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「母子家庭の7割が貧困」の裏にあるモンダイとは –3keys森山代表に聞く「戦後日本の子ども事情」(1)

「新しい貧困」という言葉が生まれて久しい。2014年7月に発表された平成25年国民生活基礎調査によると、日本における18歳未満の子どもの貧困率は16.3%と過去最悪を更新した。特にひとり親家庭の貧困率は世界的に見ても極めて高い状況となっている。

今回は「ボランティアによる学習支援活動」を通じたネットワークづくりに取り組むNPO法人3keys代表・森山誉恵氏のインタビューを全3回でお送りします。

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森山誉恵【もりやま・たかえ】(NPO法人 3keys代表理事)
1987年生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科在学中に児童養護施設で学習ボランティアを行う学生団体3keysを設立。2011年NPO法人化。

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※森山氏が手にしているフラワーについてはこちら

児童養護施設は、戦争孤児を預かる場所だった

 

―日本の児童養護施設の歴史を教えてください。

 

日本の児童養護施設は、第二次世界大戦後にお寺やキリスト教などの宗教法人が、戦争孤児を預かる場所としてつくったのがそもそもの成り立ちです。親を戦争で亡くした子どもを対象に誕生した施設でしたが、次第に貧困の他、虐待、親の育児放棄等の理由により長期に暮らす子どもが多い場所へと変わったことから、「児童養護施設」という名前に変わりました。

 

―なぜ、長期滞在先が必要となる子どもが増えたのでしょうか。

 

かつて存在していた「地域社会」としての機能が失われたことや、親自身がすでに社会から孤立してしまったことが関係しています。昔は、一時的にお金を稼げるまで施設に預け、復帰できる目処が立った時点での家庭復帰が前提にあったのが、今では親自身が虐待や貧困の二世代目、三世代目とも言われています。親御さん自身が親から十分に愛情や支援を受けられていないために、一時的な問題ではなくなっています。つまり、子ども以前に親自身がとても根深い問題を抱えているケースもあるのです。

 

―親自身の問題、ですか。

 

子どもを愛せない、愛し方がわからない、頼る親すらいないという連鎖が生まれている。そうすると、一年や二年、子どもを施設に預けたところで、環境が改善されない状況の下で育っている子どもが多く、そのような子どもは一回施設に入ると、18歳(児童福祉法が適用される最高齢)まで基本的には施設にいることを余儀なくされてしまいます。あるいは、子どもが出て行ってしまうケースも多いため、実質的には貧困の連鎖から抜け出す事が難しいと言われています。

 

−貧困の二世代目、三世代目が生まれていくにつれて、施設が求められている役割と機能も変化しているのでしょうか。

 

はい。昔は保育士の資格か教育免許を持つことが条件として十分だったかもしれませんが、今は虐待を受けたことによる心のトラウマのケアなど、複雑な子どもの問題に向き合う上でも、職員に専門的な知識が必要になってきています。また、質だけじゃなく、量の部分にも違いが出て来ています。

 

―というと?

一言で言うと、「家庭の代わりになる」ということです。自分だけを見てくれる人や、家族として受け入れてくれる存在を子供たちは求めているのに、職員の人員配置は変わってないために、戦争孤児を受け入れていた戦後と同様に集団で職員が子どもと向き合っていたりする。子どもたちが入所する背景は、戦後70年間でものすごく変わった一方で、施設の機能としては70年後の今も変わっていない。変わったのは施設の名称だけ、という状態が続いています。

 

―児童養護施設をテーマにしたドラマやマンガがここ数年話題になったことで、世間の関心は高まったように感じますか?

 

そうですね。ここ3年で「タイガーマスク現象」[1]やドラマ「あした、ママがいない」[2]の影響もあり、やっと変わり始めてきた兆しがあります。それまでは、子どもが置かれる現状だけが目まぐるしく日々変わっていました。戦後の社会状況変化と、サポート側の変化しない部分というのは、この業界でよく話題になる話です。ニュースに出てくるようになったのは、本当にここ5年くらいだと思います。

 

働いているにも関わらず貧困になってしまう

 

―日本の子どもの6人に1人が貧困というデータは、とてもショッキングですね。

 

はい。格差の2極化が本当に進んでいます。特に、母子家庭の貧困率が先進国の中でも日本は極めて高く、トルコに次ワースト2位です。

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要因には、女性の権利や就労環境が密接に紐づいていると言われています。日本は圧倒的に母子家庭の貧困率が高く、母子家庭の66%が貧困状態です。貧困にならない方がおかしい状況が今の日本の姿なのです。

 

―母子家庭に特有の課題があるということですか?

 

日本の母子家庭の母親は8割が働いていますが、働いているにも関わらず、貧困になってしまう現状があります。また、当然、稼ぎ手となる母親が働くと、育児放棄になりやすい。子どもと過ごす時間を増やしたくても、土日も働きに出かけ、ダブルワークをしないと経済的に成り立たないために深夜まで働き、ご飯を作りにだけ帰宅する家庭もある。それでは当然、仕事のキャリアアップは難しいし、長期労働も難しくなり、貧困から脱却することも困難になってしまう。これは、母子家庭のほぼ7割が貧困状況だとしたらその全てで起きてもおかしくはない問題です。

 

―これは日本だけで起きている現象なのでしょうか。

 

例えば、アメリカだと女性が養育費をもらうために権利をもっと主張したり、男女の就労環境の差が日本ほど大きくないと言います。ヨーロッパだと就労環境がそもそも整っていて、長期労働を前提にしていなかったりします。母子家庭の貧困と労働条件はとても繋がっているのです。

 

次回記事では、この「貧困」の問題に対して森山氏が3keysを通じて取り組んでいること、また現在感じている課題と展望についてお届けします。

 

[1] 2011年、震災の直前に世間を騒がせた現象のこと。梶原一騎原作の漫画『タイガーマスク』の主人公の名前「伊達直人」を名乗る何者かが、孤児院出身の彼が覆面レスラー・タイガーマスクであることを伏せながら、自分が育った孤児院にファイトマネーを贈り続けることから、ファイトマネーとしての寄付や物資を提供することが全国各地で起こった。

[2] 2014年に日本テレビが制作したテレビドラマ。児童養護施設を舞台に、様々な理由で親元を離れて暮らす子どもを描いた作品。脚本監修は、「高校教師」や「家なき子」の企画を手がけた野島伸司。