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【連載②】戦争の記憶図書館-20年越しのはじめまして

みなさんこんにちは!

70seedsのしのです。

今日はみなさんに私の大好きなとあるおばあちゃんをご紹介したいと思います。

 

さて、みなさんの中でこの写真を見たことがある方はいらっしゃいますか?

 

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広島平和記念資料館に大きく展示してある写真なので、足を運ばれたことのある方は記憶にあるかもしれません。

これは昭和20年8月6日の11時頃に、爆心地から約2.3kmに位置する御幸橋で撮られた一枚の写真です。

写真手前に見える三角襟の女学生が

河内光子さん(85)

被爆当時は14歳

学徒動員で爆心地から約1.6kmのところにある貯金局の2階に居ました。

今年の3月に祖母の高校時代の同級生で、今でも懇意にしていると聞き、知り合うご縁ができた方です。

「あの時は写真撮られとったなんて夢にも思わんかった…」

目をパチクリ瞬かせて河内さんは今でも不思議だと云います。

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  • 20年越しの初めまして

 

2階にある祖父母宅の玄関を目指して階段を一歩づつ上がってくるその人を祖母の篠田恵は玄関まで迎えに行き

しばらくして笑い声と共に私のいた和室の扉を開けたのは私が20年間見続けてきた姿より

随分優しい顔をした、腰の低い女性でした。

「どうぞどうぞ、よくいらっしゃいました、お上りください。」

来客を喜び玄関に出て声を掛けるのは祖父の三郎。

私は楽しみな反面、そわそわとしていました。

思い返せばあの写真を初めて見たのは私がまだ小学生だった頃。

祖母に連れられて行った平和資料館で見たその写真や展示物は数日間私に怖い夢を見せました。

 

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あの頃は理解が追いつかずに、地獄を突きつけられたような印象が強く

写真の中の人々も怖い顔をしているような、そんな想像を勝手に作り上げていました。

「しのちゃん、河内さんが来ちゃったよ。」

祖母に紹介されてその人の顔を改めて見ました。

—————こんにちは初めまして、孫のしのです。

恵「まぁ~、おたくに会いたい会いたいと言ってね」

河内「あら~ おばあちゃんに似て」

恵「似てます?」

しの「似てないでしょ」

河内「多少似とってよ。」

河内さんは何となく予想していたような怖い顔とは似てもにつかず、柔らかい笑顔と少し高めの声でおっとりと話す方でした。

言葉の語尾がふわりと上がる癖があり、それがとても可愛らしい印象を醸し出しています。

私と、祖母と、お互いにそう思っていないのが目が合った瞬間にわかってクスリ。

恵「これはね、この前私が語り部しよるときにあなたが来ちゃってくれた(来てくれた)時の写真」

祖母はおもむろに取り出した写真を河内さんに渡しました。

そこには祖母が平和公園で修学旅行中の小学生へ語り部活動をしているところへ河内さんがゲストとして登場した時の光景が映っています。

アオギリの樹の下で祖母と河内さんは椅子に腰掛け、小学生たちは体操座りで真剣に2人を見上げています。

河内「まぁ~~なんでこんなにかがんでるんじゃろ、いやらしい。

それがね、主人が病気しよるときに付きっきりじゃったから腹の筋肉が痩せてね、それで首が前行くようになったの。」

恵「こりゃね、地べたに座っとる生徒に話しを聞かせとったからこんな格好なんよ。」

河内さんは自身の背中の丸さを気にしながら写真を顔に近づけて

それから写真を机に置きました。

河内「今日は時間があったからお墓まいりしてきたの。天気が良かったから。」

恵「どこ?」

河内「S寺。原爆ドームの近くにあるの。」

原爆で亡くなった方の話は、こうして日常生活の端々に当たり前のように出てきます。

小さい頃はお盆に墓参りに行く度に、墓地にある墓石に刻んである文字を読んで回ったりしていましたが、名前の下に「爆死」と彫ってある墓が多くそういったものも私が無意識のうちに原爆を意識する材料になっていたようにおもいます。

ふと、私の方を見た河内さんが私の背中に手を添えて軽くポンポン。

河内「綺麗な背ね、羨ましい。私もこんなかったのよ。」

恵「お互いね」

私「伸ばせば大丈夫よ」

なんて言って、みんなして笑いました。

私「初めて顔見た。」

河内「え?」

私「後ろ姿はずっと見てました。」

恵「本やなんかによう載っとってじゃけんね」

河内「まぁ~なんで載せるんですか、こんなべっぴんを。恥ずかしい。」

祖母の恵は自身の被爆体験のDVDを取り出して紹介していました。

広島市内の五日市高校の放送部の生徒が祖母の被爆体験をもとに作成した放送劇が今年の県の大会で一位になり、祖母はそれをとても誇りに思っているようで

人が来るたびに見せることにしていますま。

こうして自らの体験を生きる糧にしている祖母を見るととても力強く感じます。

恵「どうぞ、お番茶」

河内「私、お番茶大好き。私もこれ持ってきたのでどうぞ。」

と、河内さんは高木と云う和菓子屋のお菓子を持ってきた紙袋から取り出します。

河内「どうぞ、これ私が好きなの。若い人には向かんかなあ。これ面白いのよ、求肥のようになってるの。」

私「いただきます」

河内「嬉しい!」

私「おいしいよ」

河内「まあ嬉しい!」

河内さんの笑顔は少女のように純粋で素敵。

20年間思っていた印象の顔が塗り替えられたような気がしました。

 

→続く【第3回】「あの世かね、この世かね…」