突然ですが、「竹」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。かぐや姫?タケノコ?それとも京都嵯峨野の竹林の道?いずれにしても、風情や日本らしさとセットで思い起こされることが多い「竹」、決して悪いイメージはないはず。


ところがいま日本の山では、この「竹」をめぐって深刻な問題が起きているのだそうです。それが「竹害」です。


そんな日本固有の問題といわれる「竹害」について、ビジネスとアートの視点から解決に取り組んでいるのが、株式会社TAKESUMI。元々「伊豆シャボテン公園」を運営する上場企業の社長を務めていた小松さんと、約20年にわたり竹炭インテリアを作り続けている南さんの2名の出会いから生まれた取り組みについて、代表取締役社長の小松さんにお話を伺いました。

岡山 史興
70Seeds編集長。「できごとのじぶんごと化」をミッションに、世の中のさまざまな「編集」に取り組んでいます。

日本の山を蝕む「竹害」って?

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‐小松さんは竹炭でインテリアをつくっていると聞いたんですが、どんなものなんですか?

いま販売しているのは、竹炭を使ったお祝いのインテリアで「祝い竹炭」というものです。

デザイン性もそうですし、消臭や殺菌という竹炭が元々持つ効果もあって、経営者の方を中心に喜んでもらっています。

‐そもそも竹炭を使ってインテリアをつくろう、という発想が珍しいですよね。どうして手掛けることになったんですか?

「竹害」って知ってます?

‐竹の…害?

そう、日本固有の問題なんですが、これが今結構深刻になっているんですよ。竹林とか見たことありますか?

‐ええ、地元の山にあったような…。

竹ってぐんぐん根を伸ばしていくので、他の樹木が育たなくなってしまったり、地盤が緩む原因になってしまったりするんですね。

そんな風に、いま、日本の各地で山が竹だらけになることによる「竹害」が問題となっているんです。

 

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‐それだけ竹が生えているなら、他にも伐採して商品化しようという動きがありそうですが…。

それがないんですよ。

‐えっ?なぜなんですか?

「竹炭」って聞いてどんなイメージがありますか?

‐消臭とか殺菌とか。

そうですね、よく知られているし、100均なんかでも売っていますよね。

‐はい、なので商業化されていないというのが意外でした。

だから、なんです。「竹炭」のイメージが消臭なんかの機能に偏ってしまっていることが、まさに問題だったんです。

 

 

竹がビジネスにならなかった理由と「デザイン」の力

一時期、竹炭ってブームになったでしょ?消臭剤なんかにも「竹炭の香り」とか出たり。実は、あのブームが竹炭のイメージを狭めてしまったんですね。

‐確かにほかのイメージはないですね。

そのブームはやがて、竹炭の「機能」をもっと安価に提供できないか、という考えにつながり、化学製品で代替されるようになったんです。

そもそも竹を切り出して炭にして販売するって、とてもコストがかかることなんです。

それが、化学薬品に取って代わられたり、100均で安く売られるようになってしまったら、とてもじゃないけど、コストが見合わないんですよ。

‐そう言われてみると、たしかにその通りですよね。

もちろん林野庁も竹の伐採予算を組んで対策の支援なんかもしています。ですが、そちらもなかなか進んでいないのが現状です。

‐そこであえて小松さんが飛び込んだのにはどんな理由があったんですか?

本当にたまたまなんです。別の仕事で、デザイナーをしている南(現TAKESUMI代表取締役副社長)と出会って、話をしていたら「約20年間竹炭インテリアをつくってるんです」って。「何それ!?」って食いついちゃいますよね(笑)。

‐たしかに(笑)。

 

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最初はとにかく「オモシロそうだぞ」と。

それで竹害のことなんかも知って、市場規模なんかも考えてみると「これはうまくいきそうだ」と思ったんです。

‐それはどこで判断したんですか?

3つの要素があって、1つは「竹炭」という存在がそもそも知られていること。2つ目はその機能・効能が知られていること。3つ目は社会性があること。

竹害の問題って、林業とも絡んでくるし、炭焼き職人の後継者不足という問題もある。

さらに売り手も商品として扱えていない。これは社会的に重要だなと。

‐とはいっても、一度ブームが去った今、売れない原因は先ほど自身でも語っていた通りですよね。

そうなんです、だからこそ南との出会い、「デザイン」というこれまで「竹炭」になかった要素と出会えたことが大きいんです。

 

炭が折れても、心は折れなかった

‐「デザイン」とは?

これまで「竹炭」が機能だけに注目されていたというのはお伝えした通りです。

だからこそ、もっとコストがかからないものに代替されてしまった。

ただし、そこに「デザイン」という付加価値がプラスされることで、価格が適正なものになっていくんです。

そして、それが約20年にわたり取り組んでいた南だからこそできることだったんです。

‐逆に、これまで職人さんたちが取り組んでこなかったのはなぜだったんですか?

まずは単純に作るのが難しいんです。炭にするのと同時に、強度も保たなくてはいけない。

これまでインテリアをつくっていたわけではないので、そのクオリティで製品をつくるのが難しい。

最初に出来上がったものはよく折れてしまって、「また折れたか…」とショックを受けていましたね(笑)。

‐そんなに甘くはなかったんですね。

また、別の視点ですが職人さんたちのもとにはブームのときに、機能に注目したたくさんの提案が持ち込まれたそうです。

でも、ブーム終焉と同時に皆去ってしまった。そういったことが続いて職人さんの心が折れてしまったんですね。

彼らは年齢も上がってしまっているし、子どもに継ぐこともできていない。対して私たちは、きちんと職人さんに可能性を見せることができています。

‐どのように?

まず、市場規模ですね。お祝いといえば胡蝶蘭ですが、現在の市場規模は約300億円と言われています。

「祝い竹炭」にはそれだけのポテンシャルがある。また、竹炭って海外の方にもとても受けがいいんですよ。黒い飾り花なんてほかにありませんからね。

‐なるほど。

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実際に昨年谷中銀座で海外の方をターゲットにテスト販売を行ったときも「Cool!」と好評でした。

そんな風に、ゆくゆくは世界に販路をつくっていけることを考えると、産地の保全から始まって職人さんや小売り含めて、大きな可能性を感じてもらえるんです。

そういったことも含めて「竹害」の啓もう、解決につながればと思っています。

 

上場企業の社長として育まれた「社会的意識」

‐小松さんがそこまで「竹害」にコミットできるのはなぜなんでしょう。

社会的価値への意識が大きいですね。それも、ビジネスを通じて解決するということへの想いでしょうか。

以前社長を務めていた上場企業が運営する伊豆シャボテン公園では年間130万人のお客様がいらっしゃって、その方々に貢献するためには「公共性」が当然求められていますから。

‐「公共性」とは。

自分自身オーナー社長ではなかったので、自分のためにビジネスをやるというよりは、上場企業の社長としてお客様や株主や、顔の見えない不特定多数のために仕事を通じて貢献する、ということばかり考えていたんですよ。そういう社会的意識はその経験あってこそでしょうね。

‐変な話、別に竹炭でなくてもよかったんじゃないかなとも思いますが、なぜそこに照準を合わせることになったんでしょうか。

正直な話、いいテーマと出会った、ということかなと思っています。だって「“約20年”竹炭アーティストやってる」って面白くないですか?(笑)

 

しかもそれがビジネス的にも可能性を持っていて、社会のためにもなる。

‐はい。

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たとえば、ソーシャルビジネスやっている人、待機児童の問題だとか子どもの非行の問題とか、みなさん何かしらの出会いから生まれていると思うんですよ。

自分は縁あって竹炭アーティストと出会った、可能性を感じた。劇的でなくてすみません(笑)。

‐そういう「自分なりのテーマ」を探している人って多いと思うんですが、出会いってどうやったら掴めるんでしょうね。

常に社会性を志向していないと出会えないことなのかもしれません。

知り合いがやってることを聞いてそれがテーマになると気付けるかどうか。きっとその種は世の中にあふれているんです、気づいて取り組めるかどうかなんだろうなと。

‐常に社会性を志向すること…確かにそうですね。最後に今後の展望について教えてください。

10月3日から「飾り竹炭」のECサイトを正式に開始します。このECサイト「飾り竹炭」は、お気軽にご家庭やオフィスに置くことができる竹炭インテリアのシリーズ「飾り竹炭」を販売するもので、より広く楽しんでいただけるものになっていますよ。

あとは日本橋三越さんで、「飾り竹炭」を作るワークショップさせていただく予定もあります。

TAKESUMIは「竹害」という社会的課題を知ってもらうという啓もう活動でもあるので、社会にどう知ってもらうか、社会性を軸にして世の中に情報発信していくことに力を入れていきたいですね。

 


 

 

TAKESUMIでは、10月3日(月)から、「飾り竹炭」のECサイトを開設します。また、10月23日(日)14時00分から、日本橋三越本店本館7階のHajimarino cafe(はじまりのカフェ)で、竹炭インテリアのワークショップ「【はじまりのカフェ】竹炭インテリアを作りましょう!」

 

 

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