今年4月、彗星のごとく現れたシンガーソングライター・Leolaさん。ハワイの言葉で「Leo」は「太陽」、「La」は「声」を意味します。天まで届くような歌声は、まさに「太陽の声」にふさわしいものです。そして彼女が毎年何十組とデビューするミュージシャンと違ったのは、「サーフミュージック」を提唱していることでした。

サーフミュージックとは、読んで字のごとく「波の音を聴きながら楽しむ音楽」です。イメージするのは、ジャック・ジョンソンやドノヴァン・フランケンレイターのような、アコースティックギターと素朴なハスキーヴォイスの組み合わせでしょうか。どことなく“南国”“夏”を感じさせる曲たちが、サーフミュージックの代表格です。

しかし、Leolaさんの提唱しているサーフミュージックは季節を問わないもの。当たり前ですが、海があるのは夏だけではありません。Leolaさんならではのサーフミュージックとはどのようなものなのか、11月初旬に来札したLeolaさんに伺いました。

寒い海だからこそ暖かさを感じさせてくれるバラードになる

‐Leolaさんといえば4月のレビュー以来、サーフミュージックを提唱されています。11月23日にリリースされた3枚目のシングル『I & I』は初のバラードですね。

秋や冬のような寒い時期の静かな海の良さがあると思っていて、眺めているだけで大きく包んでくれるような気がするんです。寒いんだけど、暖かみがあるというか。

その寒い季節の海にバラードがやって来ると、それを際立たせてくれると思うんです。そして、寒くなってしまった心を温めてくれる役割になるのではと思って、今回バラードを制作しました。

‐これまでの作品は、聴くからに海が似合う作品でした。今回はちょっと毛色が違うなと思っていたのですが、今のお話でピンと来ました。

夏は海にとってのハイシーズンなので、人もたくさんいて元気がみなぎっていると思うのですが、秋や冬は人がいなくなるからこそ静かで穏やかな海に見えるので、そういう海に似合う曲になればと思いますね 

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‐今作は作詞がLeolaさんと渡邊亜希子さん、作曲は「恋愛ソングの女王」とも呼ばれている坂詰美沙子さんが担当されていますね。

2015年の夏でしょうか、この曲のデモをいただいたのがきっかけで坂詰さんとはお付き合いが始まりました。

それからこの曲の本制作だったり、違う曲を制作したりという感じです。デモ自体は今のアレンジと大きく変わらずに、ギター・ピアノ・カホンのシンプルで素朴なサウンドでした。

の感じが、ゆっくり時間が流れていく冬の海の切なさを表現していたので『この曲を歌いたい!』と直感的に思った曲です。

 

歌い慣れた楽曲の歌詞を変更…裏側にある2つのインスピレーション

‐そのタイミングではタイトルは決まっていたんですか?

実は今とは全然違う歌詞とタイトルがついていました。その歌詞に私が書く加えてタイトルも変えて、長い時間のライブではもう披露しているんです。

なのでライブに足を運んでくださった方の中には『あの曲がリリースされるんですか?』とSNSでコメントされる方もいらっしゃいます。で、ライブで歌っていた曲をもう一度書き直してリリースすることになりました。

‐ということは、ライブで歌い込んでいた歌詞を変えたということですか?

はい、書き直すのはすごく大変でした(笑)。前の歌詞も大好きで気に入っていたのですが、今回『舟を編む』というアニメのエンディングテーマにもなっていることから『このアニメのエンディングで流れるのであればどんな歌詞になりますか』という提案をいただいたんです。

そこから歌詞の書き換えが始まったんですが、もとの歌詞を超えないと私の中ではリリースできないなと思っていたので試行錯誤しながらやってみたんですけど、自分の今の感情や価値観の中だけでは書けない言葉があったんです。

その悩んでいるときに、結婚されていて母親でもある渡邊さんにもお手伝いしてもらうことになりました。

‐歌詞の書き換えに、アニメとほかの作家さんのインスピレーションが加わったんですね。

渡邊さんは私の持っていない言葉をたくさん持っているので、私が表現したいことに合わせて色々なフレーズを出してくださいました。

母親としての暖かみが歌詞に出せたので、結果的に表現したかった女性像…男性に向けた母性のような愛情を表現した歌詞になったのかなと思います。

‐Leolaさん、渡邊さん、坂詰さん…制作陣全員女性ですもんね。

女性の持つ暖かさ・愛情深さが、歌詞の面でもメロディの面でも出ていると思います。

 

デビューして半年…ようやく振り返る時間ができた

‐Leolaさんとは短期間に何度もお会いしているのでビックリなのですが、まだデビュー半年ちょっとなんですよね(笑)。

あっという間だったんですが、内容が濃かったので『やっと半年経ったんだ』という感じがします。

いろいろなことを経験していく中で『まだデビューして3か月だったんだ』みたいな感じだったんですが、3枚目のシングルにしてようやく半年と言えるんだなと思いました。

シングルをリリースするたびに新しい経験があって刺激的な毎日だったので、今のこの時期にようやくこの半年を振り返っています。

それまではめまぐるしく環境が変わって経験したことのないことばかりだったので、毎日緊張して落ち着けない状態でしたが、今は少し力を抜いて『あれがあったな、これがあったな』と思い返せている状況です。

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【取材を終えて】

「サーフミュージック」という言葉からは、どうしても波の音と明るい青空をイメージしがちですが、Leolaさんは「海辺で聴くと心地良い音楽」という風にとらえ、春夏秋冬に合わせたサーフミュージックを表現しています。

 

デビュー曲『Rainbow』は夏に向かう春の海を、2ndシングル『Let it fly』では夏真っ盛りの突き抜けるような晴天の海を、そして3rdシングル『I & I』では誰もいない冬の海を。季節によって変わる海の表情に合わせた音楽を提案することが、Leolaさんならではのサーフミュージックです。

 

7月末に、北海道の某所でLeolaさんのインストアライブを拝見しました。当時デビュー3か月、まだまだ新人と括られる時期ですが、ステージに上がると目の前のお客さんだけではなく2階の吹き抜けにいるお客さんにまで目を配り声を掛ける堂々としたステージングを披露。そのとき僕には、遠くない将来、Leolaさんが大きなホールで大観衆の前で歌っている姿が想像できました。

 

サーフミュージックという潮流に乗って、Leolaさんの音楽はまだまだ進化していきそうな予感がします。

 

【ライター・橋場了吾】

北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。