助けられたことが大きく影響しているのです。

 

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橋場了吾 Ryogo Hashiba

北海道観光マスター

1975年、北海道札幌市生まれ。 2008年、株式会社アールアンドアールを設立。音楽・観光を中心にさまざまなインタビュー取材・ライティングを手掛ける。 音楽情報WEBマガジン「REAL MUSIC NAKED」編集長、アコースティック音楽イベント「REAL MUSIC VILLAGE」主宰。 http://sapporo-mn.jugem.jp/