9月18日、国内外からの注目の中、安保法案が可決されました。これにより、同法案は6ヶ月以内に施行されることになり、賛成派からは安堵と喜びの声が、反対派からは一層の抗議の声がそれぞれ挙がっています。

 

今回の記事では、この安保法案について少し視野を広げ、国外からはどのように見られているのか、各国のリアクションについて報道を元にまとめました。日本における決定が、国際関係においてどのような影響を持つのか、考えてみるきっかけになればと思います。

 

 

支持派(米国、フィリピン、ベトナム、台湾など)

 

今回の安保法案の当事者でもある米国からは、日米同盟の強化および「積極的な役割」への高い期待の声が挙がっています。また、中国と南沙諸島問題で緊張関係にあるフィリピンなど、比較的米国との関係が強い東南アジアの国々も支持の姿勢を見せています。

 

米国国務省の声明:「安保法案の問題は日本の国内問題だ。米国は日本が日米同盟を強化し、地域や国際社会の安全保障活動でより積極的な役割を果たすことを歓迎する」

テレビ朝日ニュース

 

フィリピン外相の声明:「安全保障関連法の成立を歓迎する」

「フィリピンと日本との戦略的関係を強化する取り組みに期待しており、それは国際社会における平和と安定、そして繁栄に寄与することになるだろう」

NHKニュース

 

ベトナム外交学院戦略研究所の声明:「ベトナムは、地域と世界の平和と安定、繁栄のため、日本の積極的な役割を歓迎している」

「日本が地域と世界においてよりいっそう重要な役割を担おうとする決意の表れであり、日本が経済面だけでなく、国防面においても普通の国家に変わろうとする意欲の表れだ」

NHKニュース

 

台湾外交部の声明:「中華民国は、日本政府がその国際的責任を果たすよう期待する」「日本の国際的な安全保障に対する参加を促進し、同時に日米同盟を強化、深化させるものだ」

CNA

 

不支持派(中国、韓国など)

一方、この決定に対してネガティブな反応を示しているのが、中国、韓国といった国々です。近年の領土問題や戦後補償の問題など、従来のしこりを抱える両国は、特に日本と米国の関係強化、日本の国防体制強化に対する懸念を強く持っているようです。

 

中国国防省の声明:「日本の安全保障政策にかつてない変化があらわれ、平和憲法の制約を乗り越えた。冷戦思考に固執し、軍事同盟を強化し、海外での兵力の運用を拡大しようというたくらみは、日本国内のほか、アジアの隣国や国際社会の強い憂慮を引き起こしている」

NHKニュース

 

韓国大統領府の声明「日本の防衛安全保障法案参院通過と関連して、日本政府はこれまで何度も公言してきたように、今後の防衛安全保障政策を決定し実施するにあたり、戦後一貫して維持してきた平和憲法の精神を堅持しながら、地域の平和と安定に寄与する方向に向かわねばならない」

「日本が集団的自衛権を行使するに当たり、朝鮮半島の安保と韓国の国益に関する事案については、韓国側の要求または同意がない限り、容認できないことをもう一度明確に伝える」

レコードチャイナ

 

まとめ

 

今回可決された安保法案については、つい「日本が戦争をする国になるのか否か」という議論に陥りがちですが、その議論の先には関係する「他国」があることを忘れるわけにはいきません。

 

日本を取り巻く海外諸国が日本に対して何を期待し、何を懸念しているのか。そしてこの法律が適用されるとき、日本はどのような振る舞いをすることになるのか。安保法案の正式名称でもある「平和安全」の実現に向けて、「世界の中の日本」が果たす役割について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

 

※各国の反応に関する出典はいずれも9月21日時点の報道に準拠しています。