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生活と旅を一度に味わう「ローカルファストフード」の挑戦~取材、その後。

2016年10月、70seedsは新潟県でひとりのシェフと偶然出会いました。それは、地域食材を生かしたカフェ、居酒屋、セレクトショップを運営する「寿々瀧」でオーナーシェフ・食文化プロデューサーを務める鈴木将さん。

 

もともとの取材対象だった新潟県長岡市の「移住女子」栗原さんから紹介されたこの出会いは、70Seedsにとって地域で新しい価値を生み出す方々に目を向ける、大きなきっかけとなりました。

 

参考記事:

元東京のエンジニア、長岡の「移住女子」が語る「地方の仕事のつくりかた」

選択1つで未来は変わる-長岡の小さな総合商社「寿々瀧」がつくる地域循環

 

「食を通して地元で循環する豊かさの継承を作りたい」と語っていた鈴木さんの取り組みはその後、国内外でさらなる広がりを見せることになりました。

 

そんな鈴木さんから一通のメッセージが届いたのは、2018年2月のある日。

 

「新潟駅に新しくお店をつくります」

 

それは、前回記事の取材時にも構想を聞いていた、地域食材をふんだんに使ったファストフード店「SUZUVEL」のこと。

 

オリジナルレシピを気軽に楽しんでもらうためのレシピ本制作や、その制作費を集めるためのクラウドファウンディング(支援総額は目標金額の190%を達成)など、話題を提供し続けてきた鈴木さんの、ひとつの到達点です。

 

そんな鈴木さんの想いがこもった、ローカルファストフード店「SUZUVEL」オープンの様子と、いま鈴木さんが見つめる未来について話を聞いてきました。

 


 

ローカルファストフード店「SUZUVEL」

 

新潟駅に直結した駅ビルの1階にローカルファストフード店「SUZUVEL」はあります。ガラス張りのおしゃれな店内では、大勢の人がにぎやかに食事を楽しんでいました。木材を基調とした店内の随所に、鈴木さんの想いが込められています。

 

 

SUZUVELでは「地元客も観光客も一緒に新潟を楽しめる場」として、新潟の郷土食の文化を取り入れたメニューを揃えています。

 

と、ここで「そもそもローカルファストフードとはなんなんだろう?」そんな疑問が湧き、 鈴木さんに聞いてみました。

 

「地域の魅力を、食を通して伝えようとすると、どうしても価格の高い商品になってしまうという課題がありました。付加価値の高い、高価な商品が素晴らしいのはもちろんですが、それでは地域食材を継承していけません」

 

 

「その場所に暮らす方々が、普段の生活の中で地域の食を楽しめる環境を作り、新潟らしい食材・料理を継承していきたい。この考えから、リーズナブルで楽しく地域の食を楽しめる場所としてローカルなファストフード店を作りました」

 

例えば、新潟の伝統食材を使ったフォーなどの麺類やパスタ、サンドイッチを用意。「駅からの帰り道に寄り道して食事を楽しめるような、気軽なスペースを作りたい」そんな思いから「SUZUVEL」は生まれたのだと、鈴木さんは熱を込めて語ります。

 

そんな「ローカル・ファストフード」実際に注文してみました!

 

 

SUZUVELでは、「フォー」「パスタ」や「サンドイッチ」などからメニューを選ぶことができます。今回選んだのは「ライスボール」。ごはんと数種類のデリを楽しむことができるプレートです。

 

ずらっと並ぶデリから……。

スタッフさんがひとつひとつ盛りつけしてくださいました

完成!

 

今回は、「鶏ひじきハンバーグとラタトゥユ」を中心にした、4種のデリをチョイス。自分でデリを選ぶのも楽しい時間。新潟の地域食材がふんだんに使われています。

 

「さつまいもとかぼちゃのロースト ハニーシナモン風味」は、さつまいもとかぼちゃの自然な甘さと、はちみつの甘み、そしてシナモンの香りが自然にマッチしていて、絶妙なおいしさ。

 

どのデリも食材そのものの味が生かされていて、味わい深い!

 

店内ではオリジナルTシャツや帽子も販売。「アパレルを目的に、若い男性にも来てほしい」という狙いがあるそうです

 

 

SUZUVELを「旅の起点」に

 

今回の挑戦は、県内外の飲食業関係者から注目を集めているそう。そんな「ローカルファストフード」、鈴木さんはどんな想いを込めているのでしょうか。

 

「僕たちがやっていることはスローフード運動に近いんです。ヨーロッパでスローフードが浸透していても、日本ではまだまだ。でも『食に疎いから日本はダメだ』と言ってしまったら、それは自分たちの感覚の押し付けになってしまいます。そうではなくて、日本の人たちに合わせて、地域の人たちの感覚に近づけて提供したい。こうすることで、もっと寄り添っていきたいと考えています」

 

 

だからこそ、気軽に来られるお店が必要だ、そう鈴木さんは考えました。

 

そんな鈴木さんが、レシピ本制作のためのクラウドファウンディングを始めたのは2017年12月。「ローカルファストフードの考え方や取り組みを知ってもらうことで、他の地域にも影響を与えたい」と考えて、プロジェクトを立ち上げました。

 

「ビジネスを展開しているのに、事業のためのお金を(クラウドファンディングで)集めて本当に良いのか」という葛藤のなか始めたこのプロジェクトは、目標に対して190%の支援金額が集めて達成することに。

 

「自分の取り組みに対して、支援金という形で支持をしていただけたことが嬉しかったです。僕らのやっていることを必要としてくれている人がたくさんいるということが、自信につながりました。同時に、もっと頑張らないといけない、と気が引き締まりましたね」

 

クラウドファウンディングでは、地元の方の支援も多く集まりました。周りの人たちの意識も変わり、「ローカルフード」の考え方に共感してくれるお客様が増えてきているという実感も生まれ始めています。

 

そんな鈴木さんが見つめる未来、それは「旅の起点」づくり。

 

「今後やっていきたいのは、旅を日常化することです。ハワイのホテルなんかでは、その場で案内人さんが翌日のツアーをご案内するじゃないですか。あんな感覚で、翌日どこの農家で何を食べられるのか、SUZUVELでご案内をしていきたいですね。今後はそんな旅の起点を作っていきたいです」

 

 

もともと、雪の暮らしを体験するスノーツアーや、山菜採りツアーを主催していた鈴木さん。今後は、SUZUVELでも旅の相談やツアー案内ができるようにしていきたい、と語るその姿に、鈴木さんの地域への愛情を感じました。

 

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吉田瞳

神奈川県出身。2017年より70seeds編集部。「自然」「失われゆくもの」がテーマです。