日本有数の歴史を持つ磁器の街、佐賀県有田。そこでかつて製造されていた軍服用のボタンが、戦後70年を前に未使用の状態で発見されました。
戦後70年を迎えた昨年、そのボタンが現代を生きるつくり手たちの元に届けられました。「戦争につながるものづくり」の象徴だった磁器製のボタンに、それぞれの平和への願い・希望をこめて、アート作品として生まれ変わることになったのです。
それが昨年70seedsで取り上げた『HOPE fot PEACE』展。東京ミッドタウン(東京・六本木)の「つながるデザイン展」の一部としてSTYLE MEETS PEOPLE(同施設3Fインテリア&デザインフロアー)が企画・主催した同展示会では、複数のクリエイターがボタンを使ってそれぞれの表現に取り組み、「平和へつながるデザイン」を披露しました。
今年は、伊勢丹新宿に場所を移し、参加クリエイターも30名規模に拡大します。題して、『HOPE for PEACE/ボタンでつなぐ平和』展。今回、70seedsはこの展示会に開催協力という立場で関わっています。
70seedsの記事上では、ボタンに関わるいくつかの「想い」を紹介していきます。
戦時中物資が不足していく中、軍服のために作られたボタン。ボタンが発見された有田の「竹重クラフトタイル」三代目竹重雅文社長は、父竹重米雄氏が磁器のボタンをつくることになった背景について次のように語ります。
「ボタンと言えば、それまでは金属や貝でつくられるのが一般的だったなか、磁器でつくられるようになったのは、戦時中の代用品だったんでしょう。(国から)要請があったのか、工場が自発的に取り組んだのかはわからない。でも当時の職人は『お国のために』とつくっていたんでしょうね。」
それまでは一般の人々の生活に根差した食器や日用雑貨をつくっていた職人たち、急につくるものが変わってしまったことについて、葛藤はなかったのでしょうか。
そんな問いに対する竹重社長の答えはつくり手としてのプライドを感じさせるものでした。
「職人さんにしてみれば、いつもと違うものをつくって意外と楽しかったのかもしれませんね。使う人の生活を支えるために、ひとつひとつ手をかけてつくっていったわけですから。想いをもってつくったからこそ、今まで残っていたのだとも思います。」
今年400年を迎える有田焼の歴史。その歴史の中に確かに存在した、戦争とのかかわりを改めて考える『HOPE for PEACE』展。今、あたり前に享受している平和の大切さを語りつぎ、未来へとつなげるきっかけとして、ボタンを通し、ヒトとヒト、ヒトとモノ、モノがコトとつながっていくさまをぜひお楽しみいただけると幸いです。
『HOPE for PEACE』展
■PART I
日時 : 7 月 20 日(水) ~7 月 26 日(火) 10:30-20:00
場所 : 伊勢丹新宿店本館=センターパーク/ザ・ステージ#5
■PART II
日時 : 8 月 5 日(木) ~8 月 21 日(日)) 11:00-21:00
場所 : STYLE MEETS PEOPLE 東京ミッドタウン ガレリア 3F
協力 : 株式会社共立アイコム、竹重クラフトタイル、YUKI-SIS、70seeds(Story Design house 株式会社)
企画・主催: STYLE MEETS PEOPLE(東京ミッドタウン六本木)http;//stylemeetspeople.com
■参加クリエイター: ※参加者は変更になる場合がございます。
アート、デザイン、テキスタイル、ファション等、個人、企業のクリエイターが業界の垣根を越えて参加します。 ボタンの歴史、素材を背景に31名/社のそれぞれのクリエイターの個性、オリジナリティ、創造性豊かな作品 (展示販売致します)には過去・今・未来を平和へとつなぐメッセージがこめられています。
安座上真紀子(美術家) /安達聖子 (染織家)/池上ナミ(ペン画家)/井上セイジ (ファッションデザイナー)/内田喜基 (アートディレクター)/H. nao(ジュエリーブランド)/ SMP(インテリア&ライフスタイルブランド)/FSP(ファブリック企画)/ ㈱エミネント(紳士スラックス専門メーカー)/遠藤立野(ファッションデザイナー) / kinokoto キノコト(セラミック炭商品/ 北村奈津子(美術造形作家)/木村竜介(ジュエリーデザイナー)/斉藤友美恵 (陶芸家)/下元直樹(写真家)/ 高橋夏果(作詞家・スウィートアート)/Takahashi Naomi (ジュエリーデザイナー)/辰野しずか(プロタクトデザイナー) /Dawid Czycz(油絵画家)/寺内ユミ(プロタクトデザイナー)/常若屋 (伊勢木綿製品)/西澤弘子(ジュエリー デザイナー)/廣部慧 (ディレクター)/まつい由美子(美術作家)/ Meiko Paris(イラストレーター・デザイナー)/ Monika Chlebek(油絵画家)/ヤサキ ナオタカ(デザイナー)/山崎瑠璃(デザイナー三代目板金屋)/山下順三 (クリエイティブディレクター)/山本浩司(皮革製品プロデューサー)/和田義治(マーチャンダイジングディレクター)