2019年8月15日。日本が74回目の終戦記念日を迎える日。

ある人にとっては「敗戦」の記憶、ある人にとっては「戦勝」の記憶、またある人にとっては「解放」の記憶が蘇る日。

そして、現代を生きる数多くの人にとってはリアルタイムで訪れる「暑い、夏の1日」。

そんな今日を迎える、ひとつのメディアとしての随想です。

岡山 史興
70Seeds編集長。「できごとのじぶんごと化」をミッションに、世の中のさまざまな「編集」に取り組んでいます。

「戦後70年」から「次の70年」へ

「戦後70年をきっかけに、“戦争”“平和”といったテーマを現代の切り口で伝え直すメディアとして生まれたのが『70seeds』です」

70seedsについて説明するとき、最初の一言はそんな紹介から始まります。

2015年の3月末に立ち上げた70seeds。1年限定のつもりで始めたころは、上記のコンセプト通りこんな記事を中心に展開していました。

戦争に負けたらたばこが進む
戦争中の暮しの記録制作秘話

「戦争」という、普段の生活からは縁遠いテーマを、いかに身近な関心ごとに引きつけて伝えるか。そんなことを考え、70本の記事執筆を目標に運営していました。

その結果、大手新聞社やNHKなどいくつものメディアに取材いただき、大きな反響を得ることができました。

反響をもとに、「戦後70年」の1年間を終えたあとも、今の世の中をよりよくしようと活動する方々へのインタビューをしていくメディアとして運営を続けていくことを決意。

2016年からは「ハートに火をつける」という新たなコンセプトを定めて展開することになります。

過去を振り返るだけではなく、次の未来をどう生きていくか。

そんな思いのもと、社会課題や地域課題に取り組む方々を応援するメディアとして歩いて行こうと、2018年にはさらに大幅なリニューアルを行い、「次の70年に何をのこす?」という問いかけをコンセプトに据えて、さらに活動の幅を広げてきました。

地域に根ざした農業をアップデートしていく「できる.agri」や、特定の地域とタッグを組んだ事業づくりや情報発信への取り組みにも力をいれてきたのがこの2年あまりのこと。

一見すると「戦争」「平和」といったテーマとは距離があるように感じるかもしれません。ですが、私たちのなかでは一貫した道の上にあるものなのです。

 

「平和」を「平和」として捉えないこと

私、編集長の岡山は、高校時代から一貫して「平和」というテーマについて考え続けてきました。

2001年には地元の高校生たちで「高校生1万人署名活動」という活動を立ち上げ、長崎の高校生が、同世代の平和を願う声を集めて国連に届けることに取り組んできました。

今では累計100万人以上の署名を集め、ノーベル平和賞にノミネートされるほどに育っています。

編集部かわらばん〜編集長岡山編〜

ですが、そのような活動を通じて気づいたのは、「平和」というテーマでは誰の行動も後押しできないということ。

実際戦争を経験していない世代にとって、「平和」というテーマは、あまりにも漠然としすぎて誰にとってもつかみどころのないものになってしまっているのです。

私がPRという仕事を選んだのは、そんな「平和」をより具体的なものとして届けるヒントを得られるのではないか、と思ったことがきっかけでした。

そして、いち社会人として仕事に取り組む中でたどり着いたのが、ひとりひとりが営む「暮らし」そして「しごと」というテーマでした。

どんなに戦争の悲惨さを訴えたとしても、目の前にもっとなんとかしなくてはいけない課題がある。そんなひとりひとりにとっての重要な課題を解決していくことが「平和」につながる。

私の中で「平和」の解像度が上がり、取り組むべき対象が明確になった瞬間でした。

 

「次の70年」に新しいあたりまえを

世の中に無数に存在する課題。その解決に取り組むひとたちは、それぞれのテーマに対して当事者であり、向き合う挑戦者でもあります。

私たちの役割はそんなひとりひとりの課題解決を後押しすること。そして、その輪を少しでも広げていくこと。

戦後の70年間で世の中は大きく変化しました。
その変化は「進化」と呼ぶべき素晴らしいものだと思っています。

ですが、一方でもう現代の「暮らし」「しごと」には必ずしも最適ではない状態になってしまっている「あたりまえ」があるのも事実です。

私たちは、この激動する世の中でこれまで見過ごされてきた小さな声が求める「新しいあたりまえ」の実現を後押ししていくことこそが、「平和」をつくっていく営みだと考えています。

そのために必要なのは、自分の中から生まれてくる違和感に気づくこと、新しいあたりまえを求める声に耳を傾けること、そしてその実現に向けて考え、動き出すこと。

わかりやすい大きな声に流されなくても不安にならないように。

ひとりひとりが自分らしい生き方をできるように。

いつのまにか戦争につながる文脈ではなく、思いのままに生きることが結果として平和な世の中を実現する文脈を築くように。

私たち70seedsが取り組むのは、そんな「世の中の編集」なのです。

 

あなたは、次の70年に何をのこしますか?