世界中が大きな変化を経験した2020年。あなたにとって、今年はどんな1年でしたか?

医療、経済、政治、そして生活。現在も様々な立場から、それぞれの現実と向き合っている方々へ心からの感謝と尊敬を捧げながら、編集長の岡山が来年に向けた70seeds編集部の思いを綴ります。

岡山 史興
70Seeds編集長。「できごとのじぶんごと化」をミッションに、世の中のさまざまな「編集」に取り組んでいます。

「次の70年」5年目を迎えた今年のこと。

70seedsのコンセプトを語るとき、常に口に出すキーワードがあります。それは「戦後70年」という、世界の節目。

ウェブメディアとしての『70seeds』が生まれた2015年は、太平洋戦争が集結してから70年を迎える年でした。1945年からの70年間で日本、そして世界は大きく変化を遂げてきました。

しかし、70年間で積み上がった仕組みが、このままでは持続できない状況になってきている――それがいま私たちの目の前で起きていることです。戦後、社会の隅々に浸透してきた「あたりまえ」を新しいものにしていく、そんな思いを込めたコンセプトが「次の70年に何をのこす?」でした。

そして「次の70年」の5年目となった今年。世の中は想像以上の変化にさらされることとなりました。これまで大手を振っていた「あたりまえ」たちが次々と置き換えられていく様子には、もちろん一部で混乱もあったものの、大きな流れで見たときには希望の色が濃く出ていたように思います。

70seeds編集部でも編集体制の刷新や、コロナ禍で居場所を守る「みんなで暮らしをつづけよう」プロジェクトの展開、ライター個々の視点から綴る特集『私の“平和”』など、挑戦的ながらある意味で原点に立ち返る試みが多かった1年でもありました。

そんな1年を経て、まさにいま、来年の道筋を考えています。

2021年の再挑戦ーー本当にのこすべきものとは?

これまで70seedsでは、編集部および書き手が「次の70年にのこしたい」と共感する考え方や取り組み、プロダクトについての取材・記事化に取り組んできました。

ですが、この1年を過ごしながらふと気づいたことがありました。それは、これだけ急激な変化が世の中全体に流れるなか「のこしたい/のこしたくない」と判断できないことのほうが多いのではないか、という問い。

ある一面から見れば素晴らしいことでも、別の面から見たら誰かの苦しみを生んでいる。実は、世の中にはそんな矛盾を抱えることのほうが多いはずだし、逆も然りではないでしょうか。

たとえば最近話題になっている「2030年ガソリン車の新車販売禁止」に向けた政府の動きと、自動車業界の反発。電気自動車は本当にエコロジーなのか。変化の過程で誰がどんな不利益を被るのか。考え始めると、こんな疑問が頭をもたげます。

「あれ?“新しいあたりまえ”ってなんだっけ?」

2021年1月からの特集では、自分たちが共感することだけではなく、共感すべきかどうかわからないことに対して向き合ってみること、ひとつひとつのテーマに対して自分たちなりにひとまずの解を見出すことを目指します。

「のこす/のこさない」「新しい/古い」「いい/悪い」ーーそんな二項対立を超えて考え続けること、グラデーションのなかでも自分の立ち位置を定めていくこと。そんなありかたを提示していくのが、「次の70年」6年目における70seedsの再挑戦です。

来年も、70seedsをよろしくお願いいたします!